2019/07/06 ON AIR
中田英寿、佐賀の旅 唐津焼
今週の放送では中田英寿さんが佐賀県を巡る旅の中から、
唐津焼の陶芸家、中里太亀さんを訪ねた模様をお送りしました。
太亀さんはお父様の中里隆さんとともに、
唐津を代表する窯のひとつ、「隆太窯」で 器づくりを続けています。
そもそも唐津焼は、ざっくりした粗い土を使った素朴な風合いで、
さまざまな装飾が特徴。
その始まりは、室町時代の終わりから桃山時代にかけて、
岸岳城城主 波多氏の領地で焼かれた物とされています。
その後、豊臣秀吉の朝鮮出兵の際に連れてこられた朝鮮の陶工たちによって
登り窯をはじめとする 陶芸の技が伝えられます。
そして、唐津焼は、千利休が茶席に使うなど、茶人にも愛され、発展しました。
しかし、藩の支えを失った明治以降は いったん衰退。
これを復活させたのが、人間国宝にもなった12代 中里太郎右衛門であり中里無庵さん。
無庵さんのご子息が中里隆さんで、隆さんのご子息が中里太亀さんです。
つまり、太亀さんは唐津焼の伝統を引き継ぐ存在なんです。
まさに唐津焼の家に生まれた太亀さんですが、もともと陶芸をする気持ちはなかったのだとか。
大学時代はヨットに熱中。
お父様には陶芸を強く勧められましたが興味を持てないまま就職の時期を迎えます。
同級生が次々に立派な就職を決めていく中、
なんとなくそうではないと思ってはいたものの、とくにこれというものもなかったそう。
そんな状況のなか、ある出来事が太亀さんの気持ちを動かしました。
まるで動物の餌のように出される、ヨットの合宿所での食事に嫌気がさしていた日々の中、
実家に帰った太亀さん。お父様の作った器で食事をすることの豊かさに気づきます。
それをきっかけに、陶芸の道に入ったのだそう。
お話を伺った場所は里山にある隆太窯の工房。
小川が流れる敷地には鳥のさえずりが響き、
古材を集めて建てたという建物には、柔らかな光が差し込みます。
息子さんの 健太さんと一緒に、
蹴ってまわすろくろ“蹴ろくろ”を回しながら迎えてくださいました。
今では電気やガスを使った窯で作る作家さんが多い中、
隆太窯では薪窯を使う事が多いのだとか。
薪で焚く火は良い意味で温度や強さの変化があり、
作品にも思いがけない変化を与えるそうなんです。
炎のコントロールは難しいものの、唐津は薪を使う作家さんが多いと言います。
また、太亀さん自身は唐津焼の伝統的な技法を受け継ぎながら、
作風は古典的なものにこだわらず制作されています。
『長年使っていると、色が変わったり、しっとりとなじむように変わってくるんですね。
使ってにじみ出てくる良さを味わって、大事に使ってほしい。
そして、使っていて気持ちいいと思ってくれる人がいたら嬉しいなと』
そんな想いで生み出された太亀さんの作品、
東京でも見て、手に取る事ができる機会があります。
▼「中里太亀新作展」
日程:7月25日から28日まで
11:00から19:00(最終日の7月31日は17:00まで)
会期中無休
場所:柿傳ギャラリー(新宿)
展覧会情報
また、工房は見学する事もできます。
▼隆太郎窯
住所:佐賀県唐津市見借 4333-1
営業時間:9:00から17:00
定休日:毎週 水曜日
隆太窯 公式サイト
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