『ファイアーエムブレム 風花雪月(以下、風花雪月)』について、僕が最も気になっていたのは、SRPGとしてどのように進化しているかだ。トレーラー映像で見た戦闘画面は臨場感が増し、ヒーローたちが大きな部隊を連れ歩いていた。戦闘中のアニメーションは過去作よりも細かくなり、そんなすべてが壮大なスケールを感じさせた。フィールドの見た目は、それこそ「Total War」シリーズやPS2のあの懐かしい「決戦」を彷彿とさせるものがあった。しかし、「風花雪月」の第5章までプレイして、他のストラテジーゲームよりも、本作を「ペルソナ」と比較してしまう自分がいた。これは少々意外なことだ。
「風花雪月」は、不思議な過去を持つ傭兵の主人公が自分の運命を切り開いていくという、いかにもFEらしい物語としてスタートする。主人公の頭の中には魔法の少女が住みついており、この少女は時間を操ることができるようだ。まあ、もう何度も聞いたような話だよね。
ハリー・ポッターのような設定のゲームだが、主人公は教わるのではなく教える立場だ。
しかし、そこで主人公はガルグ=マク大修道院の士官学校の教師に任命される。なぜ教師になるのか、最初は詳しく説明されない。とにかく、プレイヤーはフォドラという3つの国が存在する大陸の中央に位置する士官学校に配属される。フォドラの3つの勢力「アドラステア帝国」、「ファーガス神聖王国」、「レスター諸侯同盟」は比較的に平和で、士官学校には各国の学級があり、それぞれ長所と短所がある。プレイヤーはどの学級の担任になるかを選び、そこからは生徒たちに武の道を教え、彼らを導いていく。要するに、ハリー・ポッターのような設定のゲームだが、主人公は教わるのではなく教える立場だ。
ここからは面白くなる。昔ながらのFEのバトルとして進行するメインミッションの間は学校生活を送り、カレンダーにはさまざまな任務やイベントに生徒たちの誕生日まで記されている。僕は現在、ゲームを9時間ほどプレイしているが、バトルよりもその間の活動に費やした時間の方が長い。なぜなら、やることがたくさんあるからだ。
プレイヤーは毎週、気になる生徒に個別指導を行ったり、グループで課題に取り組ませることで絆を育ませたり、各々の学習目標を設定したりすることになる。生徒が資格試験に合格すると、より強力な兵種にクラスチェンジできる。
生徒たちをどのように成長させるのかはプレイヤーに委ねられている。
休日はガルグ=マク大修道院を散策したり、依頼(クエスト)を受けたり、温室で野菜を栽培したり釣りをしたり、料理をしたりお茶会を楽しんだりなど、さまざまな活動が楽しめる。生徒たちに模擬戦をやらせることもできるし、外から特殊な知識や技能を伝授できる特別講師を招いて生徒たちの勉強に役立つセミナーを開催したり、実戦へ出撃してレベルを上げるような実用的なこともできる。
主人公の「行動力」は数値化されており、特定の施設を利用したり行動したりすると消費されていく。時間は常に有限で、生徒たちの能力や絆をどのように成長させるのかはプレイヤーに委ねられ、どこを優先したいか考えなければならない。まあ、「ペルソナ」のゲームをやったことのある人なら理解が早いよね。
FEにおけるレベル上げやクラスチェンジの過程を新しい形で盛り込んでいることは間違いない。近年のFEはキャラクターの成長やヒーロー同士の絆に焦点を置くようになり、そういう意味でも相性がいい。しかし、それにしても、風花雪月は「ヒーロー」が本当にたくさんいる。各学級には8人の生徒がおり、その他にも他の教師やセイロス騎士団がいて、ときどき登場するフォドラのさまざまな人々もいる。その大半を自分のパーティへ誘うことができ、例えば他の学級の生徒をスカウトできる。これだけたくさんのキャラクター同志のインタラクションをプレイヤーの好きなように成立させられるデザインとシナリオライティングは偉業のように感じる。
「ペルソナ」シリーズと似た構造は間違いなく実現されているが、同程度に洗練されているかどうかは少し疑問が残る。『ペルソナ5』で会話やイベントが発生すると、基本的にその時期やシチュエーションに合ったものになっており、それがリアリティを作り出している。「風花雪月」は単純に「槍のスキルを強化するならこれ」、「騎乗のスキルを伸ばすならあれ」といった実用的な選択肢に陥りがちだ。生徒たちをどのように強化するか管理するゲームプレイはとても楽しく感じたが、それが何十時間と続いた場合、一部のプレイヤーは面倒に感じるかもしれない。バトル以外の活動はスキップすることも可能(その場合は自動で選択される)だが、スキップをしてしまう人は最初からこのゲームに向いていないのかもしれない。
幸い、FEのバトルは相変わらずよくできている。緊張感たっぷりで戦略性の高いバトルシステムになっている。敵のユニットはすぐにプレイヤーのヒーローを囲んでは殺しにかかる。プレイヤーはさまざまな武器や特殊能力を念頭においてパーティに指示を与え、バトルの流れをコントロールしようとする。従来の3すくみシステムがなくなり、代わりに新しい必殺技が盛り込まれていても、シリーズをプレイしてきた人にとってはすぐに馴染めるものになっている。1つ大きな新要素は「天刻の拍動」という行動を一手単位で巻き戻す機能が搭載されたことだろう。これがあれば、ヒーローたちにロスト概念がない「カジュアルモード」を選ばずとも「クラシックモード」で頑張れるだろうし、さまざまな攻撃パターンを試せる。
バトルはシリーズのファンにとってはすぐに馴染めるものになっている。
TVモードでプレイすると「風花雪月」は、はっきり言って醜いゲームである。特に環境はあまり美しくないが(携帯モードでプレイすると少しマシ)、表現形式は進化している。戦場のフィールドはより自然に表現され、マスはキャラクターを動かしているときにしか表示されない。ズームイン機能もあり、ヒーローたちが部隊と共に戦っている姿を近くで見守れる。どのような部隊を連れ歩くかは選択可能で、それぞれ異なる能力を強化してくれる。僕は戦場を何度も近くから眺め、FEの新しい臨場感を楽しんでいる自分がいた。バトル中、カメラはさらに近いアングルになり、ヒーローたちの攻撃のアニメーションを寄った視点から見られるようになっている。しかし、アニメーションの種類はあまり豊富ではなく、必殺技でさえ使い回しがあるのは残念だった。
「ペルソナ」シリーズと似たゲームプレイを取り入れたことは、現時点では良いことでもあり、悪いことでもあるように感じている。FEが新しいことをやろうとしているのは興奮するが、そうすることでハードルを挙げてしまった部分も少なからずある。FEは十数時間後にその内容が激しく変わる前例も多いし、今作でも途中から戦争が勃発することはすでにわかっているので、「ペルソナ」のような学園生活も飽きる前に違う何かに変わるのかもしれない。そこから何が起こるのかはまだ誰にもわからないが、序盤の目新しいゲーム内容は刺激的に感じた。士官学校の生徒たちと同じように、FEも何かを学ぼうとしているように見えた。JRPGというジャンルの中でも特に優秀な教師から学ぼうとしている点も、評価に値するだろう。