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どうも。 高山昭治です。
(なつ)初めまして… なつです。
(亜矢美)なかなか かっこいいよね。
(夕見子)だって 昭ちゃんじいちゃんのまねしてんだもんね。
えっ?私が 写真見せたの。
ほら 新聞社が撮った集合写真。
したっけ この人 じいちゃんが気に入ってひげ生やしだしたんだわ。
じいちゃんのこと気に入ってくれたんですか。
開拓者の1世にしかない雰囲気がある。
今なら ジャズを聴きながらウイスキー片手にナッツでも つまんでいれば似合いそうじゃな
いですか。
ふだんは まんじゅう食べながらお茶飲んでますけどね。
(亜矢美)お帰り。(咲太郎)ただいま。お帰りなさい。
(雪次郎)おっ 夕見子ちゃん働いてんだって?
うん。 雪次郎も頑張ってっか?おう。
どっかから電話あった? 仕事の。
全く。そう…。
お兄ちゃん…。ん?
お客さんか?
夕見の… 何て言うか あれ…。
ええっ 駆け落ちの相手か!?バカ!
♪~
♪「重い扉を押し開けたら暗い道が続いてて」
♪「めげずに歩いたその先に知らなかった世界」
♪「氷を散らす風すら味方にもできるんだなあ」
♪「切り取られることのない丸い大空の色を」
♪「優しいあの子にも教えたい」
♪「ルルル…」
あんたも よく来てくれましたね。
えっと…。高山さん。
あっ 高山さんか。 今 どこに住んでんの?
言いませんよ。お~ 警戒心が強いね。
駆け落ち中ですから。
ハハハ…。その手には乗りませんもね。
(亜矢美)レミちゃん いつものおでん?(レミ子)あっ お金が…。
出世払いでいいよ。じゃ 全部。
その人は… 雪次郎の恋人?
えっ? 違うって。
レミちゃんは 咲太郎さんの恋人だ。違うって。
咲ちゃんなんて もういいわ。臆病だから とっくに飽きた。
あ~ よかった。
したけど 雪次郎の同志なんでしょ?
同志? うん まあ そうだよ。
私と この人も同志なんだわ。
この人は… 東京で何したいの?
物書きだって。物書き?
ジャズの評論だっけ…?ジャズ?
ジャズお好きだったらグレン・ミラーとか ベニー・グッドマンとか レコードあるよ。かけよっ
か?
いえ 好きなのは モダンジャズなんで。モダン?
コルトレーンか ガーランドがあればかけて下さい。
コッタラネージャー カワランド…?
新宿は 今やモダンジャズの街になりつつあります。
それを知らなきゃ古いですよ。
ちょっと 古いって どういうことですか?
いや… 本当 古いで~す。はい ムーランの生き残り…。
人それぞれ 大事にしているものがあるのは 当たり前じゃないですか。
それを 人に古いと言われるのはおかしいですよ。
君は それでも 映画を作ってる人?は?
音楽も映画も 時代によって変わっていくのは 当然のことだべさ。
それに気付かず古いものに固執することを古いと言って何が悪いんだ?したけど ダメとは
言ってない。
君の言うとおり 人それぞれだからね。
やっぱりいつものジャズ喫茶で待ってるよ。
あっ うん 後で行く。ここは払っとくから。
あっ これ持ってけば?
えっ ごめん 何か怒らせた?
いや なっちゃんが怒るの当然だわ。
あの人の言ってることは分からんでもねえが言い方ってもんがあるべ。あんたも 言い方な
まってるよ!
あの人 ある金持ちの跡継ぎでね親の決めた いいなずけまでいるの。
それで 卒業前に 2人で逃げてきた?
逃げたというより しがらみの外へ踏み出したと言って下さい。
(下山)おはよう。おはようございます。
おはようございます。(下山)おはよう。
(一同)おはようございます。あっ おはよう。
みんな 早いね。
あっ 今日から 僕も原画を描かせてもらうよ。
えっ 手伝ってくれるんですか?(麻子)どうしてですか?
そんな 時間もないしさ…とにかく この短編映画は成功させないと。
どうかしたんですか?
いや… 子どもが純粋に楽しめるような面白アクション満載の「ヘンゼルとグレーテル」にし
ようと思って…。
いいよね? いいよね? それで… ね。
はい…。何があったんですか?
イッキュウさんが ちょっとね…。
(坂場)その考え方はもう古いんじゃないでしょうか。
(仲)古い?おい ちょっと イッキュウさん…。
漫画映画は 子どもが見るものだと決めつける考え方です。
これからの漫画映画は大人のためにも作るべきだと思います。
僕は そうは思わない。
漫画映画は あくまで子どものために作るべきだと思うよ。
それじゃ その子どもが大人になったらどうなりますか?
同じ漫画映画を見て懐かしいと思うほかに改めて面白いと感じることはあるでしょうか?
あると思うな。
子どもの時に 面白いと感じたのならその感性は 大人になっても必ず残ってるはずだよ。
そうやって 夢や希望を残してやることが漫画映画の使命なんじゃないのかな。
おもちゃとしての夢ならそれでも いいでしょう。
(井戸原)おもちゃ?
子どもの頃には分からなかったことが大人になって 初めて分かることもある。
そういう漫画映画が生まれなければ子どものおもちゃとして いずれは廃れていくだけじゃ
ないでしょうか。
廃れる…?僕は 漫画映画をほかの映画と比べても遜色ないくらいいや それ以上に作品
としての質を高めていかなければ未来に残らないと思うんです。
分かったよ 坂場君。
だけどね たとえ そこにどんな意味があろうと純粋に 子どもが楽しめる漫画映画にしてく
れるんだろうね?
それができなければいくら高い理想を掲げたってつまらない漫画映画だと言われるだけだ
よ。
それは…。それができなければ君は失格だ。
はい…。
まあ でもつまらないものには したくないだろ。
(茜)えっ そのために私たちが頑張るんですか?
イッキュウさんを助けるためにですか?
(堀内)何だか やる気がうせるよな。
いや… イッキュウさんのためじゃないよ。作品のためだ。
それに 僕は どうしてもマコちゃんと なっちゃんに原画で成功してほしいんだ。これは そ
のための短編映画なんだから。
(神地)おはようございま~す。
ん? あれっ どうかしたんですか?
遅刻だよ 少し。
すいません…。 でも 徹夜してこれだけ 原画を描いてきたんです。
あっ 面白いかどうか見てもらってもいいですか?
神のようなタイミング…。
えっ?
どうして 仲さんにそんなこと言ったんですか?
話の流れで つい言っただけです。言うつもりではなかった。
それじゃ 本気で言ったわけじゃないということですか?
いえ うそを言ったつもりもないです。
仲さんの作る漫画映画が古いなんてよくも…。
どうして そんなことが言えるんですか!
作るものではなくて考え方が古いと言っただけです。
同じじゃないですか!
まあ… そうですね。
は?
あなたが怒るのは どうしてですか?
えっ?
仲さんを尊敬しているからですか?
もちろんです。 そのとおりです。
仲さんが描くものは すばらしいです。
面白いし かわいい。
子どもの心を捉えるし大人が見ても かわいい。
あなたにもかわいいと感じる心があるんですね。
かわいいものは大好きです。
真剣な顔で言わないで下さい。
しかし 子どもはかわいいと感じるだけじゃない。
面白いと思うだけでもない。
もっと いろんな感情を世界から受け取って生きているんです。
それは もちろんです…。
僕も 子どもの頃 空襲に遭いました。
焼け跡を 一人で家族を捜して歩き回りました。
幸い 親も生きていましたがあの孤独と 飢え死にしそうな絶望感を忘れることはありませ
ん。
大人の冷たさを 子どもの卑しさを嫌というほど見せつけられました。
でも 反対に 見知らぬ人の愛も知ったんじゃないですか?
そういう子どもの時の体験が今の僕や あなたを作っているんです…。
♪~
違いますか?
♪~
だから 何だと言うんですか?だから…。
仲さんたちとは違うものを作るのは僕らの使命です。
(麻子)仲さんこの作品だけは 何があっても最後までやらせて下さい。
お願いします。
何か 勘違いしてるよ。
僕は 君たちの邪魔をする気はないんだから。
みんなで決めたとおりに作らせて下さい。
それも分かってるよ。
だけど 君も あの坂場君に随分 影響 受けてるみたいだね。
初めは 私も疑ってました。
坂場さんと奥原さんの熱意は本物です。
あの2人は ずっと先に向かってアニメーションのことを考えてるんです。
君が そこまで思うなんて…。
イッキュウさんは ともかくとして…奥原さん… なっちゃんのことを最初に認めたのは仲さ
んじゃないですか。
(坂場)僕は もっとあなたには 仲さんたちとは違うアニメーターになってもらいたい。
どんなアニメーターですか?
世界の表も裏も描けるような現実を超えた現実を見せられるそれを 丸ごと 子どもたちに
体験させることのできるようなアニメーターです。
僕も そういう演出家になりたいと思っています。
♪~
一緒に 作ってほしいんです。
一緒に…。
一生をかけても あなたと作りたいんです。
なつよ 古い人間の私は腰が抜けたぞ。