上:第3話はディオが人外になるっていう大きな転換点になって、ここから作品も本題に入っていくという感じなんですけど。
子:事実上の最終回だね。第3話はちょっと尋常じゃなかったですね。スタジオが真っ赤な炎に包まれて燃えてましたから。それぐらいの不思議な空間だった。26年やってきてますけど、あそこまで錯覚をすることはなくて、初めての経験だった。自分がまさにディオになって、興津くんがジョジョになって、そこで戦っているかのような。子安武人が声をあててるっていうのが普通なんだけど、そうじゃなくて自分がその場所で戦っているような雰囲気を、あの第3話で味わいましたね。ラストテストの時からそうでしたよ。尋常じゃないラストテストだったからね。
上:僕もあの臨場感ってすごくて、感情そのままで台詞をバンと出せたというか。
子:台詞のやり取りとかも面白かったし、戦って落ちて最後に女神像に刺されてって一連のシーン、声に出す台詞とモノローグとテンポとか、畳み掛けるような展開とか、ああいうのでどんどんテンションが上がっていって。アドレナ…リン?アドネナニン?
上:へっへっへ(笑)
子:アドネナニンがー(笑)こう、頭にいっぱい出てきて、それでテンションが上がっていったんだと思うんだけど。いわゆるランナーズハイみたいな。役者として初めてハイになる、本当に楽しい第3話だった。3話やって、満足しちゃったもん。あとの第4話から第9話までのディオは、悪役としてできあがってるディオだったので…正直なところ、そんなに「自分の中に活力がみなぎって楽しい、ハイだ!」っていうところまではいかなかったですね。少年期から青年期まで、人間から吸血鬼になって、亡くなってっていう第3話までの一連の流れが、ディオとしてすごくやりきった感があって。その後はもう…老後?
上:老後(笑)
子:僕の中ではそうだった。僕の中では、ディオはもうあそこで死んだ、あそこで完結。第4話からは吸血鬼としての新たなるディオ。吸血鬼として生きている、いわゆるDIOに近い方のディオだね。新キャラな感じ。だから、あそこでかなりリセットしたね。一番楽しかったのは第1話から第3話まで。
上:第8話の決戦とかは。
子:火をつけて戦うところ?
上:「ジョジョ本当に来やがった」みたいなところがあったり、意外な攻撃をされて動揺して若いときのアレが出ちゃったり(笑)
子:ディオ的には冷静さを装ってるんだけど、そんなところはスピードワゴンに見透かされてる、みたいなとこでしょ(笑)あれがあいつの本性だ!みたいに言われて。
上:そこがディオの魅力だったりしますよね。
子:結局あいつはねえ、学習してないんですよ。これは第3部のディオに至ってまで。詰めが甘い。
上:はっはっは(笑)
子:まぁ…詰めが甘くないとやられないんだけどね。主人公に勝っちゃいけないから、しょうがないんだけど。結果的には、そこが吸血鬼になっても人間臭い、愛すべきキャラクターなのかもしれないですよね。完璧じゃないところ。役者としては、そういう人間味があったりとかは感情を揺れ動かすところで使ったりできるから、楽しい部分ではあるんですけど。
子:第8話ねえ、興津くんがなんか正義の味方みたいになってて。「やってやるぜこの野郎、かかってこーい」みたいな。
上:成熟してね。
子:完全に少年漫画主人公にできあがったな、って…あの瞬間が、少年、ジャンプ!
上:ジャンプらしいな、と。
子:いい感じだなーと思いつつ、そこに乗っかってヒーローっぽく言ってる興津に「この野郎~!」と思って(笑)てめーこの野郎、人の邪魔ばっかしやがって、みたいな。あの人本当にね、ディオの邪魔しかしないですからね。
上:まぁそれは(笑)
子:僕は一生懸命この、悪いことをね。目的があって僕はいろんなことをやってるんですよ。乗っ取りから始まって最後は世界制服までいってるわけじゃないですか。一生懸命そのために頑張って努力してるのに、邪魔しかしないんですよ。あの主人公。
上:(笑)
子:お前は自分の人生、何をやりたかったんだよっていうのが。ねーのかよ。人の邪魔ばっかでさ、自分の人生使いやがって。
上:最終的にそのまま死んじゃいますからね。
子:彼は自分の青春はディオの青春だ、みたいに言ってたけど、その通りだよね。興津くんにも言ったんだけど、「君が立派になったのはディオのおかげなんだよ」「あなたはディオに感謝しなければいけない」って。悲しい人生じゃない、ディオにとって楽しい華やかな人生になったんだから、感謝して死ね、って。
上:華やかかどうかはわかんないですけど(笑)
子:いやー充実してたよ、人生ダラダラ生きてる奴よりかは遥かに。
上:ジョナサンは最後、納得して死ぬっていうのはありましたよね。だから僕、ジョナサンの魅力はそこだなって思うところもあるんですけど。
子:あーそうですか。
上:(笑)
子:僕はどうしてもディオ目線で見ちゃうんですよ(笑)もう本当にねえ、デビューからずっと悪党ばっかやってきたから、悪党の気持ちしかわかんないんだよね。正義の味方って邪魔ばっかするんだよ。他にやることねーのかよと思うんだけどね。
上:悪役って自分の欲望に正直じゃないですか。そこに人は誰しも憧れを持つというか、普段なかなかそういう風にはいかないですから。
子:なれるわけないよね。倫理的にね。人の迷惑になること、やっちゃいけないからね。やっちゃだめなんだよ?(笑)僕は役の上で言ってるだけだからね。
上:くくく(笑)
子:でも悪役の気持ちの方が本当によくわかるんだよ。正義の味方の気持ちは全然わかんないんだよ、本当に。
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