ステルスとは「隠密」の意です。主に軍用機がレーダーに捕捉されにくくする技術です。でも、世の中も何やらステルス化しているような気が…。
ある情報を消そうとすると、かえって拡散を招いてしまう-。こんな現象は「ストライサンド効果」と呼ばれています。インターネット世界での用語です。
言葉の由来は、米国の女性歌手バーブラ・ストライサンドさん。一九七〇年代に「追憶」の曲が大ヒットしました。女優でもアカデミー賞を受けた超有名人です。
彼女はカリフォルニア州の海岸線を撮影した膨大な航空写真のデータベースに自分の邸宅が写っているのを知りました。
◆地上イージスの狙いは
無断で家屋を撮影したのは、プライバシーの侵害にあたるとして訴訟を起こしたのです。二〇〇三年のことです。確かにストライサンドさんの邸宅は、ロサンゼルス郡西部の海辺にありました。
ただ、一万二千枚に及ぶ写真は、過去の写真と比べて、海岸の浸食度合いを研究するのが目的でした。政府の公認でもあり、彼女の訴えは退けられました。問題はその後に起きました。
画像の公開を差し止めようとした訴訟がニュースで報じられると、かえって世間の関心を集めてしまい、豪邸写真に無数のアクセスを呼んだのです。つまり、誰にも気付かれないはずだったのに、隠密化を図ることで、かえって「ここに秘密情報がある」と教えることがあるのです。
それを想起させるケースがありました。例えば秋田への「イージス・アショア」の配備計画です。陸上に置く迎撃ミサイルシステムです。他の候補地では山が邪魔になるという防衛省の説明が一転し、何たることか山の仰角の測定ミスでした。それでも秋田という地名にこだわります。なぜ?
◆GDPもかさ上げか?
地球儀で北朝鮮と秋田を結ぶと、その先にはハワイが…。米軍基地のある島です。もう一基は山口・萩ですが、こちらもグアムにつながります。つまり日本全土の防衛といいつつ、実はハワイとグアムの米軍基地の前線防衛なのでは…、そんな疑念が湧きます。
超音速が出るミサイルを撃ち落とすには、その軌道上が最も適切な場所です。日本全土を守るためには、軌道の斜め横からの迎撃になり、理屈の上では技術的に難しくなるはずです。
総額六千億円以上もの税金をかけて、主眼は米軍基地の守りなのでしょうか? かえって日本が狙われやすくなるという指摘もあります。真実を隠すステルス化が感じられます。
もう一例、数字のマジックです。毎月勤労統計の統計不正だけではありません。二月の衆院予算委員会では「国内総生産(GDP)のかさ上げ疑惑」が飛び出しました。現政権となり、五十三件の統計手法を見直しました。
そのうち三十八件がGDPに影響し、押し上げ効果を発揮するそうです。基幹統計ばかりです。ひょっとして「GDP六百兆円」の掛け声に合わせる目的だったのでしょうか?
「国際基準に合わせた」との政府説明でしたが、「説明のつかない『その他』の要因でGDPがかさ上げされている」と野党から追及されました。すると予算委員会は長期間、開かれぬままになりました。論戦の場を閉じる究極のステルス化かもしれません。
奇妙な「修正エンゲル係数」もありました。貧しい家庭ほど食費支出の割合が多いという有名な係数ですが、修正版では「係数は上がっていない」との結論。でも、物価変動の影響を除去した数字でした。そんな修正に意味があるの?
言葉のステルス化も進んでいます。「就職氷河期世代」を「人生再設計第一世代」へ。「非正規」は「フルタイムで働いていない方」だと…。新手の言い換えは、「非正規をなくす」の掛け声のせいではないのですか?
さて、とんでもないニュースが米国から入りました。先月に米国のオンライン軍事紙ディフェンス・ニュースが「最新鋭ステルス戦闘機F35には、十三もの重大な欠陥がある」と報道したのです。
その中には驚くべきことに、F35が超音速飛行が可能なのは短時間で、制限時間を超えると機体が損傷し、ステルス性の機能を喪失する可能性があると…。
◆戦闘機の「見える」欠陥
ステルス戦闘機が「ステルス」でなくなるとは! 見えては欠陥です。「隠密」に意味があるのですから。トランプ大統領のトップセールスで百五機を爆買いする日本。購入費は安く見積もっても一兆二千億円だそうですが、「見える戦闘機」なら大幅なディスカウントをしてもらわないと。
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