セブン&アイ・ホールディングス 取締役 執行役員 CIO 鈴木康弘氏

セブン&アイ・ホールディングスは11月1日、リアルとネットを融合したオムニチャネル「omni7」をオープンした。果たしてその狙いはどこにあり、何を目指しているのか? この点について12月9日、セブン&アイ・ホールディングス 取締役 執行役員 CIO 鈴木康弘氏が東京・品川のホテルで開催された「ORACLE CLOUD DAYS TOKYO」の中で講演し説明した。

鈴木氏は、セブン&アイ・ホールディングスの特徴として、多様な業態を持つ流通グループである点と、19,000と国内店舗数が非常に多い点をあげ、同社のオムニチャネル戦略について、「オムニチャネルは米国で始まったが、米国と違いは複数の業態のリアル店舗とネットを融合させたことだ。われわれの特徴は店舗数が多いことだが、それを最大限活用する、われわれならではのオムニチャネルを実現しようと思っている。ネットと融合することで、いつでも、どこでも、どんなものでも買えることが実現する」と語った。

多様な業態

19,000店舗と国内店舗数

米国のオムニチャンルとの違い

オムニチャネルは、セブン&アイにとって、「センブン-イレブン」の登場に続く、第2ステージに位置づけられるという。そして、同氏は「お買い物習慣を変えることが第一ステージであった。そして、業態を超えた取り組み、ネットと融合し、新しい買い物習慣をつくるのが第2ステージだ」と述べた。

オムニチャネルは第2ステージ

鈴木氏によれば、同社のオムニチャネルの柱は、「商品」、「売場」、「接客」の3つだという。

オムニチャネルの柱は、「商品」、「売場」、「接客」の3つ

「商品」では、品揃えを重視。鈴木氏が「品揃えがなければ開発すればいい」と語るように、同社ではプライベートブランド(PB)「セブンプレミアム」を展開。現在では、その売上は1兆円に迫るという。

同氏が「セブンプレミアム」の特徴としてあげたのは、メーカーとの共同開発だ。同氏はその理由を、「プライベートブランドといえば、これまでは安かろう、悪かろうだった。本当に良いものをつくれるのはメーカーさんだ。だから一緒にやっていく」と説明した。

プライベートブランド(PB)「セブンプレミアム」

「売場」については、ネットを利用することにより、時間や場所の制約を受けることなく、いつでもどこでも注文できるようにすることだという。また、店舗に自分のサイズがない、着たい商品がないという場合でも、ネットで在庫を確認し、注文できるサービスも開始。そのほか、共働き世帯の増加や自宅で受けとることに不安を感じる女性向けに、店舗での受け取りも開始した。

店舗での受け取りも開始

そして「接客」では、店舗で一人一人の顧客にあった接客を行うために、接客履歴や商品紹介ノウハウをグループで共有したという。また高齢者など、店舗に来ることが難しい顧客向けに、近くの店舗の従業員が御用聞きとして訪問するサービスを開始。すでに6,000店舗にタブレットを配布したという。

一人一人の顧客にあった接客

「御用聞き」

システム開発には約2年

同社のオムニシステム開発プロジェクトは、2013年8月にスタート。業務検討で10カ月、システム開発で15カ月を要したという。

システム開発にあたっての課題は、さまざまな業態が混在するマルチカンパニーである点と、各システムが13社のマルチベンダー化しており、これらの環境をまとめることが大変な点だった点だという。これに対し同社では、チームITの考えで、NTTデータ、NEC、NRI、Oracleの4社のITベンダーのチームで開発し、成功したという。

オムニシステム

鈴木氏よれば、11月のグランドオープン後は、店舗への来客数が増えるという大きな変化があったという。この点について鈴木氏は、ネットで見た商品を実店舗で確かめたいという「Webルーミング」現象が起きたためではないかと分析する。その後は、店舗の商品をネットで注文する「ショールーミング」が起き、店舗受け取りも増えているという。同氏は、「これらが一巡し、循環し始めた」と語る。

ネットとリアルの融合による効果

そして鈴木氏は今後について、「11月のグランドオープンはゴールではなくスタートだ。まだ妥協している点は多々ある。今後はさらに進化させ、リアルとネットを意識することがなく、あらゆる制約を超えて自由に買い物を楽しむことができる新しい世界に挑戦したい」と述べた。