魂の90分間。走り、戦い、首位のFC東京をひざまずかせた。「すごく大事な試合。勝ちたい一心だった」。川崎のエースFW小林が打ち立てた金字塔が完勝劇の呼び水となった。
前半20分、左CK。走って止まり、細かいステップを踏んで、マーカーの東の視界から消えた。下田から送られた球を頭でたたきつけた。会心の一撃。史上14人目、大卒選手では中山、藤田(ともに筑波大)に続く3人目のJ1通算100得点。「正直、100点目はどうでもよかった。でも、チームが勝つためには自分ゴールが必要だと思っていた」。狙い通りの大台弾に少しだけ胸を張った。
拓大時代は無印。プロ入り後も故障に泣いた。ただ、迷い、葛藤、苦悩…。すべてを振り切ってストライカーに撤することを決めた。「チームを勝たせるゴールを決める」。その殊勝なまでの思いこそが、原動力だった。
攻撃だけでなく、守備にも奔走した。「泥くさく、戦う。これがフロンターレなんですよ」と小林。3連覇への分岐点。どんなに得点を積み上げても、エースが情熱を燃やすのはチームの勝利、その一点に尽きる。 (松岡祐司)