全国一の「金魚の町」の奈良・大和郡山市で、商店街に設置されたいわゆる「金魚電話ボックス」の著作権をめぐる裁判。その判決が11日、言い渡され、原告の訴えが退けられた。
「判決を聞いた時にはがっかりしたというか、クエスチョンが充満した」。判決後の会見でこのように話したのは、原告で福島県の現代美術作家・山本伸樹さん(63)。山本さんは大和郡山市の商店街に設置された「あるもの」に著作権を侵害されたと訴えた。それが、「金魚電話ボックス」。
江戸時代から続く金魚の養殖で有名な大和郡山市。「金魚の町」を象徴する場所として人気を集めていたのが、この「金魚電話ボックス」だ。もともと、大学の学生グループが制作・発表した作品を、地元の商店街が再利用して2013年から展示を始めたものだったが…。
山本さん「そっくりです。僕の作品とほとんど同じですね。著作権侵害を訴えざるを得ない」
山本さんは1998年に制作・発表した「メッセージ」という作品に酷似していると指摘。そして、去年9月、「再三、著作権侵害の旨を伝えていて、その事実・経過を十分に認識していた」などとして、作品を管理していた商店街側を相手取り、330万円の損害賠償を求めて提訴したのだ。
商店街側は、トラブルになっている状況を考慮して「提訴される前に」作品を撤去。そのうえで「公衆電話に金魚を入れるという発想はひとつのアイデアに過ぎず、著作権の保護の対象とならない」。著作権の侵害にはあたらないとして、全面的に争う姿勢を示していた。
そして、この日ー。
「主文。原告の請求をいずれも棄却する」
奈良地裁は、山本さんの発想自体は「斬新で独創的なもの」としたが、「アイデアにほかならず、表現それ自体ではない」などとして、著作権の侵害を認めまなかった。
山本さん(判決後)「判決がどうであれ、僕は許さないということです。控訴します」
これで終わらない著作権をめぐる裁判。商店街側の代理人は「金魚電話ボックスを再び設置するかどうかについては、全くの白紙状態です」とコメントしている。