個人情報開示請求の対象とした7社の中で、ダントツのデータ量を開示したのがグーグルだ。ネット動画300時間分を優に超える87ギガバイトもの記者の個人データを保有していた。この分量を開示できることは、同社が優れたデータ管理システムを構築していることを意味する。
しかし、データの中身はネットテレビの起動時刻など利用目的が想像しにくいものも多く、グーグル側に正式に問い合わせる窓口もない。個人情報保護委員会は日経ビジネスの取材に対し、グーグルの対応を「法の努力義務に反している可能性がある」と指摘。しかし、グーグルが改善に動く様子は確認できない。
その姿勢は、今回対象になった7社全てに見られた様々な問題の背景に共通するものではないだろうか。
「Android TV Launcher」
この英語が何を意味するか想像がつくだろうか。2018年4月、グーグルから開示された個人データの中に含まれていた項目の1つだ。
第3回で説明した通り、筆者はアップルのハードユーザーである。通信端末は同社のものばかりだ。グーグルのOSであるAndroidを利用したことが果たしてあったか、すぐには思い至らなかった。
ネットテレビの起動時刻と一致
思い悩んでいると、「Android TV Launcher」に並んで、「Hulu」という項目があったのを見てはたと気付く。記者はネット動画サービスの「Hulu」に加入し、自宅のネットテレビで利用している。「Android TV Launcher」が意味するのは、テレビに組み込まれているネットワーク機能の起動時刻ではないか。思い起こしてみれば、テレビでグーグルアカウントを同期させた記憶がある。
そこで、ネットテレビの起動を何度か繰り返し、その時刻をメモした上で、再度グーグルから個人データをダウンロードすると、時間が確かに一致した。
テレビのプライバシーポリシーには、グーグルに関する記載は見当たらない。一方、グーグルのプライバシーポリシーには、同社のサービスを利用した際に「リクエストの日時」を収集すると書いてある。
なぜこのようなデータまで収集するのか。データ収集の目的について、グーグルはプライバシーポリシーにサービスの提供・維持・向上・開発、広告の提供、利用状況の測定、ユーザー保護などと列挙しているが、テレビの起動時刻がこの内のどれに当たるのかは結局のところ分からない。
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データとは、文字列の羅列であって、ダイヤの原石でしかなく、それをどのように利用するかで価値を持つようになると思います。利用の仕方は、千差万別であり、どのようなデータ構造で管理するか、どのようなアルゴリズムで解析するかは、企業秘密に直結するの
で、開示できないのが普通ではないでしょうか。ただし、ビッグデータには個人情報が含まれており、プライバシーポリシーで制限をかけるしか方法がないのだと思います。質問すれば、何でも教えてくれる学校のように正解が用意されているわけではないので、あらゆる質問にいちいち回答するのは、多大な負荷がかかると考えて間違いないと思います。...続きを読む例えば「テレビの起動時刻を何に使っているのか」という質問に対して、行動パターンを把握する為に、テレビを見る時間を管理して「番組の思考を探って、オススメの番組や商品を紹介する」とか「いつも見る番組を自動で予約するとかアラームを鳴らす」とか「いつもテレビを見ている時間にテレビを見ていない場合、倒れていないかという見守り機能」とか「普段テレビを見る時間でもないのにテレビがついていたら、不正利用されていないか」などと、いろいろなアイデアが考えられます。開発段階で、それらの内容を開示すれば、他社にアイデアを盗まれる事になるので、わざわざ教えないのが普通だと思います。
また「ITの知識を満足に待たないまま、あなたの会社のサービスを使っている人はいるはず」という疑問に対しては、プラットフォーマーに限った話でなく、ネットの世界全般に通じることなので、ITの知識もなく利用している人が狙われると思って間違いないと思います。
Reini Mizushima
インサイドセールス、営業コンサルティング
外資系の会社に長くいました(グーグルにも在籍していました)ので、内情を知るだけにコメントをしづらいところもありました。あくまでも一般論ですが、出先である日本法人は、法人としての判断ではなく、個別の機能事業で本社にレポートラインを持っていると
ころが多いです。カスタマーサポート系はコストセンターでありコンプライアンスの厳しいルールとコストパフォーマンスを見られていて、意思決定ももちろん、顧客対応も日本に置かれていないことも多くあります。EUの規制強化は、政治的な背景もありますが、個人のプライバシーに対する権利意識があるからからこそ、法規制がなされています。本連載の企業も、基盤は顧客の情報とその情報を提供する信頼に成り立っています。信頼が崩れれば、失うものの大きさは計り知れないのですが、事業者側におごりを許す顧客も変わるべきかと思います。とても、示唆に富んだ記事で、ジャーナリズムはこうであって欲しいと思う記事でした。ありがとうございます!...続きを読むReini Mizushima
インサイドセールス、営業コンサルティング
バランスよく取材されているので、外資、日系に関わらず軽視されているのが、あくまでもコストセンターであり、またおそらく外注しているからでしょうね。外注すると余計に、顧客と何分話したかというKPIが設定されていて、例外的な処理はもっとも嫌われま
す。現場の方々は、厳しい状況のなかで、慮るということよりも、KPIを達成することに追われてしまいます。これは、個々の責任ではなくマネージメントの問題ですので、問題を切り込むためには取材であることを伝えるのは大事ですよね。一方で、対応が変わることのやるせなさは残りますが。。...続きを読むぱい
本題とは関係ありませんが、連載の記事タイトルについての意見です。
本連載の記事タイトルをリストアップします。
第1回 フェイスブックと日本交通[の不都合な真実]
第2回 [国も批判する]楽天とLINEの開示姿勢
第3回 開示請求への対策
不足、ヤフーとアップル[の謝罪]
...続きを読む第4回 [セキュリティーのプロが首を傾げる]アマゾンの対応
第5回 「努力義務違反の可能性」、グーグルの対応、国が指摘
[]で囲んだ部分が、なかなか刺激的で、読ませようとする意図を強く感じます。
自分の目から見て第5回のタイトルのみが許容範囲に入ります。
他の記事でも、なかなか過激なタイトルがついていて、時には記事内容とタイトルが関連してないと思えるものが多数あります。
読んでもらえなければ価値がないので、まずタイトルで関心を引いて読まそうとする気持ちもわからないではないですが、読後にがっかり感を与えてはよりマイナス面が大きいのではないでしょうか。
過激なタイトルは日経BPオンラインに限らないですが、これらの過激なタイトルに辟易してる読者は多いと思います。
寺岡 篤志
日経ビジネス記者
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