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【社説】

自然災害伝承碑 デジタルで伝える教訓

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 災害は同じ場所で繰り返し起きることが珍しくない。子孫に教訓を伝える石碑が各地に残るが、忘れられがちだ。自然災害を伝える碑の場所が地図に記されるようになった。防災に役立てたい。

 国土地理院は新たな地図記号として自然災害伝承碑=図=を作った。ウェブ版の地理院地図で先月から公開している。スマホでも見ることができる。九月以降発行される二万五千分の一地形図にも掲載する予定だ。

 新記号のきっかけは、昨年七月の西日本豪雨だった。広島県坂町で行方不明者の救出作業を報じた地元紙の写真を見ると、捜索隊の脇に明治時代の土砂災害を伝える水害碑があった。「石碑があるのは知っていたが、関心を持って碑文を読んでいなかった」と住民は話していた。

 ウェブ版は地図記号のアイコンをクリックすると、伝承碑の写真と碑文の文面、建立されたいわれなどが表示される。一九七四年の台風で家屋十九棟が流失した「多摩川決壊の碑」(東京都狛江市)や、六八年に土石流で百四人が犠牲となった飛騨川バス転落事故を伝える「天心白菊の塔」(岐阜県白川町)などが紹介されている。

 防災情報をいかに伝えるかが、近年の課題である。

 伝承碑は災害が起きた危険な場所や、避難して無事だった場所に建てられている。自宅や職場、学校の近くにないか、調べてみてはどうだろう。学校や地域で防災マップや避難マップ作りが盛んだ。そうした際にも生かしてほしい。遠足や歩こう会のルートに伝承碑を入れるという使い方もある。

 地図をスマホで見る人が多い。ここに伝承碑や防災情報を加えることはできないだろうか。気象庁や自治体などからは多くの情報が出ている。各種のデータを一枚の地図の上で見せることができれば、わかりやすい。

 スマホ用アプリの「Yahoo!防災速報」が始めた「大雨危険度」が参考になる。アプリは土砂災害や洪水の警戒レベルを知らせる。利用者は自分のいる場所の危険度や、安全な場所はどこなのかを地図上で確かめられる。

 すべての人がスマホを使って行動できるわけではない。避難するときは周りに声をかけてほしい。

 

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