全7190文字

:フェルさんの原稿のことは分からないけれど(苦笑)……でもそうやって、仕事も文章も鍛えられていくわけじゃないですか。でもクルマの運転にはそれがない。免許を取った瞬間にもう一人前。俺の運転にケチを付けるんじゃないよ、というのが普通の人の感覚でしょう。だけどそれは本当にあり得ない話なんです。

スバリストは世界中にいる。スイスから応援に駆けつけた熱心なファンのご夫婦。

F:とはいえ、これから運転の教育改革を行うのも難しい。既存の免許保有者に対する啓蒙活動を行うのはもっと難しい、それならクルマの側で何とかするしかない、と。そういうつもりでクルマを造っていらっしゃるということですか。

:そうです。その通りです。みんな運転がヘタなんだから、クルマの方で何とかしようや、というのが私の根本的な考え方です。

F:アイサイトという安全デバイスを早い時期から付けていたのも、そういう背景があるからですか。

:その通りです。

スバリストの異論歓迎

F:スバリストといわれる方の多くは運転に自信があって、「アイサイトなんか俺には必要ない。余計なことをしてくれるな」とクレームを付けてくる人も多いと聞きましたが。

:そういう人がいることも聞いています。でもそんなにうまい人はいないね。これを言うと怒られるかもしれないけれど(笑)。

F:異論のある方にはコメント欄に書いていただきましょう。そのためのコメント欄です。

※:ということで「舐めるな。俺はうまいんだ。SUBARUは余計なことすんな!」という方はコメント欄に一言どうぞ。もちろんアイサイト信奉者の意見もどうぞです。disらず健全な意見交換をしましょう。スバリスト大歓迎!

:いずれにしても、運転は誰にも教わらないでそのままどんどん“大人”になっちゃう、というのは間違いないですね。それで3カ月もすると、「俺も結構うまくなったな」とか勘違いしちゃうんです。でも3カ月で一人前になる仕事なんて、世の中に1つもないですよ。そんなもの絶対にない。

過激なインタビューをよそに撤収作業は続く。

F:確かに、確かに。

:大工さんが3カ月見習いして、一人前になりますか。

F:そんなんで一人前とか言ったら、親方に張り倒されますよ(笑)。

:でしょう。でもクルマの運転では、それが当たり前になっている。そんな人が当たり前に乗るんですよ。だからクルマをもっと普通の人が乗っても安全なように考えていくのが我々の仕事だと思うんですよね。

 ***********************

 レース後のインタビューが思わぬ方向に走り出してしまいました。
 詳しいレースの展開や戦略は専門誌にお任せするとして、当「走りながら考える」は、独自の視点で総監督に迫りたいと思います。この原稿もまたマイトのYがブツクサ言ってくるのかなぁ……もう11年もやっているのに、ちっとも一人前扱いしてもらえないです(泣)。

 辰己総監督のお話は次号に続きます。それではみなさまごきげんよう。