@chablis777
シャブリ

---------------------------

----N----089-------------
----a-----------------------------
----t-----------------------
----u-Z-o-r-a--------------
-----------------------------------
-----------------------------------
---------------------------------------------------------------

(なつ)最後は その木の怪物が悪魔の塔を倒すんです。
すると がれきの中から今まで食べられてきた子どもたちがよみがえるんです。
そして 木の怪物がその塔があった場所で静かに また動かなくなる。
鳥たちが集まってきて その枝に とまる。
木漏れ日が降り注ぎヘンゼルとグレーテルを包み込む。
ああ 森に平和がやって来た。
(坂場)そこで 完!はい!
(神地)面白い!ありがとう!
(下山)よし とにかく これで進めてくれ。うん。(なつ 坂場)はい。
♪~
♪「重い扉を押し開けたら暗い道が続いてて」
♪「めげずに歩いたその先に知らなかった世界」
♪「氷を散らす風すら味方にもできるんだなあ」
♪「切り取られることのない丸い大空の色を」
♪「優しいあの子にも教えたい」
♪「ルルル…」
なつたちの「ヘンゼルとグレーテル」のストーリーが出来上がりました。
それで イッキュウさん今後は どうやって進めていくつもり?
僕が 今までの話を脚本に起こしてそれを 神地君と一緒に絵コンテにします。
えっ?
手伝ってくれますか?
はい… 喜んで!
(麻子)ちょっと待ってよ。新人に 絵コンテ描かせる気?
それに関しては 僕だって新人ですよ。時間がないんです。
マコさんは 奥原さんと一緒に絵コンテが出来たところから原画の作業に入って下さい。
(ため息)
そのころ 咲太郎の声の会社も動き出していました。
(咲太郎)この「拳銃渡世人」は30分シリーズの西部劇で放浪するガンマンが1話ずつ 事件を解決していく話です。
我々は その1話だけの出演になります。
(松井)へえ 西部劇なのか。
読んでないんですか!(島貫)こいつは そういうやつだ。
字が読めるのかも怪しい。
芝居は覚えるもんじゃねえ生み出すもんだ。
セリフを覚える必要はないんですけど間違えないで下さいね。
本番は 最後まで止めずにやりますから。
(雪次郎)えっ?間違えたらどうするんです?
間違えたら 最初からやり直しだ。
(レミ子)ちょっと 咲ちゃん私の役 間違ってない?
間違えてないよ。 レミ子は男の子だ。何で 私が男の子なの?
吹き替えで 子役を使うのは大変なんだよ。
そこで レミ子のだみ声が生きるんだよ。
私のどこが だみ声なのよ!
(蘭子)何でもいいから やってみなさい。
芝居は心よ。
はい…。
(藤井)先生 見えたよ。
どうぞ。
おはようございます!(雪次郎 レミ子)おはようございます!
まあ 先生 お久しぶりです。
おお 蘭子ちゃん また よろしく。
よろしくお願いいたします。(遊声)はい。
今回のテレビ映画の主役スティーヴ・マッキングの声をあてられている豊富遊声さんです。おっ あんたのこと よく知ってるよ。
元活弁士の。 よろしく。
誰?バカ! 頭が高いんだよ お前は。
先生 松井新平と申します。(遊声)はい よろしく。
(雪次郎)ジョージ役の小畑雪次郎です…。
藤井さん。うん?今回は ありがとうございます。
ああ…。
遊声先生に金かかるからね。
予算を考えたら ぜいたく言えないよ。
頑張ります!うん ハハ…。
おはようございます。おはようございます。
咲太郎さん あの人たちは?
あの人たちは 効果音を作る効果さんだ。
(雪次郎)えっ 音も一緒にとるんですか?そうだよ。
セリフだけを入れ替えるわけにはいかないんだよ。
向こうで レコードを流して音楽も新しく入れるんだ。
だから間違えるなよ。みんなに迷惑がかかるからな。
はい…。
さあ いこうか。
(一同)はい よろしくお願いします。はい。
(スピーカー)「それじゃ 初めての方セリフをしゃべる時はマイクに近づいて。イヤホンから原音が出るので…」。
それを聞きながら 映像の口の動きとセリフを合わせて下さいね。
それじゃ いってみましょう。
(スピーカー)「回して下さい」。
(ノック)
「ベティさんですか?」。「ええ 私に何か?」。
「仕事の依頼の伝言をもらったんですが」。「あなたがレオさん?」。
「ええ そうです」。「早速だけど あなたを雇いたいの。私の夫として」。(遊声)「どういうことです?」。
「私と結婚して下さればそれでいいの。形式だけのことよ。お待ちになって」。
(ため息)
「息子のデービスです。この子の父親になってほしいの」。
「おじさんは誰?」。「さあね おじさんにも分からない」。
(蘭子)「今日から あなたのお父さんよ」。
(レミ子)「お父さんは死んだよ。戦争で英雄になったんだ」。
(蘭子)「デービスさあ また あっちに行ってなさい」。
「お気の毒に」。
「その死んだ父親の父親つまり あの子の祖父は鉄道会社を経営している大富豪です。そして もうじき あの子を私から奪いに来るんです。私は あの子を手放すことなんてできない。あなたに守ってほしいの」。
「そういうことなら判事に頼むべきだろ。俺じゃない」。(蘭子)「無理なの!」。
(いななきの声まね)
「あっ レオさん 来ましたわ!」。
(島貫)「さ~あ 今日こそは孫を返してもらおうか」。「返す?」。
「判事から法律上の許可を取ってきたんだ。諦めるんだ。 あんたには もう子どもを扶養する権利は…」。(蘭子)「判事から お金で買ったの?」。
「ハッハ~ 何を言うかね。話は終わりだ!さあ ジョージ とっとと…」。「おいおい ちょっと待ってくれ」。
(島貫)「あっ ああ… おお…あんたは…」。「あの子の… あの子の新しい父親です」。
「あんたの… 新しい男か? ハハ。それじゃ 考えるまでもない。ますます ここには…」。「力ずくで子どもを奪うことはないだろう」。
「あんたは引っ込んでろよ!ゴロツキだろ? 痛え目に遭うぜ。ウッ…」。
ダメだ! ああ ストップ! ストップ!ちょっと止めて。
すみません!(ため息)
口と全然合ってないだろ!あんた 何見てしゃべってんだ!
島貫さん まず映像見て口と呼吸 合わして下さいよ!
お前ね 芝居というのは間だよ。
自分の間で芝居をしなかったら役者の個性は死ぬんだ。
吹き替えは それじゃ できないんです!(松井)こいつには無理だ。
吹き替えってのはな 人の間を盗むんだよ。そんな泥棒のまねができるか。
お前じゃないんだ。あ?
(藤井)ジョージ!はい。それから なまってるよ!
お前 どこの生まれだ?北海道の十勝です。
えっ なまってましたか?なまってた。
大富豪のお付きが なまるなよ!はあ…。 頭から もう一回いくよ。
頼むよ みんな!
すいませんでした。
「あんたは引っ込んでろよ。 ゴロツキ…」。「あんたは」。
「あんたは引っ込んでろよ」。
「あんたは」。「あんたは引っ込んでろよ」。
「あんたは引っ込んでろよ!」。(一同)「あんたは」!
(島貫)「話は終わりだ!さあ ジョージ とっとと…」。(遊声)「おいおい ちょっと待ってくれ」。
(島貫)「おう? あんたは 一体 どこの…」。(蘭子)「あの子の新しい父親です」。
「あんたの新しい男か?それじゃ 考えるまでもない。ますます ここにはデービスを置いておくわけには…」。「力ずくで子どもを奪うことはないだろう」。
「あんたは引っ込んでろよ!ゴロツキだろ?痛え目に遭うぜ…」。(スピーカー・藤井)「ダメだ! ストップ!」。
えっ? なまってましたか?
お前 いい加減にしろよ バカヤロー!
お前もだよ!俺の出番は いつ来るんだよ!
(スピーカー)「おい どうなってんだよ!直ってないじゃないか!」。
すみません! もう一度お願いします!
すみませんでした。おい。
本当に頼むよ。はい…。
結局 これが 7回も繰り返されまして…。
(ノックとドアが開く音まね)
(島貫)「話は終わりだ!さあ ジョージ とっとと連れてこい」。
(遊声)「おいおい ちょっと待ってくれ」。
(島貫)「うん? あんたは誰だね?」。
(蘭子)「あの子の新しい父親です」。
(島貫)「あんたの新しい男か?それじゃ 考えるまでもない。ますます ここには デービスを置いておくわけにはいかないね」。
(遊声)「力ずくで子どもを奪うことはないだろう」。
「あんたは引っ込んでろ!ゴロツキだろ? 痛い目に遭うぜ。ハッ!」。「ウッ!」。
「俺は デービスの父親だ」。
あなたのお兄さんが声の会社を始めたの?
そうなんです。兄は声優と言ってますけど。
外国のテレビ映画の吹き替えが主な仕事らしいんです。
(茜)あっ 私 それ よく見てるわよ。
最初は違和感あったんだけど慣れてくると 自然に感じてくるのよね。
私のおばあちゃんなんて「この外人さんは日本語がうまいね」だって。
茜さんの家には テレビがあるんですね。
うん。 割に早い時に買ったのよ。
その会社の俳優の人たちを今度の短編映画に使えってこと?
いや… そうじゃないですけど声を探したいと思った時には兄に相談することはできます。
分かった。 話は それだけ?
あっ いや…。
まだ何かあるの?
マコさんは… 今度の短編映画あまり乗り気じゃないですか?(麻子)えっ…。
「ヘンゼルとグレーテル」面白くないと思ってますか?
面白くないと言ったら どうするの?
やめます。
私はマコさんが納得してないと嫌なんです。
私は マコさんと一緒に作りたいんです。
もちろん みんなが納得いくものを。
日本で 初めて原画になる女性はマコさんしかいないと思っています。
この会社に入った時からマコさんは 私の目標なんです。
だから 納得のいく漫画映画を作ってほしいんです。
それを 私も一緒に作りたいんです。
あなたって ずるいわ…。
えっ?
そうやって 何でも いちずに自分の情熱だけを貫こうとするんだから。
周りで悩んでる人は何も言えなくなるでしょ。
それは 少し分かる。
えっ… 本当?
でも ものを作るには大事なことよ。
それがないと すぐに妥協するからね。
だから私のことなんて気にしなくていいの。
あなたは 作品のことだけを考えてなさい。
マコさん 私は…。それでいいって言ってるの!
そうね… なっちゃんには 結局それしかできないかもね。
そんな! えっ それじゃ 私が 人のことを考えられないみたいじゃないですか。
怒らなくていいのよ。それが若さってもんでしょ。
私だって そうありたいのよ。
マコさんだって まだまだ若いですよ。
若くないとは言ってない。
あっ すみません…。
とにかく やるしかないんだからあれこれ考えずに頑張りましょうお互いに。
はい…。 分かりました。
さあ なっちゃん 氷解けちゃうよ。これ飲んだら帰ろう。
はい…。
(茜)ちょっとそんなに慌てて飲まなくても大丈夫だよ。
喉渇いてて…。緊張したもんね…。


via Twishort Web App