いだてん感想あらすじ 大河ドラマ・朝ドラ他

『いだてん』感想あらすじ視聴率 第27回「替り目」

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主人公から主人公へ

田畑がこのあと、嘉納に会いに来ます。
そして第一部と第二部主人公が顔合わせです。

作劇上の意図は臭いでわかりますぞ……ホッホッホ!
と、『柳生一族の陰謀』(あるいは『ポプピピテック』ごっこ)をしてもしょうがないでしょ。

 

ここは素直に感動しよう!
田畑が金栗と顔を合わせているなんて、もう涙で前が見えなくなるかも。ライティングが荒いとかいいっこなしでっ!

ストックホルムの回想が入り、前回のアムステルダムなど諸々の映像クオリティの差が残酷ではあります。

「紅茶と甘いお菓子がおいしかったね〜」

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で、感動すればいいんですよ。
そのあとの田畑の戸惑いに、笑えばいいんです。BGMも感動的だ。

元祖を褒める田畑も感動的ですよね!
二部主人公が一部主人公を、古今亭志ん生とかぶせて褒めるなんて、もう感涙じゃないですか。

どういう心理的な状況で、金栗を褒めるのか。
【本人が去ったと思って褒める】けれどそこにいた。それは、おりんと美濃部の二番煎じじゃないかって?
細けぇこたぁいいんだよ。

あの田畑の、ババアだの、セクハラだの、そういうのにまみれた口の悪さも、このときのためにとったあったんです。

なんてすごい脚本でしょうか。
あの不愉快さ諸々も、この感動のためにあったんです。
もう、ありがとう見てきてよかった、そうなりますよね。

金栗を見てきてよかった。
田畑にも期待したい。そういう感動の涙で、もう前が見えなくなりますよ!

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水泳の指導や改革描写が不十分だって?
何のための紀行だと思っているんですか。それで十分なんですよ。

 

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MVP:実次

死が近づくと、スーパーパワーがあるらしい。
そういう法則が見事でしたね。

 

総評

盛り上がりましたよね!
日曜夜は、訃報と葬式が待ち受けていますから、ハンカチを用意して、号泣準備をしておかないとマズイです。
スピリチュアルな感動があるわけです。

大河という枠は、そういう感情が豊かな人たちが楽しく幸せに見られるように、スタッフや出演者が安い給料で働き、高いパフォーマンスを披露することで成り立っている。

こういう制作側が、視聴者にあなたたちに何を望んでいるか知っておられますか?

今のままずーっと、感動してくれれば良いのです。

作劇上のわざとらしい仕組みや、整合性矛盾なんかに気付かず、ハラスメント発言やしつこい演出でもぼーっと見て何も考えず、誰かが亡くなったら号泣とツイートして、作中で戦争が始まったら、真っ先に歴史うんちくを語り始めて、補完してくれれば良いのです。

そんな理想的な視聴者として、来週からも楽しみたいと思います!

『ダウントンアビー』や『ヴィクトリア 愛に生きる』を、
「歴史ドラマではない」
と言い切るイギリス人がいたら、周囲は目をグルリと回して肩をすくめることでしょうが。

しかし日本だと、戦国と幕末とコスプレ以外の明治以降は、
「歴史ドラマではない」
という言い訳が通るようです。

一体どういうことでしょうか。

近現代史を直視したくない、特にあの敗戦周辺前後は目からは目を逸らしたい。
学校ですら三学期に駆け足でやる程度……そんな苦しい事情が見えてくるようではあります。

これは大河の歴史にも関係ないわけでもないでしょう。

「日本の歴史は偉大だ! あの戦争前にちょっとおかしくなっちゃっただけ」
という、司馬遼太郎氏の歴史観にも通じる価値観。それが大河ではありませんか。

大河や日本人の歴史観が『いだてん』のふにゃふにゃとごかます歴史描写になっているのだとすれば、これはもう作品関係者を責めたところでどうしようもないのでしょう。

でも、細かいことはどうでもいいんです。
魂でこの饗宴に参加しましょう。

ここから先は、ちょっと愚痴のような話かもしれませんが……。
私は他の大河レビューやブログの類は基本的に見ておりません。

以前は、たまに目を通しているサイトはありました。
しかし、偶然みたコメント欄で、こういうことが書かれてあったのです。

「ここのレビューと一致している記述があった武将ジャパンって、絶対に作者さんをパクっていますよね」

これを見て以来、そのサイトも全く見なくなりました。

人には人の数だけ、意見があります。
私は自分の頭で考え、体験を重視していますので、パクろうなどとは考えたことすらありません。

そういう安易なパクリ認定は、サイト筆者にまで迷惑がかかると、どうして想像すらできないのか?

誰かが、香水ではシャネルのナンバー5を好きだと言ったとしましょう。

「マリリン・モンローのパクリですね」
と返したらどうなるでしょう?

相手が試して、吟味して、化粧品売り場でこれだと確信して選んだ。
コンサルテーションの結果、これがぴったりだと判明した。そうだとしたら、どうしますか?

パクリと言った時点で、審美眼そのものをコケにしたことになるわけです。

自分がセレブの影響を受けやすい。パクリ思考。
だからといって人類全体がそうだと思わないでおきましょうか。

まぁ、そんなことは忘れまして。
うん……いろいろ厳しいことは書きましたが、本作がきわめて騒々しく、かつ楽しいドラマであることは確かです。

「騒々しくて楽しいドラマアワード」があれば、絶対にグランプリ受賞します。
技術的にも高い。それはそうです。

本作のノリで思い出すのは、とある老眼鏡広告です。
ちょっとと比べてみましょうか。

・男性が「小さすぎて読めなぁぁぁい!」と叫ぶ

→前作広告を踏まえてそこで笑わせようというオチ。
視聴者が前作広告を踏まえていることを前提とする。
初見の人をあっという話せる気持ちはない。

・着物姿で微笑む若い女

→想定視聴者がこういう女がお好きでしょ、というわけ。

・「メイド・イン・ジャパン!」
→日本製品がよいという前提は、既に崩壊している。
国産スマホの惨敗を知らない年代には響くという甘えがそこにある。

なにもかも
【視聴者ならばこうする】
という甘えに寄りかかった構造です。

初見の視聴者をあっと言わせる。そういう驚き。映像美。斬新性は皆無です。
それでも楽しい。そして騒々しい。

そんな文化祭、運動会的な楽しみ方って、ある意味、五輪プッシュドラマとしては正解でしょうね。

 

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ニュース観察日記

彼の勇気には、敬服しかありません。

◆たとえ干されようとも いだてん俳優、覚悟の政治発言:朝日新聞デジタル

彼の意見に深く頷くのは、まぁ……このレビューもそのファンによってコメント欄大荒れだということもあるのでしょう。
なんなんだろう。

◆10月以降でのん出演?「いだてん」にメディア非公開の極秘台本 

いつまで彼女で引っ張るのか?ということではなくてですね。

出演者ネタ、しかも飽きてきたネタでくらいしか、引っ張れないという可能性を示しています。
それだけ、プロットでは盛り上がらないってことでしょう。

◆「いだてん」の視聴率は多分、今後も上がらない - 中川右介|論座 - 朝日新聞社の言論サイト

視聴率のなかなか冷静な分析ですが、それにはこういう反論はあるわけです。
「でも、見ている人は傑作だと断言している!」

◆「いだてん面白くない」と脱落しかけた漫画家が熱烈にハマった理由

場末で、関係者も鼻に引っかけない、三流ライターである私ごときの意見より、こういうベテラン漫画家さんの意見の方が正しいに決まっているじゃないですか。
人気大河ブログさんでも褒めているようですし、ドラマ通もツイートで絶賛しています。
それでもういいじゃないですか!!

この熱気も、実は測定方法があります。

ジョセフ・ジョースターごっこをしている場合じゃないと思いますが、最近はやめられなくなって来ましてね。
色々と興味深いのです。

「次にお前は、絵だてんが続々投稿……と言う」
「次にお前は、神回……と言う」

◆『いだてん』、”神回”第26回の感想ファンアート「絵だてん」が続々投稿 | マイナビニュース

「次にお前は、視聴者号泣……と言う」

◆いだてん26回、菅原小春の演技に視聴者号泣

◆菅原小春『いだてん』人見絹枝役の熱演に反響 「天国の人見さんも感動してると思います」 | ウーマンエキサイト記事

こういうツッコミは野暮だとわかったうえで、敢えて言いますが。

死者の代弁は危険ですよ……。

視聴者号泣はレビューには書かなかったんですが、人見絹枝が死ぬところで予測できました。
いやむしろ、放送前からハンカチを握りしめていると投稿する人いましたもんね。

昔、一斉を風靡してネタとなってしまった「全米が泣いた」に通じるものがあります。

◆初めて「全米が泣いた」映画が登場したのはいつ? → 本気で調査してみたら、俺が泣きそうになった (1/2)

だいたい見出しまで予想できるから、ジョセフごっこをしてしまう。

 

いや、遊んでいるだけじゃなくてですね。
これも熱気測定の手段なんです。

「神回!」にせよ。
「絵だてん」にせよ。
「視聴者号泣」にせよ。

実はある五文字で言い換えることはできるんです。
それは……
「万策尽きた」
です。
視聴率回復の手立てがないからこそ、なんとなくすごそうな言葉でごまかす。

グルメ番組で、リポーターがいちいち「おいしぃ〜〜〜!」と叫ぶ演出と似たようなものです。
『日本縦断こころ旅』の火野正平さんは絶対にやらないリアクションですね。

理由は?
どうしてうまいのか?
類似品と比較してどこがどうよいのか?

そういう具体的な理由は不要なわけです。

そしてこの手の報道は『真田丸』や『おんな城主 直虎』ではさしてみかけませんでした。
純粋に脚本や演技の具体性を褒めていたものです。

小野政次なんて、死の際には追悼アルバムまで出ましたからね。
それだけ、売れる手応えがあったということです。

小野政次・追悼盤CD『鶴のうた』全14曲緊急レビュー この曲あれば政次ロスを癒やせますか……

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国際エミー賞ノミネートの『八重の桜』でも、こんな現象はありません。
あのドラマでの演技が評価されたことは、綾瀬はるかさんのアクション役が多くなったことからもわかります。

そういう具体性を伴う評価が『いだてん』周辺にあるのか?ということです。

 

では、どうすればよいのか?

本作をどうすればよくできるか。
そのことは第一部までは考えていました。

今はもうありません。
決定的な敗北となれば、あとは撤退をしたあとでの立て直しかない。

『麒麟がくる』の出番です。

ただ、立て直しの案は一応あります。
これは『ゲーム・オブ・スローンズ』シーズン7以降とも同じ、たった一つのシンプルな答えではあるのですが。

「原作者当初のプラン通りにドラマにしましょう」

この提案を聞いて、『ゲーム・オブ・スローンズ』ならばわかけれども、本作はそうではない、どうかしたのかと思う方もおられるでしょう。

本作の出来において、クドカン氏を責めても仕方ないとは思います。
むしろ、被害者です。

彼の本意がかなっていないこと。
それは想像を逞しくして、猜疑心をフルスロットルにして嗅ぎまわれば、わかることです。

・彼自身の発言が当初とは違って来ている

→当初は、オリンピックをテーマにしたオリジナルドラマが大河になったという筋書き。
それがいつしか、数年前から拘束された大河ありきという論調になっています。

・書き直しがかなり入っているとの発言もある

→自分の作風ではないと明言したようなものでは?

・作中のキャラクター像がぶれていて、安定感がない

→表面的にはそこまで変化がない? 同じ役者だから?
いいえ、細かく辿っていくと記憶力や基本的な性格、人間関係すら混濁しています。

・パートごとの作風が違いすぎておかしい

→スポーツと落語パートの作風の差が、回数が進むにつれて違いがあらわになっています。

・センスのないギャグと安易なセリフが増えた

→セクハラめいた容姿貶めは、彼のセンスとも思えませんが。

・伏線を捨てた展開、唐突なオチを迎える展開が増えている

→特に落語パートが顕著。小梅の縁談なんてチグハグ。粗雑!

・時代考証凡ミス

→序盤の精密性がなくなり、粗雑なミスが目立つようになりました。

・語彙低下

→序盤はその時代らしい、凝った語彙や独特の言い回しがありました。それが急激に減少傾向にあります。勉強熱心な彼らしからぬやり方です。

・赤ん坊、エロス、朝ドラ最終盤レベルの身内葬式ラッシュ、「冷蔵庫の女」

→子供やエロチックな場面、葬式、そして若い女の死。こういうベタな感動要素を入れるとは、ひねったクドカン氏らしからぬ作風では?

・とある朝ドラ脚本家氏が、自分のカラーをそのまま取り入れた制作チームに感謝していた

→脚本家のカラーを生かすも殺すも、制作チームの覚悟次第ということ。

こういうクオリティ低下は、序盤視聴率低下を受けて、編集や脚本に手を入れられるタイミングではっきりとしてきました。

私はクドカン氏自身にはさして思い入れがない。
いや、むしろ思い入れありきでの評価は禁じ手でしょう。
毎週、クドカン氏ファンの友人の顔がちらついて、正直困りに困っているところではあります。

全部の作品を見たわけではない……それでも、序盤と現在の作風すら一致しない程度はわかるのです。

彼には同情します。
自分の作風を引っ掻き回された挙句、ファンがそういう作品をこれがクドカンカラーだと浮かれている。

これはもう、地獄の苦しみでしょう。

ひねくれたものの見方をしないで、スタッフロールを素直に信じろという意見はあるでしょうね。
それにしたって、私がどうしても思い出すのはこの映画です。

 

ほんとうに彼の作品なのでしょうか?

◆大河『いだてん』脚本の宮藤官九郎や音楽の大友良英が“国威発揚、東京五輪プロパガンダにはならない”と宣言

これは挫折では?
人見絹枝はきっぱりと「大和魂」と口にしておりました。

シマの扱いといい、これはもう挫折しました。
そして推察できること。

それは……
【プロパガンダに抵抗したクドカン氏の挫折と作品の迷走】
という最悪のシナリオです。

第一部最終回で、シマが被災者代表扱いおよび集合体扱いをされたうえで、オリンピックこそ復興者の願い扱いされておりました。

そのことが不気味で嫌だと指摘したところ、懸念通りのニュースがありました。

◆福島住民「首相への本音、止められた」 演出される復興:朝日新聞デジタル

この記事によると、大熊町の被災者の方の言葉として、こんな趣旨のものがあります。

「東京ではオリンピックだ何やらで盛り上がっているが、ここでは復興が進んでいない」

そういう部分は削られてしまう。
むしろ、被災者こそ復興のシンボルとしてオリンピックを歓迎するような風潮を演出されてしまうということです。

その演出の一環が、シマの死をめぐる周辺から感じられて、どうにも本作がおかしいと思えてしまうのです。

いや、でも、騒々しくて楽しいドラマだということは確かです。
来週からも楽しみましょう!

文:武者震之助
絵:小久ヒロ




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【参考】
いだてん/公式サイト

 



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