まず初めにこの作品を読んで頂き感謝致します。
『大幅修正・追加を終了するまで文章を全体的に変更しない』と言っていました。まだ大幅修正などは終わってません。なので文章は変更されていません。
まだ終わってなくてすみません。
ですがどうしても書きたい内容がありましたので本日更新させて頂きました。
ちなみに書きたい内容はまだ少し先の話です。
どうか今後ともどうかよろしくお願いします。
焼きプリンにキャラメル水
※※※※
新たな出会い
モモンとナーベは家の清掃を行っていた。二人は会話をしながら掃除していた。
「汚いですね」
「あぁ・・埃まみれだ」
二人が掃除をしているのにはしっかりした理由がある。それはこの家に誰かを招く際に、汚い部屋だと失礼にあたるからだ。特にミータッチの友人であり大恩あるアインズには最大限の礼儀を尽くしたいとモモンもナーベも思っていた。そのため現在家の掃除をしているのだ。最初はナーベが一人でしようとしたが、モモンもやり始めた。ナーベが何度も掃除の手伝いを断ろうとするもモモンは「ナーベがしているのに私がやらない訳にはいかない」と言って掃除をやり始めた。そして今に至る。
「そう言えば長い間、掃除していなかったなぁ」
「そうですね。リイジーさんとンフィーレアさんから家を譲ってもらった時に一度しただけでしたから」
二人が会話をしていると突如ドシドシと大きな足音が聞こえる。
「殿ぉ!!」
「どうしたハムスケ?」モモンがそちらへ顔を向けると窓の外にハムスケの顔があった。
「それがしも何か手伝えることはないでござるか?」ハムスケはそう言ってモモンを円らな瞳で見つめている。思わず引き込まれそうになる。
(こいつ・・・まさか<
何となくそんな気はしたが、恐らくただの気のせいだろう。モモンもナーベもハムスケのこの魔法には問題なく
「うーん・・・そうだな・・お前にも手伝ってもらおうかな。まずはこの雑巾を使って・・・・」
・・・・
・・・・
・・・・
・・・・
「殿・・ナーベ殿・・申し訳ないでござる」
「「・・・・・・・」」
ハムスケはモモンとナーベの目の前で泣いて頭を下げた。窓の外からハムスケが申し訳なさそうにしている。心なしか尻尾も垂れてしまっていた。
「気にするな・・・誰でも失敗はあるさ・・」
「・・えぇ。ハムスケに怪我がなくて良かった」
しかしハムスケは頭を上げない。
「しかしこんな大事なものを壊してしまったでござる・・・」
そう言ってハムスケが頭を上げて視線を向けた先には床の上で無残に壊れてしまった置時計だ。部品も床に散らばっている。時針、分針、秒針全てが取れてしまっていた。この置時計自体はバレアレ家にこの家を譲渡してもらった後に購入したものだ。
(割と高かったんだよなぁ・・アレ・・これじゃ時計としての役割を果たすのは難しいな)
何故こうなったか?
ハムスケに掃除を教えたモモンは雑巾で本棚などの掃除を任せることにした。しかし雑巾を拭くたびにハムスケの毛が抜け落ちたのだ。それを見たナーベがハムスケに対してブラッシングをすることを提案しこれを行った。だがハムスケの毛は想像以上に硬くブラッシングをするのも困難であった。そこでナーベは力を込めてブラッシングをした結果、ハムスケが痛がり、外壁に飛び跳ねてしまい、その時の衝撃で置時計を落として壊してしまったのだ。
「いや・・私も悪かったと思います。無理やりブラッシングしようとしましたから・・」
ナーベがハムスケをフォローする。だが最初からモモンはナーベもハムスケも責めるつもりはない。
「いや・・・二人?とも悪くはないだろう」
「しかし殿、それがしはこの置時計なるものを壊してしまったでござる」
「気にするな。モノは壊れてしまったら直せばいい。それが無理ならまた買えばいい」
「う・・・殿おぉぉぉ!!!」ハムスケはモモンの発言に感動し洪水の如く涙を流した。
(しかし実際どうしようか・・・そうなると誰かを雇って部屋の清掃やハムスケのブラッシングをしてもらうしかないか?)
モモンがそう考えているのに対してナーベも似たようなことを考えていた。
(今後冒険者として・・『漆黒』として・・活動するのであれば家を管理する誰かがいてくれた方がいいわね)
「モモンさん」
「どうした?ナーベ」
「もし良ければメイドの一人でも雇いませんか?」
(メイド?メイドってアレか・・・家の使用人のことか?)
モモンが真っ先に思い浮かんだのはアインズのいるカルネ村を管理するエントマであった。確か彼女もメイドだったはずだ。
「いいんじゃないか?今後依頼で家を離れることも多いだろう。ハムスケを置いて行くこともあるだろうし。ハムスケも寂しい思いをしなくていいだろう」
「決まりですね。そうなると早速求人を出しましょう」
結論が出た所で、二人はドアの方向に目を向けた。
誰かがドアをノックしたのだ。
「どなたでしょうか?」
モモンはドアを開けて相手の姿を見る。そこには冒険者組合長の遣いの男性がいた。
「『漆黒』のモモン様、アインザック冒険者組合長がお呼びです。至急、組合の方へお越しください」
「分かりました。すぐに伺います」
そう言ってモモンはナーベに目を向けて問う。
「後は任せていいか?」
「えぇ。メイドの件は私とハムスケでやっておきますので大丈夫です」
「分かった。頼んだぞ。ナーベ、ハムスケ」
モモンはナーベとハムスケに後を任せると外へと出ていった。
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エ・ランテル 冒険者組合
モモンはアインザックのいる冒険者組合長の応接間のドアをノックした。
「失礼します」そう言ってモモンが部屋に入る。
応接間にアインザックだけでなくパナソレイ都市長、ラシケル魔術師組合長などエ・ランテルにおいて最高権力者たちが座っている。だが一人だけ見覚えの無い人物がいる。エ・ランテルで見たことない顔の男性だ。
(このメンバーが揃っているということは・・・何か大変な依頼かな?)
見覚えのない男性の恰好はエ・ランテルでは見たことない。それゆえ身分の高い者の服装なのではとモモンは推測する。
「よく来てくれたモモン君、まずは座ってくれ」
「失礼します」
モモンはそう言われて座った。無論下座だ。
「まずは来てくれたことを感謝したい。モモン君」
「いえ・・」
(パナソレイ都市長が『ぷひー』と鼻の悪い演技をしていないことから、この男性が都市長よりも立場が上なのかもしれないな・・となると『王都』からの使者だろうか?)
そうモモンが推測しているとやがて男が口を開いた。
「初めまして。モモン殿。私は王都にいる主人の代わりに貴方に依頼しに来た者です」
「初めまして」
握手を求められたのでモモンはガントレットを外して握手をする。
「それであなたの主人とは?」
「私の主人はレエブン候です」
「・・・」モモンは確認の為にパナソレイ都市長を見る。都市長が頷く。
(都市長が頷いた・・ということは全て事実か)
モモンはアダマンタイト級冒険者になった際にパナソレイ都市長から王都に関して色々話を聞かされていた。そのためレエブン候が『六大貴族』と呼ばれていることを知っていた。
モモンは再び男性に顔を向けて問う。
「それで依頼とは?」
「はい。実は・・・・」
そうして彼は依頼の内容を話し出した。
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エ・ランテルの門番からの荷物検査を終えた女は街に入って思わず声を漏らした。
「ここがエ・ランテル・・・・帝都とはまた違った賑わいがあるわね」
(王国、帝国、法国の三ヵ国の中心に位置するこの場所は・・それ相応に賑わうものなのかしら)
綺麗な長い金髪の女。顔の右側部分を隠すように髪を下す彼女は冒険者に擬態するような恰好をしていた。普段の恰好とは異なり簡易な軽装を身に纏う。唯一持ち出しを許されたのは自身の武器である槍であり、それを背負うような恰好だ。門番で疑われた際には『冒険者になるため』にエ・ランテルに来たと伝えた。それを聞いた衛兵は警戒心を解いたのかすんなりと解放してくれた。
(流石は陛下、まさか陛下の言う『魔法の言葉』を言うだけでエ・ランテルに入れるとは・・・)
頬に伝うものを感じて女はポケットからハンカチを取り出した。それを使って拭う。ハンカチはあっという間に膿が染み込み黒くなった。
(この場所なら・・私の『コレ』を治せるものも見つかるかしら?)
帝都からやってきた女・・・『重爆』レイナース=ロックブルズはそんなことを考えながらエ・ランテルを歩いていく。
今回レイナースがやってきた理由は一つだ。『漆黒』である。
皇帝から下された指令は『漆黒』の調査だ。特に『漆黒』の人柄、そして可能であるならば・・・
『帝国への勧誘』である。実際、もし『漆黒』の実績が事実であるならば彼らが帝国に戦力として勧誘できた場合、ここ毎年で繰り返される帝国と王国の戦争はあっという間に帝国の勝利で終わるだろう。
(さて・・『漆黒』はどこかしら?やはり最初は冒険者組合へ行こうかしら)
・・・・・
・・・・・
・・・・・
・・・・・
結論だけ言うなら会えなかった。
(モモンは何やら組合長と大事な話し合いで会えなかった。となるとナーベの方か)
そのため現在レイナースは『灰色のネズミ亭』という酒場にいて情報収集していた。
「マスター、情報ありがとう」
「・・・銅貨5枚だ」
そう言われてレイナースは先程の自分の食事代と『漆黒』に関する情報料を手渡す。
レイナースが酒場を去ろうとした時であった。
「嘘だろぉぉぉっっ!!!!!!!!!!!!!」
誰かが叫んだのだ。
(えっ、何?)
そう思い叫んだであろう誰かの方向へ顔を向けると酒場の中に掲示板があった。そこに人が一杯溢れていた。
(気になるわね・・・)
レイナースはそこまで行き、人ごみをかき分けて掲示板に張られた、その場の冒険者たち(とても酒臭いので冒険者ではない者も多かっただろう)が視線を向けた先にある一枚の紙を見つめる。
そこにはこう書かれていた。
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『漆黒』の家を管理する方、募集中
採用人数は1人、女性限定。
職業、年齢問わず
強い方、賢い方、であるならばなおよし
採用するかどうかは面接で決定します。
採用担当:ナーベ、ハムスケ
詳細は『漆黒』のナーベへお聞きください。
住所:エ・ランテル,○○○▼▼▼◇◇◇(旧バレアレ家)
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レイナースはそれを見ながら住所をメモすると『漆黒』の家へと向かった。
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エ・ランテル 『漆黒』家
アダマンタイト級冒険者の『漆黒』がメイドの求人を出した。
瞬く間にエ・ランテル中にそれが知らされることになった。
「ここが『漆黒』の家!!」
そう言ってレイナースは先程見た求人の写しを見直した。間違いなくここであった。
「三人?」
そこには三人の女性が並んでいた。中には冒険者組合の受付嬢らしき人物もいる。
(『漆黒』の人柄や評判からしたら少なすぎないかしら?)
「あら?あなたも面接ですか?」
「えぇ。あなたもね。さっき見たけど貴方受付嬢よね?」
「?その格好だと冒険者だと思ったんだけど違ったかしら?」
確かにレイナースの今の恰好は冒険者そのものだ。
(しまった!『漆黒』のメイドなら、もっと自分の特徴を活かせる恰好をすべきだった!)
皇帝であるジルクニフから調査費用の名目でそれなりの金貨は持たされていた。新しい服を買うくらいの金はある。
(マズい・・・この恰好じゃ・・落とされるんじゃ・・)
レイナースがその場を離れようとした時であった。
「次の方!どうぞ!」
・・・・
・・・・
・・・・
結果だけ言うとレイナースは落ちた。レイナースの他の二人も落ちたのだ。
「あれが『漆黒』の片割れ、『美姫』ナーベか・・・」
レイナースは自分の容姿には自信がある。スタイルは悪くない。顔は・・・隠せば大丈夫だ。
だが落とされた理由はそんなことではなかった。
「まさか、『森の賢王』と戦わされるなんて・・・」
レイナースを含め面接を受けた人物は四人であった。いずれも普通のメイドよりはずっと有能だろう。
それぞれ『森の賢王』と何かしら競争させられたのだ。
受付嬢含め三人の女は<
レイナースは耐えたのだ。元々訓練していたからというのもあるかもしれないが、主な理由は自身の指にはめられた指輪だ。
(せっかく陛下に貸していただいたにも関わらず・・・こういう結果になってしまった・・)
魅了は耐えた。しかし次にナーベが口にした試験により落とされることになる。
「一対一で勝負って・・・・勝てる訳ないじゃない!」
少し苛立つ。心なしか血流が早くなるのと同じく膿の分泌も早くなった気がして余計に腹が立った。
「はぁ・・・・」
レイナースが溜息を吐いて『漆黒』の家から離れようとした時であった。
「どうかされましたか?お嬢さん」
そこには漆黒の全身鎧を着込んだ人物が立っていた。
「ただいま」
そう言ってモモンは家のドアを開けた。
「あっ・・・モモンさん。実は・・・」
「メイドが決まらなかったのか?」
「えぇ」
モモンが落ち込んだナーベに何て言葉を掛けようと考えていた時であった。ドアがコンコンとノックされたのだ。
「?どなたでしょうか?」
「求人・・・見た・・・面接はまだやってる?」
「はい!まだやっていますよ」
「・・・失礼する」
その言葉をが聞こえるとドアから一人の女性が入ってきた。
姿を見せたのは長い
メイド服を着た女性であり、つい最近成人したような幼さを感じさせる容姿であった。
非常に整った容姿をしている。
服は全身鎧を改造した様な恰メイド服で、首に巻いたマフラーやメイド服の一部や首巻きは迷彩色をしていた。理由は分からないが左目に眼帯をしている。
「あなた名前は?」
ナーベが尋ねる。
「・・私の名前?」
「えぇ。貴方の名前を聞かせてくれないかしら?」
「・・私はシズ。少し前まで『ある御方』の所でメイドの仕事をしていた」
「志望動機は何かしら?」
そう聞かれたシズはナーベの横、正確にはハムスケに向かって指をさして口を開いた。
「ハムスケをモフモフしたいから」
「えっ・・・」
「・・ダメ?」
そう言って首を傾けたシズを見てナーベは思わず思った。
(この子・・可愛い。でも駄目・・・それだけじゃ・・)
「あなたのアピールポイントは?」
「・・・だいたい何でも出来る」
そう言われてナーベはこの女性を試してみようと思った。
「だったらこの時計を直せる?」
そう言って指さしたのは少し前に壊れた置時計だ。
「うん・・・大丈夫。これなら五分も掛からない」
そう言ってシズは置時計をすぐさま直してみせた。
「手先器用なのね」
「器用・・嬉しい」
そう言って笑うシズにナーベは何だか嬉しい気持ちになった。
(ダメだ・・・やっぱり『強く』ないと・・・)
「・・ゴホン・・・・貴方はどれくらい強いのかしら?」
「・・多分、そこのハムスケよりは強い」
「・・・なら戦ってみる?」
「・・・分かった」
そう言うとシズは背中からクロスボウを抜き構えた。
・・・・
・・・・
「シズ殿は凄いでござるなぁ」
「・・当たり前。ぴーす」
そう言ってシズはモモンたちに向けて人差し指と中指を立てて見せつける。倒れたハムスケのお腹にダイブした後みたいに埋もれながら・・・ただし無表情だ。
「あなた・・・凄いわね」
「ナーベに言われると嬉しい・・」
(・・この二人なら仲良くなれそうだな)
モモンはそう思った。
「モモンさん、彼女を・・シズを雇いませんか?」
「あぁ。そうしよう。彼女なら留守を任せても安心そうだ」
こうして『漆黒』の家に新たな同居人が増えた。
シズ。
これが『漆黒』とシズの出会いである。
ついにシズが登場しました。
シズ
『漆黒』に雇われたメイド。
細かい作業が得意で、壊れた時計を数分で直す程器用。
ハムスケと戦闘で勝利するなど戦闘能力も高い。
『漆黒』の二人やハムスケも気に入りメイドとして雇われる。
モフモフなものが好き。
過去の『ある御方』の元で働いていたらしい。