浜田省吾

浜田省吾

浜田省吾、35年振りの音楽番組出演で
自身のアーティスト像を語る

浜田省吾のアーティストとしての出発点は、バンド“AIDO"だった。デビューは1975年であり、浜田の担当楽器はドラムス。一方で、デビュー・シングル「二人の夏」を作詞・作曲をしたのは浜田であり、ドラマーでありソングライターでもあるといういささか変わったポジションから、浜田省吾のキャリアは始まったことを忘れるべきではない、と僕は思う。
その後、AIDOを脱退し、‘76年にソロ・デビューをシングル「路地裏の少年」とアルバム『生まれたところ遠く離れて』によって飾る。しかしセールス的には振るわず、『生まれたところ遠く離れて』以降は、いわゆる“シティ・ポップ"と呼ばれた軽妙な聴きやすい楽曲を作っていくが、作詞ができずに、職業作詞家にアルバムの作詞を大半委託したアルバムもあった。振り返ってみると、浜田省吾は自身の立脚点がプレイヤー(演奏者)にあるのか、コンポーザー(作曲家)にあるのか、はたまたパフォーマー(音楽演者)にあるのかを、ずっと考えていたように思える。1980年にロサンゼルスにてレコーディングしたアルバム『Home Bound』は、日本語によるロックを歌う浜田省吾の狼煙を上げた作品だったが、そこから急上昇するロック・アイコンとしての浜田にどこか疑問符を投げかけていたのも、また浜田自身だった。ソロ・デビュー10年目にして初のチャートNo.1を獲得した2枚組アルバム『J.BOY』の後も、「自分は何を歌おうとしているのか?」をいつも自問しているように見えた。例えば、アレンジは世の中の潮流にある程度寄り添う、半ばファッションに近い性格を持っているのだとしたら、当然のこと流行り廃りもあればリサイクルもする。浜田省吾は、そのことをよく知りつつ、“メロディ&リズム&ハーモニー"という音楽の3大要素のみならず、そこに“歌うべき言葉"を加えつつアドバンテージを置いてきたと言える。結果、歌うべき言葉によって自らをソングライターと規定したわけである。

9月12日にNHKでオンエアされた番組『SONGS』の中で、浜田は「歌を作ることは、最後は、歌詞を書くことだと思うんです」と発言した。メロディやアレンジが決まったとしても、歌詞が決まらなければ“浜田省吾が歌う楽曲"にはならない。そこがソングライターの最重要項目であり、今年10年ぶりに発表されたオリジナル・アルバム『Journey of a Songwriter 〜 旅するソングライター』は、極端な形容をするなら、彼が歌詞を見つけ錬成するためにかかった10年だと言えまいか? そのためにJourneyが必要であり、それは風光明媚な場所に出かけるばかりの旅ではない、楽曲錬成の旅なのである。だからこそ浜田省吾の歌には、聴き手の心情を重ね合わせることができる断言とその余白があるのだと思う。番組で流れた映像の中では、個人的に浜田がDJスタイルでターンテーブルの前に立つ、プログラミング主体の楽曲「夜はこれから」がとても気に入った。前述した“アレンジ=ファッション説"を投影するなら、「夜はこれから」は“今どきのファッション"だが、精巧なリズムカッティング・ギターや端正なホーン・セクションの音に、浜田省吾が生きてきた“音楽人生"が透けて見えるのである。

文:佐伯明(音楽文化ライター)

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