【格闘技】村田、涙のリベンジ! 王座奪還2回TKO2019年7月13日 紙面から
ボクシングのダブル世界戦は12日、大阪市のエディオンアリーナ大阪で各12回戦が行われ、WBAミドル級は前王者で同級4位の村田諒太(33)=帝拳=が王者ロブ・ブラント(米国)との再戦を2回2分34秒、TKOで制して9カ月ぶりに王座に返り咲いた。日本ジム所属選手で、世界ベルトを奪われた相手から取り返したのは輪島功一(2度)、徳山昌守に次いで3人目。村田の戦績は17戦15勝(12KO)2敗。WBCライトフライ級チャンピオンの拳四朗(27)=BMB=は同級1位のジョナサン・タコニン(フィリピン)を4回1分0秒、TKOで下して6度目の防衛に成功した。戦績は16戦全勝(9KO)。 村田が両腕を掲げた瞬間に、エディオンアリーナ大阪を地響きのような歓声が包んだ。続いて、村田コールが湧き上がる。2回2分34秒TKO。誰の予想をも上回る、最高の雪辱だった。 「ホッとした。チーム帝拳のおかげ。南京都高、東洋大が居場所をくれて。それに報いることができて本当によかった」 今回、今まで経験したことのない立場にいた。下馬評で不利を予想されたのだ。英大手ブックメーカー、ウィリアムヒルの賭け倍率はブラント1・36倍に対し村田は3倍。米スポーツ専門局ESPN(電子版)など海外メディアも軒並み「村田不利」を予想した。昨年10月の第1戦、ブラントの圧倒的な手数に対抗できず、大差の判定負け。今回も、その焼き直しになると思われていた。 プロで初めて経験する真の「チャレンジャー」としての立場。それこそが、進化の原動力だった。ガードを固めてからの右ストレートという守備的な作戦を捨て、「攻める村田」へと変貌したのだ。 変化は初回から明らかだった。前回同様、高速コンビネーションを武器にするブラントに対し、ガードに徹せず被弾しながらも打ち返していく。「打たれても、とにかく前に出ていくしかないと思った」(村田)。ミドル級は、誰もが一撃必殺のパワーを持つ重量級。その相手に、こんな作戦を取るのは常人にできることではない。 初回終盤、虚をつかれたブラントに右がクリーンヒット。2回に強烈な右ストレートを続けた後は、もうワンサイドだ。ダウンを挟んで、暴風のような連打だった。 「2回にフックを効かせたその後に、パンチを打つ中で、相手の顔を見て心が折れたのを感じた。連打の間は『早よ、止めろ』と思っていた。(辞めずに)再起を決めて、よかったです。まだ夢見心地、というところ」 文字通りの殴り合いで因縁の相手をなぎ倒す試合内容は、ESPN系列インターネット放送で生中継された米国や世界のファンをも魅了するもの。進化して王座を奪還した村田は、再びボクシング界のスーパースターになった。 (藤本敏和)
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