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輸出規制で慌てる韓国、今更アメリカに泣きついても仕方がない理由

見えてきた「国際政治のリアル」

規制への「対抗措置」自体がお門違い

参院選はいまいち盛り上がりに欠けているが、国際社会では物騒な話が進行している。

先週の本コラムでは、日本からの大韓民国向け輸出管理の運用の見直しについて、報復などではなく、安全保障上の措置であると論じた(「対韓輸出規制を『徴用工の報復』と騒ぐ、韓国とマスコミの見当違い」)。これに対して、韓国はてんやわんやの騒ぎである。

安全保障上の措置に対して、韓国が「対抗措置」をとるというのは普通、ありえない事態だ。本来ならば韓国がすべきことは、日本が懸念し、管理強化の根拠になった韓国側の「不適切事案」について説明し、必要に応じて謝罪を行い、再発防止策をとることである。

 

7月1日の日本側の方針発表に対して、韓国の文在寅大統領が声明を発表したのは、1週間後の7月8日。しかも「日本は措置を撤回しろ。韓国に被害が及べば対抗措置をとる」という、中身の薄いものだった。

7月9日には、韓国側は、軍事転用可能な戦略物質を156件不正輸出していた(2015~2019年3月)と発表した。これも、すでに韓国国会議員へ配布していた資料であり、急いで発表した形跡がある。

これほど大量の不正事例をこれまで公表してこなかったことについても、韓国への不信が募る。さらに、問題となっているフッ化水素は、以前UAEに輸出されており、これが北朝鮮への迂回輸出であった可能性も捨てきれない。この韓国の発表によって、日本側の輸出規制見直しの正当性が改めて確認された格好だ。

それでも、韓国は往生際が悪い。同じ9日、韓国の康京和外相がアメリカのポンペオ国務長官と電話会談を行い、韓国の実情を説明し、同長官は理解を示したと発表した。

これは、どうみても韓国に都合の良い発表だ。

実は、日本の外為法における輸出管理の部分は、輸出管理令(政令)に基づいている。現在の法規制は、リストにある規制品を輸出する輸出者には許可が必要(リスト規制)というものと、輸出する貨物や技術が大量破壊兵器の開発等に利用される恐れがある場合に許可が必要(キャッチオール規制)の二段階から成り立っている。まず、リスク規制品かどうかをチェックし、該当すればさらにキャッチオール規制をチェック、該当しなければ許可となる。

この輸出管理令は、もともとはココム(対共産圏輸出統制委員会)規制の流れを引いている。ソ連崩壊の後、ココムは1994年3月に解散したが、その後1996年7月に設けられた後身の協定「ワッセナー・アレンジメント」に引き継がれている。

ワッセナー・アレンジメントは法的拘束力のない紳士協定であり、ロシアも韓国も加盟している。ただし、旧ココムにはこの両国は加盟しておらず、NATO諸国と日本、オーストラリアが加盟していた。つまり、日本は輸出管理令の運用ではアメリカと基本的には同一歩調をとっているはずだ。まして、今回のように北朝鮮関連の措置となると、経産省はアメリカと事前協議を持っていたはずだ。

今更、韓国が慌ててアメリカに連絡して「理解を得た」というのは、お笑いである。