コラム

[野分 大阪発・論点] 籠池夫妻法廷ドラマ 検事が傍聴席の次女を名指し

2019年7月10日

 堀木博司検事が傍聴席を指さし、証人に問い掛けた。「ご存じの方がいますね。籠池Aさんですね(法廷では実名)」

 Aさんは籠池夫妻の次女で、森友学園が運営する塚本幼稚園の先生だ。証人でも被告でもない傍聴人を検事が名指しするとは、一体何があったのか?

 8日、証人に呼ばれた塚本幼稚園のB先生(女性)に、堀木検事は手を替え品を替え質問を重ねた。特に幼稚園の領収書の文字が誰のものかを何度も尋ねるが、B先生は「覚えていません」と答える。堀木検事は「捜査段階では副園長(諄子さん)の字と供述していますよ。何で今日は分からないんですか?」

 「時間がたっているので忘れています」「覚えていることを覚えていないと言うこともいけないことですからね」

 これに対し水谷恭史弁護士は、B先生が検事に自分の知らない不正に関する資料を見せられ動揺したこと、調書に「筆跡は副園長で間違いない」とあるが、実際はその字を見た印象を語っただけだという話を引き出した。

 調書を否定された形の堀木検事が再び質問に立ち、冒頭書いたように傍聴席の籠池Aさんを名指ししたという訳だ。突然のことに顔がこわばるAさん。怒った水谷弁護士は、Aさんが傍聴席にいても問題ないと事前に確認したと指摘。裁判長も「関係者がどなたかまで特定する必要はありません」…ところが、その後も三輪能尚検事が同様に証人に「籠池Aさんがこの法廷にいますか?」と尋ねて指さした。証言が影響されると言いたいのだろうか? 堀木検事はかつて取り調べで、籠池氏に「籠池家はおかしい、素直じゃない」と言ったという。

 Aさんは笑顔で語る。「堀木さんとはずっと目が合っていました。最初に名指しされた時は固まってしまいましたが、2回目は笑っちゃいました」…さすが籠池夫妻の娘、腹が据わっている。

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 ところでこの日、公判の合間に堀木検事が弁護団に歩み寄り、「被告人に検事への声掛けをやめさせてもらいたい」と申し入れた。すかさず弁護団から笑いが起きた。というのも、前回の公判で諄子さんが「堀木さ~ん、大好きよ~」と“愛を告白”したことを私が記事にしているからだ。

 実はこれには伏線があり、その記事が出た日は夏恒例の大阪地検のビールパーティーの日だったのだ。名門リーガロイヤルホテルで大阪の全検事が参加する。もちろん堀木検事も参加したので、記事の話題もネタにされたかもしれない。そんな諄子さんと取り調べでも公判でも対峙(たいじ)しなければならないとは、心からご同情申し上げる。もっとも大阪地検はビールパーティーの夜、特捜部の事務官が女子トイレに侵入して逮捕されたから、それどころではなかろう。

(相沢冬樹) (随時掲載)