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【芸能・社会】

ジャニー列伝(5) 「奇想天外な発想力 年とともに進化」

2019年7月15日 紙面から

 ジャニーズの魅力は、何といってもジャニー喜多川さんの奇想天外なひらめきだ。それがタレントの個性と化学反応を起こし、ファンを夢の世界へといざなう。

 「光GENJI」「シブがき隊」といった言語感覚は誰もまねできない。それでいてダジャレ好き。「『忍者』をつくったときは、学校に行っている子もいて、その日の人数が7人だったり2人だったりするから『きょうは何人じゃ?』と言って名付けたんです」と、はたして本当なのかよく分からない話をされたこともある。

 頭文字も大好きで「KAT-TUN」「Kis-My-Ft2」はメンバーの名字の頭文字を並べたものだ。二階堂高嗣だけアルファベットではなく数字、という大胆さも見逃せない。

 そうした異才ぶりが、時には記者泣かせでもあった。新作舞台の構想を説明してくれるのだが、ぶっ飛びすぎていて誰もついていけない。

 忘れられないのは2012年3月、8カ月後に控えるHey!Say!JUMPの主演舞台「ジャニーズ・ワールド」について初めて語ったときだ。「未来にあこがれる若者たちが四季をめぐりながら、『13月』というユートピアを求めて宇宙に旅立つ。そこであらためて地球のすばらしさに気づき、帰ってくるんです」

 次元を超えた、とはまさにこのこと。後で記者たちだけで集まって「どういう意味なんだろう…」と“すり合わせ”をしたが、正解が分からない。迷いながら記事を書いた。そして迎えた初日の取材。驚いたことに、確かにジャニーさんが説明した通りの物語だった。それが圧倒的な魅力を放ちながら舞台上で展開されていた。

 年老いても、発想力は枯渇するどころか進化していったように思う。今では誰も不思議に思わない「Sexy Zone」というネーミングもすごい。米国育ちの友人に言わせれば「文法的には形容詞+名詞で問題ないけど、ありえない組み合わせ。意味がまったく分からない」。

 ジャニーさんはアルファベットの並びにこだわる。「xyz」に何かを忍ばせた。それは分かるが、英語ペラペラなジャニーさんがなぜ、あえて違和感のある言葉を組み合わせたのか。「Sexy Zoneとはいったいどういう意味なんでしょうか」。デビュー時の取材で質問すると、ジャニーさんは柔和な笑顔でこう答えた。「だって、マイケル・ジャクソンはセクシーでしょう?」

 誰も予想できない角度からの言葉。理解しきれなかったが、これが天才か…と打ちのめされ、なんだか無性にうれしくなった。

  (石井知明、2010~13年担当)

 

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