<番記者メモ> 村田と話をすると、ボクシングと無関係なところで驚かされることがある。記憶力だ。中高時代のクラスメートを出席番号順に全員覚えていたり、10年以上前の他のボクサーのブログを鮮明に記憶していたり…。
「藤本さん、釣り好きでしたよね」と急に言われたときは仰天した。村田に、釣りについて熱弁を振るったことはもちろんない。雑談中にひと言口にしただけのことを覚えているのだ。そんな記憶力は、後輩から「気持ち悪いです」とイジられたりするほどだ。
もちろん、自分の試合についてはさらに強烈だ。プロはもちろん、高校1年から137戦(118勝19敗)したアマチュアでの試合も「全て、どこがどうだったか振り返ることができると思う」と言う。
その記憶力がリマッチで役に立ったことは間違いない。手数で相手を幻惑するのがブラントのスタイルだが、その闘いぶりが一度インプットされた村田にはもう、同じ手は通用しない。村田は試合後「練習したことが出ました」。相手のボクシングを脳裏で克明に再現できる。そんな男だからこそ、敗れた相手との再戦で圧勝をものにできたのだろう。 (藤本敏和)