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（坂場）これは　君が作るべき作品です。
（カスミ）♪「二人のこの夢は　純粋な歌に似て」
（なつ）兄のヘンゼルが悪魔の塔に助けに行くんですよ。
（神地）面白くない！えっ？
（神地）僕は　捕まるなら兄のヘンゼルだと思います。
（麻子）やっと　やりたいことが見えてきた気がする。
♪「通う道　果てなき里の道よ」
♪「遥かなる愛し君」
こういうの　どうでしょう？
何だか　なつたちの新しい時代が始まったようだぞ。
（一同）ヘイ！
♪～
♪「重い扉を押し開けたら暗い道が続いてて」
♪「めげずに歩いたその先に知らなかった世界」
♪「氷を散らす風すら味方にもできるんだなあ」
♪「切り取られることのない丸い大空の色を」
♪「優しいあの子にも教えたい」
♪「ルルル…」
♪「口にする度に泣けるほど憧れて砕かれて」
♪「消えかけた火を胸に抱きたどり着いたコタン」
（咲太郎）かんぱ～い！（一同）かんぱ～い！
なつ　お前　いつからそんな飲めるようになったんだ？
喉渇いてたの…。
夕見。（夕見子）うん？今日は　私の部屋に泊まっていきなね。
大丈夫。　まだ帰れるしょや。みんなだって帰るんでしょ。
いいから　泊まってって！うわっ…！
もう酔っ払ってんの？酔ってないわ。
そうしてやってよ　夕見子ちゃんなつが寂しがるから。
なつは　寂しがるんじゃなくて心配したがるだけさ。
どうゆうことよ？本当に心配してんだからね。
北海道の家族をだべさ。えっ？
私のことより北海道の家族のことが心配だから私が望まないこともしようとするんだべさ。
そんなこと…。
何でも言い合える仲なのね。本当の姉妹みたい。
私となつは　本物以上だも。
うそのない姉妹だもね　なつ。
だったら　なして　うそつくのさ。何のこと？
今　どこで誰といるか言わないべさ。
うそと隠し事は違うべさ。どこが違うの…。
（雪次郎）まあ　まあ　まあ　いいべさ　今は。
（レミ子）ほら　なまってる！あっ…。
そうやって油断してるからお前は　いざという時に出るんだ。
（雪次郎）すいません！おう。
ねえ　駆け落ちでもしてきたの？えっ…。
世間一般の目から見たらそういうことになりますかね。
はあ？　駆け落ち！？
（茜）えっ　相手も大学生？
はい。　同じ大学です。
ご両親に反対でもされてるの？
そもそも　親には　何も言ってないので反対も何もないです　お互いに。
（麻子）だって　駆け落ちしたんでしょう？だからそれは　世間が　そう見るかもしれないってだけのことです。
世間は関係ないでしょ夕見のこと聞いてんの！
人は　世間とは関係なく生きられるものでしょうか？
は？　お願いです今　ちょっと黙っててもらえますか。
失礼。　続けて下さい。
世間と関係なくは生きられないから駆け落ちしたんです。
どうゆうこと？このまま　北海道にいたらさ親にも分かって２人は　どういう関係なんだとか結婚する気はあるのか　ないのか認めるとか　認めないとかそうゆうことから　自由になるためだわ。
なるほど。ね。分かりました。
分からないで下さい！あの　私が　ついていけなくなりますから。
失礼。　続けて下さい。
夕見子ちゃんは　その男の人を愛しているのかい？
棒読みになってるよ！
愛って何さ？　雪次郎。
えっ　愛って…何だべ？そこで　なまんのかい！
教えてあげる。　愛って　志よ。
こころざし？
男の存在には　愛を持てないけどこの志だったら　愛を持てる。（雪次郎）うん…。
じゃ　その志が消えたら愛も消えちゃうの？
そう！　ただ　そこに　その人がいるだけで好きなんてありえないしょ。
そうかしら…それが愛なんじゃないかしら。
（堀内）何だか　すごく合理的な愛に聞こえるよな　それじゃ…　ねえ…。
愛の不合理さを認めるから女は不幸になるんです！
それは　もう古い！
はあ～…　私には分かんないわ！
新しくなったりとか古くなったりとかしないから愛なんじゃないの？ねえ　愛ってさ…。
おい　大丈夫か？大丈夫？
き…　君の愛って　何ですか？
ごちゃごちゃ言うな！
気持ち悪…。
はあ～…　若いって　すばらしいわね亜矢美ちゃん。
（亜矢美）愛を語れるだけ　すばらしいわ。
♪～
（戸が開く音）
気分は？　大丈夫？
ねえ　夕見。うん？
私にも分かるように話してよ。何をさ？
どして　東京来たのかその人は　どういう人なのか。
その人は　物書きを志してる。
物書きって　小説とか？
小説に限らずよ。
ジャズが好きだから　ジャズの評論とかも大学の同人誌では書いてる。
その人も　夕見のこと　本当に好きなの？
男に　だまされてるとかそんな心配いらないからね。
なつも　その人に会えば分かる。
だったら会わせてよ　その人に。
そのうちね…。　さあ　もう寝よ。
布団一つ？うん。
ま　いいか。
♪～
なつ…。うん？
迷惑かけて悪いね。
迷惑なんて思うはずないしょ。
おやすみ。
おやすみ…。
今日は　どうすんのさ？
とりあえず　仕事を探さないと。
こっちで探すの？
働かないとどこにいたって暮らせないしょ。
大学には戻らないの？
うん…　それは　まだ決めてないけどそうなったら　そうなったで別に　いいと思ってる。
それは　さすがにご両親にも言わないとね。
お金　ずっと出してもらってんでしょ？
そりゃ　自分で決めたら言いますよ。
ごちそうさまでした。
あっ　いいよ　いいよ…　やるから。あっ　すいません　お邪魔しました。
えっ　もう帰るの？
さすがに　向こうも心配してると思うから。
ねえ　とりあえずでいいんだったらさうちで働かない？
ん？えっ？
そんな大層なお給料とか出してあげられないんだけどそのかわり　好きな時間に自由に来てくれればいいから。
昼間でもいいし。
今　ここは　咲太郎のプロダクションの事務所にもなってるし…　ね。
あ…　うん。電話番でも　やってくれたら助かるよ。
本当に　いいんですか？うん。
したら　仕事が見つかるまででもいいですか？もちろん。
そしたら　よろしくお願いします。ああ…　お願いします。
とりあえず　また来ます。うん　うん…。
待ってるね。ありがとうございました。
亜矢美さん　お兄ちゃん　本当にいいの？
顔を見れればちょっとは安心できるでしょ？
それで…。・（戸が開く音）
は～い　気を付けて…。ありがとうございます。
「ヘンゼルとグレーテル」は作画作業が始まっていました。
（神地）あの　なっちゃん。えっ？
これ　原画を描いてみたんですけど見てもらえますか？
あの　マコさんも　よかったら。
もちろん　いいわよ。分かった。
♪～
よく描けてるように見えるけど。はい…。
でも　どうでしょう。
これで…。
（茜）すごい…。裏から見ても　デッサンに狂いがないわね。
それぐらいは常識でしょう。
奥原の初めの頃とは大違いだな。はい…。
わざわざ言います？　それ。すまん。
これで　いいと思う。じゃ　これ　自分で動画も描いてみる？
はい！あっ　茜ちゃん　描いたら見てくれる？
あ…　うん　もちろん。
ありがとう。じゃ…　ありがとうございました。
ちょっと　なれなれしいけど文句言えないわね　あれじゃ。
いきなり　ちゃん付けですか…。
神地航也…神っちと呼んであげましょう。
（井戸原）いくら勉強のための短編だからってねいつか　劇場公開されることを前提に作ってもらわなければ困るよ。
分かってます。じゃ　この物語に社会風刺の意図は入ってないって言うんだね？
もちろんそのために作ってるわけじゃありません。
（井戸原）魔女の上にわざわざ　悪魔を出して悪魔と魔女…これは　アメリカと日本の関係を表してるんじゃないだろうね。
見る側が　どう受け止めるかは自由じゃないでしょうか？
（仲）もちろん　自由なんだけど純粋に　子どもが楽しめるものにしてほしいだけなんだよ。
その考え方はもう古いんじゃないでしょうか。
古い？（下山）おい　イッキュウさん…。
漫画映画は　子どもが見るものだと決めつける考え方です。
♪～
ねえ　奥原さん。はい？
あの子は　どうした？あの子？
あっ　夕見のことですか？
とりあえず　風車で働くことになりました。
あの子の考え方私は間違ってないと思うわよ。
うん？
女にとっては　結婚も志でしょう。
するか　しないかも含めて女は　何を一番に考えるかで生き方が決まってしまうんだから。
仕事か結婚　どっちかを選ばなくちゃならないんですか？
どんな選び方をしても人から責められることはないってことよ。
♪～
お帰り。お帰り。
（亜矢美）結構　降ってんね。夕見…　ただいま。
（亜矢美）はい。ありがとう。
なつ　会わせてやったよ。ん？
えっ…！
なつよじいちゃんが　ここに来るわけないだろう。
けど　夕見子ちゃんそういう人が好きだったのね…。