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【社説】

<’19参院選>原発政策 止めるか使い続けるか

 六月のG20大阪サミット開催期間の前後、東京駅や名古屋駅などのコインロッカーが、テロ対策で閉鎖になった。

 それほどテロには敏感なのに、こと原発に関しては、無防備だったと言うしかない。

 3・11後にできた原発の新たな規制基準では、大型航空機が体当たりしてくるような事態に備え、「特定重大事故等対処施設(特重)」の設置が義務付けられている。

 例えば、原子炉から十分離れた場所に、非常用の制御室や電源、冷却ポンプなどを備えることになっている。一基につき一千億円規模の追加費用がかかる。

 特重の整備には、再稼働に向けた工事計画が認可された後、五年以内に完了すればいいという、猶予期間が設定された。その間は原発を動かしていいということだ。

 ところがそれさえ守られず、関西電力高浜原発1、2号機に至っては二年半の遅れが出るとして、関電などは原子力規制委員会に猶予期間の延長を申し出た。規制委はさすがにそれをはねつけた。

 期限内に設置できない場合には、停止命令を出すという。

 それ以外にも規制委はこのところ、耐震や津波、火山の降灰など、自然災害に関する規制を強めている。原発を抱える電力会社は、さらなる対応と巨額の投資を迫られるということだ。

 新規制基準の導入後、関電が安全対策に投じた費用は、すでに一兆円を超えたという。安全を真摯(しんし)に追求すれば、原子力発電は、ビジネスとして成り立たない-。今や世界の常識だ。再生可能エネルギーへのシフトは加速する。

 にもかかわらず、国のエネルギー基本計画は、二〇三〇年度にも電力の二割以上を原発で賄うといい、新増設も視野に入れ、依然基幹電源扱いだ。誰のため、何のために、災害リスクの高い原発を莫大(ばくだい)なコストをかけて維持していこうとするのだろうか。自民の参院選公約はこれに沿う。

 一方、連立与党の公明と、立憲民主、国民民主、共産、社民の五党は「原発ゼロ」、日本維新の会は「脱原発依存」を掲げている。

 このうち、公明、国民、維新は一定の条件付きで当面の再稼働を認めるといい、立民、共産、社民は認めないという違いはある。

 だが大きく分ければ原発を止めるか使い続けるか、だ。投票判断の重要な手掛かりになるだろう。

 

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