ざっつなオーバーロードIF展開   作:sognathus
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完全なオリジナル話
ニグン、クレマン、フォーサイトが生きていた場合にアインズが見出したかもしれない活用法


人間精鋭部隊

「人間による精鋭部隊、ですか」

 

「そうだ。私が直接配下にした人間達がいただろう?」

 

「ええ、確か……ニグン・グリッド・ルーイン、クレマンティーヌ、ヘッケラン・ターマイト、ロバーデイク・ゴルトロン、イミーナ、アルシェ・イーブ・リイル・フルトの6人でしたか」

 

「そう、そいつ……ん、その者達だ」

 

見下している人間であってもナザリックに属すものなら、それも主人自ら配下に加えた者なら当然とでも言うようにデミウルゴスはアインズが指す人間の名前を全てフルネームで完璧に答えた。

アインズは改めてデミウルゴスの有能さと要領の良さに感心した。

 

『その者達』

 

デミウルゴスはアインズが彼らの形容を言い直したのを見て自分の判断が間違いでなかったことを確信した。

本来なら姓がある者は名前の一部だけ言うところであったのだが、アインズが彼らを使って精鋭部隊を創ろうという発言から、ある程度その人間達の事を評価していると推察し、自分もそれに倣って呼び方を変えたのだった。

 

「その者達は人間の世界ではそれなりに上位に位置する能力らしい。特にかつて法国に属していたルーインとクレマンティーヌは、な」

 

「なるほど。では部隊ができた暁にはその二人をそれぞれリーダーとサブリーダーに置くのが良いでしょうな」

 

「うむ、自明の理だな」

 

「恐れ入ります。しかしとなると、永く彼らにナザリックの役に立ってもらうとすると……シャルティアの眷属になってもらうのが良いかもしれませんね」

 

「ああ、それは私も一時考えたのだがな。確かに戦闘力の向上に加えて不老、そして耐久力を持つのは魅力的だ。だがそれだと私自ら配下にした意味が薄れるし、何より生まれ持った技量が低下してしまうのが多少惜しくてな」

 

アインズはこの前シャルティアに渡した女の冒険者の事を思い出した。

彼女の場合は元々能力自体は高いとはいえなかったので、眷属化によって技量が低下してもそれを強化された戦闘力が補って余りあった。

だが元々それなりに優秀な能力を持つ人間を眷属化した場合、それによって低下する技量は向上する戦闘力と天秤にかけて見合うものかという事である。

 

「ふむ……ああ、なるほど! つまりアインズ様は彼らを人間のまま不老不死にしようとお考えなのですね」

 

「その通り。まぁ方法はなくもないが、できることならそれを消費せずにこの世界の技術を以て実現したいところではあるが、な」

 

「当然ですね。不老不死化の方法もナザリックが保有する貴重な財。それを使うより先ずこの世界の技術を用いようとなさるのは至極真っ当な道理だと私も共感するところです」

 

「うむ、そうだろう? では不老不死化する方法は後々考えるとして、早速その者達を我が前に呼んでくるのだ」

 

「はっ!」

 

 

『…………』

 

謁見の間、アインズの前に並び立った6人は皆一様に不安げな表情をしていた。

6人にはもう一つ共通点があった。

それは全員が調子が悪そうな顔色をしており、冒険者らしく鍛えた身体を持っていなかったら皆病人に見えたことだろう。

アインズは彼らを見ながら未だに『洗礼』の後遺症が残っているんだなと静かに同情した。

多分それとは別に自分の事も恐れているのだろう。

そりゃそうだ。

デミウルゴスから直接でも恐怖するだろうに、それが自分からなんて例えば末端の営業社員がいきなり会社の社長に呼び出されるようなものだ。

アインズは自分が彼らに二重の意味でプレッシャーを与えてしまっていることに心の中ですまなく思いながら、努めて威厳のある声で切り出した。

 

「突然呼び出してすまないな」

 

「いえ!ゴウン様がお謝りになることなど一切ございません!」

 

「そ、そうです! あ、あたし達ゴウン様の命とあらば即馳せ参じます!」

 

「と、当然俺……あっ、私達も同じ心づもりです!」

 

ニグンとクレマンティーヌに続いてヘッケランがそれに即同調し、彼の隣に立つ残りの3人も同意とばかりに必死な形相で頷く。

 

「あー……うん」

 

アインズは彼らの篤い忠誠の言葉は嬉しく思いつつも、その目に見えた必死さに彼らにここまで追い込む経験をさせてしまった事を改めて申し訳なく思った。

 

(いや、効果は抜群だと思ってるよ? これなら地上のどんな責め苦にあったとしても裏切らないと思うしね? でもいざこうして常に憔悴しきっている人を見ると、可愛そうだなぁくらいは思っちゃうよ)

 

「まぁ難しいだろうがそう緊張しなくても良い。今回お前達を呼んだのは人間族のみで構成したナザリックの部隊を創設しようと思い至ったからだ」

 

「人間族……人のみの部隊ですか」

 

「そうだルーイン。構成員が全員人間なら外での活動はし易いだろう? お前達はそれなりに人間の世界では腕が立つ。勿論これからもっと成長して私の役に立ってくれると確信している。その上でお前達に今より効率的に動いてもらうには、と考えた次第だ」

 

「なるほど……」

 

俯いて何か良い言葉をひねり出そうとヘッケランが苦しんでいた時だった。

そんな彼を助けたい一新でイミーナが消え入りそうな声でアインズに発言の許可を求めた。

 

「あ、あの……」

 

「質問か? イミーナ。良いぞ許す」

 

「あ、ありがとうございます。その……こ、個人的な疑問で申し訳ございませんが、その人間で構成する部隊というのは今の所は私達6人のみなのですか?」

 

「ああ、そうだ。今の所は、な。近い内にもう少し増える予定だ。それまではお前達6人。リーダーはルーイン、サブリーダーはクレマンティーヌにやってもらおうと思っている。異論はあるか?」

 

『一切ございません!』

 

6人一斉に声を揃えて答えた。

正直今まで4人だけだった冒険者パーティにいきなり一国の特殊部隊の元長、加えてその特殊部隊の中でも精鋭中の精鋭といえる部隊の元隊員の組み合わせを入れた場合、チームとしてのバランスを安定させるのは苦労しそうに思えたが、そんな事口に出せるわけがない。

またあの地獄を味あわせられる可能性を考えたら、それだけは絶対に回避したいという6人全員の共通する強い想いを以てすれば、この程度の難事どうにかなるだろう。

それほどまでに元々の立場は違えど、同じ経験をした者同士ということもあり、6人の心の結束は早くも強いものに成りつつあった。

アインズはその様子に満足気に頷くと一同を見て他に質問はないかと訊いた。

 

「あ、あたしから一つ」

 

発言してきたのはクレマンティーヌだった。

 

「うむ、何だ?」

 

「優秀な戦力と言うなら私に心当たりがあります」

 

「ああ、それはもしかして漆黒聖典という奴らの事か?」

 

「えっ」

 

「やはりそうか。ほら、お前この前私にワールドアイテムを持っている奴とその護衛に付いていた奴についての情報を教えてくれただろう?」

 

「あ……」

 

クレマンティーヌはつい数日前、顔面の皮がない(おぞ)ましい顔をした女の部屋に連れて行かれ、何をされるか判らない恐怖に耐えながら女が映した映像を見てそれらに関する情報をアインズに伝えた事を思い出した。

 

「あ、もしかして……」

 

「うむ、お前のおかげで完璧に一網打尽にできた。あの時いた奴は全員今、洗礼を受けている最中だ。かなり隊員としてのモラルも高いと聞いていたので特に念入りに長めの洗礼を受けさせている」

 

「あ、はは……そ、そうですか」

 

「うむ。特にあのワールドアイテムを持っていた老婆は老体だけに死なせないように苦労していると報告を受けている。腕が鳴るとも言っていたがな。楽しそうでなによりだ」

 

単にアンデッド化の影響からの全く悪意のない自然な発言だったのだが、その言葉は改めて6人がアインズから地獄の魔王のような恐怖の印象を受けるのに十分なものだった。

 

「そうだ。洗礼といえば、そいつらより先に確保して受けさせていた奴らがいてな。そいつらも間もなくお前達と合流するだろう」

 

「と、言いますとさぞ名の知れた者達なのでしょうね」

 

ロバーデイクが蒼い顔をしながらも何とか声を絞り出してアインズのスカウトを間接的に褒め称える。

彼の横では気力が切れ掛かりそうなのをなんとか踏ん張って耐え、必死に頷いてロバーデイクに同意を示すアルシェがいた。

 

「ああ、王国の裏の業界では結構知れ渡っていたみたいだぞ? たしか六腕とかいうグループだったかな? あいつらもなかなかに面白いスキルを持っていたな。正式に配下になるのが楽しみだ」

 

『…………』

 

最早6人は言葉も出なかった。

しかしそんな中でも心に抱いたことはあった。

それは今洗礼を受けている者達が一刻も早く地獄の苦しみから解放されることだった。

 

(クソイケ好かない奴らだったけど、今回ばかりは同情するわね……)

 

隣で蒼白の顔で俯き何やらブツブツ呟きだしたニグンを横目で見ながら、クレマンティーヌは何時の間にか芽生えていた他者を想いやる心でかつての同胞達に心より同情するのだった。




肝心の描写がある話を作る前に、原作でシャルティアと対峙した漆黒晴天+婆と六腕はちゃっかりアインズ様にゲットされている事になりました。


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