グーグルのプライバシーポリシーは「よくできている」
広報の言葉に従って、グーグルアカウントの機能を色々と試してみたが、質問の答えを見つけることはできなかった。記者の理解力不足が原因かもしれない。結局、グーグルの対応に誠実さがあるかは読者の判断に委ねるほかない。ただ、記者から1つ疑問を呈したい。グーグルの体制は「ユーザー保護」を志していたとしても、少なくとも「ユーザー起点」ではないのではないか。
プラットフォーマー各社はユーザー重視を掲げてはいる。しかし、その施策は「ユーザー起点」ではなく「コンプライアンス起点」のように思えるのだ。つまり、「ユーザーがプライバシー保護体制を充実していると感じるか」を基準としておらず、「プライバシー上の違法行為を犯しているとみなされないか」という考え方に基づいて、施策が組み立てられているのではないだろうか。
分かりやすい例を1つあげよう。グーグルからダウンロードした個人データのファイルをダブルクリックすると、下の写真のように文字化けして表示されてしまった。
これはアップルが提供するウェブブラウザー「サファリ」でファイルを開いたことが一因のようだ。グーグルのブラウザ「クローム」で開くと正常に表示された。
文字化けの解決方法を記者はたまたま思いつくことができた。思いつかない人に対して、質問窓口がなければグーグルはどう対応するのだろうか。
ユーザーにとって不親切な仕組みだ。
「グーグルはプライバシー専門の技術開発者も抱えていて、プライバシーポリシーもよく作り込まれている」(個人情報に詳しいあるコンサルタント)と評価する声もある。しかし、記者にはこのコンサルを含め、プラットフォーマーを巡る業界全体がユーザー起点を見失っているとしか思えない。複雑な個人情報の保護法制に対応することだけにリソースを割いているのではないか。
家族にも「ポリシーを読みなさい」と言える?
グーグルだけが問題なわけではない。フェイスブックとアップルは英語で質問に回答した。アマゾンは記者のパソコンで開けないファイル形式でデータを送ってきた。楽天、LINE、ヤフーは開示を拒んだ。いずれもユーザー側に一定の知識がなければ、解決しない問題ばかりだ。
プラットフォーマーのユーザーは年齢も国籍も職業も関係なく、遍く広がっている。そのユーザー達に何らかの知識を前提としてサービスを提供することは、「ユーザー起点」とはとても言えないだろう。
ユーザー起点を追求するのはコストがかかる。ユーザー起点の保護体制の整備よりも、ユーザーがより利便性を感じる新サービスの開発を追求するのも1つの企業判断かもしれない。
しかし、各国の公的機関も明確に法律だけ守っていればいいという各社の態度を問題視するようになっている。個人情報保護委員会の其田事務局長がインタビューで踏み込んだ発言をしたのはその象徴と言える。個人情報保護の法制度がとりわけ厳しいEUでは、フランスの個人情報保護機関が1月、プライバシーポリシーがわかりにくいというあやふやな理由でグーグルに制裁金の命令を下している。
プラットフォーマーの従業員全てに問いたい。あなたの父母に、祖父母に、あるいは子供に、ITの知識を満足に待たないまま、あなたの会社のサービスを使っている人はいるはずだ。もし彼らから個人情報について質問を受けた時、「プライバシーポリシーを読め」と答えるだろうか。今、あなたの会社はそんな不親切な対応を顧客にしているかもしれない。
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データとは、文字列の羅列であって、ダイヤの原石でしかなく、それをどのように利用するかで価値を持つようになると思います。利用の仕方は、千差万別であり、どのようなデータ構造で管理するか、どのようなアルゴリズムで解析するかは、企業秘密に直結するの
で、開示できないのが普通ではないでしょうか。ただし、ビッグデータには個人情報が含まれており、プライバシーポリシーで制限をかけるしか方法がないのだと思います。質問すれば、何でも教えてくれる学校のように正解が用意されているわけではないので、あらゆる質問にいちいち回答するのは、多大な負荷がかかると考えて間違いないと思います。...続きを読む例えば「テレビの起動時刻を何に使っているのか」という質問に対して、行動パターンを把握する為に、テレビを見る時間を管理して「番組の思考を探って、オススメの番組や商品を紹介する」とか「いつも見る番組を自動で予約するとかアラームを鳴らす」とか「いつもテレビを見ている時間にテレビを見ていない場合、倒れていないかという見守り機能」とか「普段テレビを見る時間でもないのにテレビがついていたら、不正利用されていないか」などと、いろいろなアイデアが考えられます。開発段階で、それらの内容を開示すれば、他社にアイデアを盗まれる事になるので、わざわざ教えないのが普通だと思います。
また「ITの知識を満足に待たないまま、あなたの会社のサービスを使っている人はいるはず」という疑問に対しては、プラットフォーマーに限った話でなく、ネットの世界全般に通じることなので、ITの知識もなく利用している人が狙われると思って間違いないと思います。
Reini Mizushima
インサイドセールス、営業コンサルティング
外資系の会社に長くいました(グーグルにも在籍していました)ので、内情を知るだけにコメントをしづらいところもありました。あくまでも一般論ですが、出先である日本法人は、法人としての判断ではなく、個別の機能事業で本社にレポートラインを持っていると
ころが多いです。カスタマーサポート系はコストセンターでありコンプライアンスの厳しいルールとコストパフォーマンスを見られていて、意思決定ももちろん、顧客対応も日本に置かれていないことも多くあります。EUの規制強化は、政治的な背景もありますが、個人のプライバシーに対する権利意識があるからからこそ、法規制がなされています。本連載の企業も、基盤は顧客の情報とその情報を提供する信頼に成り立っています。信頼が崩れれば、失うものの大きさは計り知れないのですが、事業者側におごりを許す顧客も変わるべきかと思います。とても、示唆に富んだ記事で、ジャーナリズムはこうであって欲しいと思う記事でした。ありがとうございます!...続きを読むReini Mizushima
インサイドセールス、営業コンサルティング
バランスよく取材されているので、外資、日系に関わらず軽視されているのが、あくまでもコストセンターであり、またおそらく外注しているからでしょうね。外注すると余計に、顧客と何分話したかというKPIが設定されていて、例外的な処理はもっとも嫌われま
す。現場の方々は、厳しい状況のなかで、慮るということよりも、KPIを達成することに追われてしまいます。これは、個々の責任ではなくマネージメントの問題ですので、問題を切り込むためには取材であることを伝えるのは大事ですよね。一方で、対応が変わることのやるせなさは残りますが。。...続きを読むぱい
本題とは関係ありませんが、連載の記事タイトルについての意見です。
本連載の記事タイトルをリストアップします。
第1回 フェイスブックと日本交通[の不都合な真実]
第2回 [国も批判する]楽天とLINEの開示姿勢
第3回 開示請求への対策
不足、ヤフーとアップル[の謝罪]
...続きを読む第4回 [セキュリティーのプロが首を傾げる]アマゾンの対応
第5回 「努力義務違反の可能性」、グーグルの対応、国が指摘
[]で囲んだ部分が、なかなか刺激的で、読ませようとする意図を強く感じます。
自分の目から見て第5回のタイトルのみが許容範囲に入ります。
他の記事でも、なかなか過激なタイトルがついていて、時には記事内容とタイトルが関連してないと思えるものが多数あります。
読んでもらえなければ価値がないので、まずタイトルで関心を引いて読まそうとする気持ちもわからないではないですが、読後にがっかり感を与えてはよりマイナス面が大きいのではないでしょうか。
過激なタイトルは日経BPオンラインに限らないですが、これらの過激なタイトルに辟易してる読者は多いと思います。
寺岡 篤志
日経ビジネス記者
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