第15章 リズム、リズム、リズム     2013・3・11記




    
リズムとは何か




 文章内容の音声表現におけるリズムとは、何なんでしょうか。文章にある
リズムの正体とは何なんでしょうか。

 本節では「リズム」一般について考えてみたいと思います。

 「リズム」という言葉は、いろいろな意味内容で使われているみたいです。
手始めに国語辞書で「リズム」について調べてみることにします。六冊の国
語辞書から、「リズム」(rhythm)の項目を、調べてみました。

『例解新国語辞典』(第四版、三省堂)
(名)音の強弱や長短、テンポなどが規則的にくりかえされること。メロデ
   ィー・ハーモニーとともに、音楽の基本要素の一つとされる。拍子。
(句例)リズムに合わせる。リズムにのる。リズムをとる。
(語例)リズム感。リズム運動。

『大辞泉』増補新装版(小学館)
①強弱・明暗・遅速などの周期的な反復。「生活のリズムが狂う」。
②音楽の基本的要素の一つで、音の時間的な変化の構造。アクセントが規則
 的に反復する拍節的なリズム、アクセントの継起が不規則な定量リズム、
 音の長さに一定の単位をもたない自由リズムなどに分類される。「リズム
 に乗って踊る」。
③詩の韻律。

『広辞苑』第六版(岩波書店)
①周期的な動き。進行の調子、律動。「リズムに乗る」「生活のリズムが狂
 う」
②詩の韻律。
③音楽におけるあらゆる時間的な諸関係。西洋音楽では旋律・和声などと結
 びついたアクセントが生じ、それが周期的に現れると拍子が成立する。拍
 子がなくてもリズムは存在する。節奏。

『大辞林』第三版(三省堂)
①周期的に反復・循環する動き。律動。
②運動・音楽・文章などの進行の調子。
③詩の韻律。
④音楽の最も根源的な要素で、音の時間的進行の構造。時代や民族によって
 違いがみられる。一定の時間量を規則的に下位分割する拍節リズム。音の
 長さに単位のない自由リズムなどがある。節奏。

『国語辞典』(第一版、集英社)
①周期的運動において規則的にくり返す動きや変化。天体の運行・季節の変
 化・動物の呼吸や歩行・ダンスのステップなど。
②【音】周期的に起こる音の強弱や長短。律動。節奏。Δメロディー・ハー
 モニーとともに音楽の三要素をなす。
③【表】言語表現、特に詩歌などに規則的に現れる音の強弱や長短。Δ強弱
 アクセントの英語などでは弱強調となり、高低アクセントの日本語では音
 数律で七五調などとなる。
④活動における間合いや調子。「生活のリズムが乱れる」「投球のリズムが
 つかめない」

『日本国語大辞典』第二版第十三巻(小学館)
①ある時間持続したり、継起的に生じたりする音声の中で、一定の拍子や規
 則をもって、音の長短、アクセントの高低、強弱などが繰り返される時の、
 その規則的な音の流れをいう。また、一般に事物の運動や形態など音声を
 伴わない視覚的なものについても、単位となる動きや形・色彩・明暗など
 が規則的に繰り返されるとき、その連続的な動きをさしていう。
*近代科学の傾向(1912)〈大杉栄〉六「幾十百世紀かを其のリズムとする
 天体の調和と」
*城の崎にて(1917)〈志賀直哉〉「或る1つの葉だけがヒラヒラヒラヒラ、
 同じリズムで動いている」
*田園の憂鬱(1919)〈佐藤春夫〉「林と空とが接する境目にはごく微細な
 凹凸があって、それが味わいつくせないリズムを持って居る」
*夜光時計(1969)〈津村節子〉「単調な生活のリズムに多少の変化をつけ
 てくれたように思えたのだ」
②音楽を成立させるもっとも根本的な要素。生命の根源的な衝動によって起
 こる運動とその秩序、それに結びついて自然に生まれる拍子を含めたもの
 をいう。それぞれの時代や民族によって相違があり、特に洋楽では音のア
 クセントの規則的な反復、シンコペーションなど音の秩序にリズムを見い
 出すのに対し、邦楽では間(ま)すなわち音の休符に基準を求めている。
*余興(1915)〈森鴎外〉「此の伴奏は、〈略〉緩急を誤ったリズムと猛烈
 な雑音とで責めさいなむ」
*太陽のない街(1929)〈徳永直〉旗影暗し「彼らの感情をリズムに現すこ
 とことのできる唯一の歌であった」
*母なるもの(1969)〈遠藤周作〉「この歌は私も知っていた。〈略〉リズ
 ムは捉えがたく憶えられなかったが、」
③文章のもつ音声的な調子のよさ、特に、韻文における韻律、また、話しこ
 とばでは、声の大小や抑揚などがつくり出す律動的で快いひびき。
*抒情小曲集(1918)〈室生犀星〉自序「甘美な女性的なリズムを愛した時
 代」
*俳句の形式と其真価(1934)〈寺田寅彦〉「この詩形が国語を構成する要
 素としての語句の律動(リズム)の、最小公倍数とか、最大公約数とか云
 ったようなものになる」
*風にそよぐ葦(1949~51)〈石川達三〉前・六「男の声のリズムが有美子
 の聴覚をうっとりさせる」


          
辞書解説文の整理


 これら国語辞書の「リズム」についての解説文を読んでいると、多くの辞
書に繰り返して現れ出る語句があることに気づきます。次のような語句が多
く目につきます。これらはすべて同じ意味内容、または類似した意味内容で
あると理解できます。
   ・規則的な繰り返し。
   ・周期的な反復、循環、動き。
   ・運動、音楽、文章の進行の調子。
   ・詩の韻律。律動。節奏。
   ・周期的に現れる拍子。音楽の三要素の一つ。

 これら多く現れ出る語句を核にして、他の語句をそこへ付随させて、わた
しの独断と偏見で大胆に辞書解説文を分類整理してみることにします。危う
い整理であるであることは承知ですが、次の四つに分類してみました。

(1)リズムとは、周期的な反復・循環・動き・律動のことである、規則的
な繰り返しのある動き・変化のことである。

(2)リズムは、メロディー・ハーモニーとともに音楽の基本的三要素を構
成する。規則的に反復する拍節的なリズムである。音の長さに単位のない自
由リズムもある。

(3)日本語では、詩歌の音数律のことをいう。五七調や七五調などをいう。
また、語句連続に同じ母音の繰り返しがあるなどもいう。
 文章・話しの音声化に伴って表れ出る抑揚・律動・節奏などの調子のこと
をいう。つまり音声の上げ下げ変化、強調変化、明暗変化、遅速変化、緩急
変化、音色変化などがつくりだす律動のことをいう。

(4)事物の形態変化の周期的な繰り返しをいう。視覚領域における図形を
単位とする形・色彩・明暗などの規則的な変化、その連続的な動きの繰り返
しのことをいう。
 聴覚領域(物理音、音楽、音声)の周期的繰り返しのことをいう。これは
(2)と(3)とに重なるものもある。


           
一応のまとめ


(1)は、リズム一般の総花的(総論的)な定義である。
(2)は、音楽プロパーでいわれてるリズムである。
(3)は、文芸・演芸プロパー(文章・話し・語りなどの音声表現)でいわ
   れてるリズムである。
(4)は、視覚的な形態・図形の配置変化の繰り返しでいわれてるリズムで
   ある。
(1)はリズム一般であり、(2)と(3)は聴覚的な音声に関わるリズム
   であり、(4)は視覚的な形態・図形に関わるリズムである。
 また、(1)は、リズムについての広義の定義であり、(2)と(3)は、
時間連続体としての周期的反復に関わるリズムのことであり、(4)は、空
間連続体としての周期的反復に関わるリズムのことである。


     
規則的な周期反復、ルーズな周期反復


 先に「リズムとは」の一般的な定義として「規則的な反復、周期的な繰り
返し」のことだと書いた。しかし、そうは言っても、その「規則性」はかな
りあいまいで、ルーズな性質を持っているものも多い。必ずしも規則性な繰
り返しがあるとは言えないリズムも多くある。
 「規則的な時間間隔で反復」するものといえば、その代表格はメトロノー
ムである。動力が途絶えることがなければ、いつまでも同じ時間間隔で動き
続けるはずである。
 「あいまいさ、ルーズさの時間間隔で反復」するものの例をあげれば、
「わたしの、日常の生活リズムは規則正しい」という場合のリズムがそうで
ある。「わたしの、朝・昼・晩の食事時間のリズムは規則正しい」「就寝時
間と目覚め時間のリズムは規則正しい」「排尿・排便のリズムは規則正し
い」といった場合は、そのリズムの規則正しさの時間間隔はかなりあいまい
で、ルーズな時間間隔をさしていることは言うまでもない。
 野球の試合で「3回戦冒頭からピッチャーの投球リズムが乱れ始めた」と
いうような場合のリズムは「1,2回戦までは投球の調子がよかったが、3
回戦になりピッチャーの投球の調子が乱れ出した」という使われ方である。
野球の試合においては各イニングごとの時間間隔は試合経過によって大きく
違ってくるし、「ピッチャーの投球のリズムが乱れ始める」という言い方は、
各イニングの「時間間隔」よりも「ピッチャーの投球の調子のよしあし」の
ほうにリズムの意味内容の重点がおかれている使われ方である。
 つまり、リズムは「規則的な反復、周期的な繰り返し」だとは言っても、
「時間間隔の規則正しい反復」もあれば、「時間間隔のあいまいさ、ルーズ
さのある反復」もあるということである。
 「時間間隔のあいまいさ、ルーズさのある反復」を「規則性」の反対語を
使って「不規則な周期的な反復、繰り返し」と表現しては正しくないだろう。
「不規則な」と言ってしまえば、「でたらめな、でまかせな、気まぐれな、
行き当たりばったりな周期的な反復、繰り返し」」という意味内容をも含ん
でしまうからである。


         
 リズムの分類


 これまでに「メトロノームのリズム」とか「日常の生活リズム」とか「投
球リズムの乱れ」とかの具体例をあげて説明してきた。日常生活で種々に使
われているこのようなリズム使用の具体場面の例はほかにもいろいろとある。
 わたしたちは日常生活の中で「リズム」をどのような具体的場面で使って
いるのだろうか。使われている場面をいろいろと探し出してみた。
 以下に具体的な場面の「リズム」使用例を列挙していくことにする。
 前記した四つの分類方法に当てはめてリズム使用の具体例を書こうとした
が、この四分類法に当てはめて書くには適当でないことが分かった。
(1)は一般的な総花的なリズムの定義であり、ここには総ての具体例が入
ってしまううことになる。同じものが(2)や(3)や(4)にも分散して
再び入ってしまうことになる。
 それで下記のようなリズムの分類法を試みた。自然界におけるリズムの使
用例と、人間界におけるリズムの使用例とに大きく区分けした。さらに、そ
れぞれを小分類にしてみた。
 

(A)自然界におけるリズム
    ①規則的な時間間隔のリズム
    ②ルーズな時間間隔のリズム
(B)人間界におけるリズム
    ①日常の生活行動のリズム
    ②身体生理のリズム
    ③動植物生態のリズム
    ④社会習俗慣習のリズム
    ⑤芸能や運動技能の熟練リズム
    ⑥音楽プロパーのリズム
    ⑦文芸プロパーのリズム
    ⑧形態変化のリズム




       
リズムの使用場面例



 下記の「リズムの使用場面例」にある個々の文は、引用文以外は、荒木の
自家作成による文である。「リズム」の語を中にはめ込んで作成できそうな
文を思いつくままに書き出してみた。それらを上記分類の中に当てはめて順
不同で列挙している。こなれない文もあるかもしれないが、大目にみていた
だきた。


(A)自然界におけるリズム


 ここには天体の運行に関するものの大部分が入る。天文学上の物理法則に
よる規則的な時間間隔の周期で動くものが入る。恒星、惑星などの運行が入
る。しかし、これらと関連する地球における雨季と乾季の周期や、四季交代
の周期などは、地球表面の気象条件によって時間間隔の周期にかなりのばら
つきあり、それを判定する人によっても違いがある。


  
 ①規則的な時間間隔におけるリズム使用例


〇天体(太陽、恒星、惑星、衛星、彗星、星団、星雲など)の運行は規則的
 なリズム周期で運行している。
〇太陽は宇宙の中心に静止し、地球が自転しながら他の惑星とともに太陽の
 周りをそれぞれの公転リズムで回っている。
〇惑星、衛星、彗星などは、それぞれが運行する軌道上を宇宙リズムの法則
 にのっとって周回している。
〇恒星に対して月は天球上を27.321662日の周期リズムで一周している。
〇音波、光波、電波には、それぞれに一定の波形リズムがある。
〇振子時計が規則正しいリズムで時を刻んでいる。
〇メトロノームが規則正しいリズムの時間間隔で左右にふれている。
〇電波時計の秒針が規則正しいリズムで回っている。


   
②ルーズな時間間隔におけるリズム使用例


〇インドや東南アジアには、雨季と乾季とが周年リズムで繰り返す生活であ
 る。
〇日本は、春夏秋冬の四季交代の周年リズムがある。四季による気温変化に
 応じてさまざまに生活のしかたが変化する。
〇寄せては返す海岸の水波、潮の干満は、太陽と地球と月の移動のリズム 
 に組み込まれておこる。四季の交代ももちろんそうである。
〇エスカレーターの上昇機と下降機が、左右の両側で規則正しいリズムで上
 がり降りしつつ人々を運んでいる。自動感知で昇降する人がなければ停止
 する。


(B)人間界におけるリズム


     
①日常の生活行動おけるリズム使用例


〇人それぞれに一日の生活行動に決まった流れのリズムを持つ。それに異物
 が混入すると、通常の生活リズムに混乱が生ずる。通常の生活リズムが狂
 うと、精神的または身体的な変調をきたすことになる。
〇人間は朝昼晩夜のくりかえしリズムで行動する。わたしは夜勤の仕事なの
 で昼夜が逆の生活リズムをおくっている。
〇一週間は日曜日で始まり、土曜日で終わる。これが正式な一週間の開始と
 終了である。カレンダーもそうなっている。しかし、日常生活の実感では、
 月曜日が仕事の始まり、土曜日が仕事の終わりである。日曜日が休業日で、
 一週間の疲れを休める日である。このように一週間は、月曜日で始まり、
 日曜日で終わるという生活リズムが実感的である。
〇小学校の児童は、45分授業の生活リズムで学校生活をおくる。中学校の
 生徒は、50分授業の生活リズムで学校生活をおくる。
〇畑作栽培では、いつ、どの仕事を行う、という一定の決まった農事作業暦
 がある。天候異変によって栽培リズムが狂わされると、凶作となり、農家
 は収入減となり、経済的な打撃を受ける。
○昔、中国では一年を二十四節気で暦を作り、それぞれ季節にちなんだ名前
 をつけ、一年の生活リズムとして用いていた。日本でも中国のこの暦法を
 取り入れていた。明治6年、現在の太陽暦に変わったが、季節リズムの変
 わり目を示すよい目印となるので、現在の暦にもこれが書かれているもの
 がある。
〇スポーツの応援で、観衆全員が「ニッポンチャチャチャ」と言いながら手
 拍子をリズム調子よく合わせて打つ。会場が割れんばかりに盛り上がる。
〇宴会で、歌い手の歌のリズムに合わせて全員が手拍子を打って宴会の雰囲
 気を盛り上がる。


     
 ②身体生理におけるリズム使用例


*生体リズム

〇人間の臓器の生命活動のサイクルが体内リズムを形作っている。
〇体内の諸器官の調和が変調をきたすと体内リズムに狂いが生じ、健康に悪
 影響を及ぼすようになる。
〇医師は聴診器を患者の胸に当て、呼吸の音や心臓の音が、正常なリズムを
 刻んでいるかを診察する。呼気と吸気のくりかえしリズムが正常に働てい
 る。心臓の鼓動が規則正しいリズムを刻んでいるかを診察する。
〇心臓から血液が規則的に押し出されるたびに動脈は周期的なリズムで運動
 する。これを脈拍リズムという。成人で1分間で60~100拍である。指で
 手首に触れて正常かどうかを数をかぞえてはかる。
〇人間体内の諸器官の細胞には生命リズムがあり、それらが互いに干渉し合
 い、複合的なリズムを構成する。
〇わたしは、現在のところ、覚醒と睡眠の規則正しいリズム交代で健康です。
〇現在、あなたの脳波の曲線リズムは正常です。
〇血圧リズムや体温リズムの曲線は大体きまっています。
〇人間の身長や体重には、増大期、停滞期の成長曲線リズムがある。
〇人種によって、身長や体重の成長曲線のリズムには大きな違いがある。
〇人間には、レム睡眠とノンレム睡眠とのくりかえしによる周期リズムがあ
 る。年齢に応じて、睡眠時間や排尿排便時間のリズムは違ってくる。
〇基礎体温と排卵日の規則的な周期を月経リズムという。最近、月経リズム
 の変調があり困っている。
〇女性の中には、月経時に感情変化が激変する極端な周期リズムがみられる
 人がいる。
〇下記は、田多井吉之介『生活をあやつる神秘なリズム』(講談社、)より
 引用
 バイオリズムは、23日・28日・33日という3種類の周期からなり、
 それぞれ「知情意」の波を表すものとして捉えられている。このなかで、
 28日だけは、月が地球を回る周期として知られているのだが、あとの2
 3日、33日は、その意味がわかっていない。あるいは、太陽系のいずれ
 かの、天体相互の関わりから生まれたのかもしれない。これらの関係がわ
 かれば、地球上の生物の持つ、宇宙的な意味が明らかになるだろう。
〇下記は、三木成夫『内蔵のはたらきと子どものこころ』(築地書館、198 
 2)より引用
  一年という周期をとっても、そこには、人によって、さまざまの山と谷
 がある。いわゆる日リズムに対する年リズムです。そして、このリズムに
 従って、胃袋もまた大きく眠ったり、起きたりしている。(中略)胃袋と
 いうものは、中身がからっぽになったら、すぐに食物を催促する、そんな
 自動機械ではありません。ちゃんと朝・昼・夜とか、春・夏・秋・冬など
 といった大きな宇宙的な要素、つまり、われわれの所属する「太陽系」の、
 天体相互の運行法則にきちんと従って動いているのです。胃袋そのものが
 太陽系の一員なのです。太陽系の運行に、いわば「共鳴」している、これ
 が本日の話の、じつは出発点です。(省略)
  私どもは、宇宙リズムがもっとも純粋なかたちで宿るところが、まさに
 この内蔵系ではないか、と考えてるのです。私たち人間の内臓系を見ます
 と、食と性の宇宙リズムは、ほとんどなくなりかかっている。こうした中
 で、卵巣だけは依然として健在です。まっ暗闇の腹腔の中にいながら月齢
 だけはちゃんと知っている。こうなれば、もう卵巣そのものが一個の”天
 体”というよりない。小宇宙が内臓される、とはこのことをいったのでし
 ょう。

*体内リズム(体内時計を含む)
〇はげしい運動には、ほどよい休養が必要です。休養が不足すると体調リズ
 ムが狂ってきて、精神的にも不安定になり、怒りっぽくなったり、事件を
 起こしたりすることにもなります。
〇先月まで、わたしの体調リズムの調子がとてもわるかった。不規則な生活
 の連続で生活リズムが狂っていた。が、今月からはまじめに働いているの
 で、生活リズムが回復してきて、体調がよくなってきた。
〇朝、昼、晩の規則正しい食事習慣のリズムをつけることはとても重要です。
 食事時間が乱れたり、朝食を食べなかったりすると、体調リズムに変調を
 きたします。
〇小学生も中学生も、一週間の学校時間割にそって行動している。通常の一
 週間のリズム行動が乱れると、精神的にも不安定になり体調を悪くする。
〇人間は、各人が、一定の日リズム、月リズム、年リズムで行動している。
〇あなたの生活リズムの乱れを直すには、まず食事(暴飲暴食)と睡眠(昼
 夜逆転)から始めることです。
〇わたしの友人に、躁と鬱をくりかえすリズムをもった人がいる。
〇対話していて相手との互いのリズムがいちいち相殺し合ってしまうような
 人と一緒にいると、ひどく疲れたり苛々が高じたりする。
〇わたしには、雨の日(低気圧がくると)に腰痛が起こるというリズム周期
 がある。こんな変調リズムをはやく直したい。
〇ピアジェによると、子どもの認識能力には四つの発達リズムがあるという。
 感覚運動期(0~2歳)、前操作期(2~7歳)、具体的操作期(7~1
 2才)、形式的操作期(12才以降)という四段階を経過して成長すると
 いう。

   
  ③動植物生態におけるリズム使用例


〇生物(動植物)の運動や生理現象にサーカデアンリズムというものががあ
 る。
〇同種の動植物は、同じ環境の中では、同じ生態型のリズムで成長する。
〇草食動物は昼行性、肉食動物は夜行性とういう日リズムで行動する。
〇カマキリのオスは交尾を終えたあと、メスにかじられて死んでいくという
 一生涯リズムをもつ。
〇人間には、生老病死という一生涯のリズムをもつ。
〇微生物の生命現象にも周期的なリズム変化がみられのである。
〇哺乳類には、一定の毛替わり期・発情期・妊娠期・出産期というリズムが
 ある。
〇爬虫類や両生類には、脱皮という年リズムがある。
〇カイコは、幼虫期に4~5回の脱皮をして蛹(さなぎ)となり、さらに一
 回脱皮して成虫となる年リズムがある。
〇ヘビ、カエル、コウモリ、シマリス、クマなどは、冬眠するという年リズ
 ムがある。
〇渡り鳥は逗留地を交代するという年リズムがある。渡り鳥には、渡りの状
 態から三種類がある。夏鳥(ツバメ、カッコウ、ホトトギス)と冬鳥(ガ
 ン、カモ、白鳥、鶴)と旅鳥(シギ、チドリ)とである。
〇鮭は、川で生まれ、海に下って成長し、産卵のため生まれ故郷の母川に戻
 る。雌は母川の川底に穴を掘って産卵し、砂や小石で上をおおう。産卵後、
 親は死ぬ。孵化した稚魚は春、母川を下って海に入って、2~5年で成魚
 となって母川に戻り産卵する。鮭はこうした回遊という一生涯リズムがあ
 る。
〇朝顔、昼顔、夕顔、それぞれに開花時間としぼむ時間の日リズムをもつ。


   
  ④社会の習俗慣習におけるリズム使用例


〇世界の人々は、それぞれの国の風習、慣習、習俗の伝統行事にしたがった
 行動リズムで生活している。一例をあげれば、イスラム教のラマダーン、
 キリスト教の日曜礼拝、日本の正月行事などである。
〇日本の古い暦では、季節の変化を「小寒、大寒、立春、啓蟄、節分・土用、
 彼岸、八十八夜、二百十日」などの節気リズムがある。これを目印に生活
 行動の区切りとしての年リズムで行動する。
〇日本の仏教では、死後、年ごとにめぐってくる命日に故人を弔う供養会を
 行う慣習がある。1周忌、2周忌、3周忌、7周忌、13周忌、23周忌、
 25周忌、27周忌、33周忌などの周忌リズムで仏事供養をおこなう慣
 習がある。
〇下記は、拙著『学級懇談会の話材集』(一光社、1987)より引用
 日本各地には、伝統的な年中行事があります。おせち料理、お年玉、初詣、
 書き初め、どんど焼き、節分、ひな祭り、端午の節句、七夕、盆踊り、年
 越しそば、縁日、秋祭り、町内運動会、村の神社祭礼、みこし、村の芸能、
 演芸会、その他、地域をあげての四季折々の年中行事があります。村の 
 人々はこうした年中行事のリズムをこなしていき、生活の変化を楽しんで
 います。
  年中行事は、わたしたちの単調で平板な毎日の生活に、同じように繰り
 返す日常生活に、豊かさとうるおいを与え、メリハリとアクセントとリズ
 ムを与え、毎日の閉塞した精神に生気と活力を与えてくれます。一部の 
 人々は古い因習によるバカ騒ぎのおろかな行事と軽蔑するかもしれません
 が、この大いなる物質的そして精神的なムダがわたしたちの極度に単調で
 平板な日常生活に活気と楽しさと豊かさを与えてくれるわけで、むだを豊
 かに楽しむことは文化であるわけです。伝統的な年中行事のリズムを楽し
 むことは、閉塞した生活空間を意匠化し、デザイン化し、干からびた生活
 空間を、変化に富んだ潤いのある生活空間に構築し直してくれます。  


   
⑤芸能や運動技能の熟練におけるリズム使用例


〇空海の書は、脈々と呼吸している筆づかいが感じられ筆跡リズムがすばら
 しい。
〇この書には、甘美な女性的なリズムが投影されている筆跡が感じとられる。
〇お父さんのパソコンのキーボードを打つ手の動きが、リズム調子よく、快
 く響いている。
〇ベルトコンベアーで分担作業している労働者たちの作業リズムに乱れがな
 い。
〇おばあさんの編み物をあむ手作業は、現在はリズム調子よく動いているが、
 あと二十分もしたら疲れて、リズムが乱れ始めるでしょう。
〇少年がサッカーボールでリフティングの練習をしている。その上手なこと。
 軽やかな、リズム調子よい身のこなし方はすばらしい。
〇スキーを上手にすべるにはリズムにのることが大切です。
〇この絵画の、山と空とが接する境目のおぼろにかすむ凹凸には、味わいつ
 くせない稜線リズムが彷彿とみえて、すばらしい筆づかいです。
〇枯れ枝に残っている1枚の葉がヒラヒラヒラヒラ、同じリズムで風にたな
 びいている。その姿が人生の哀れさと重なって悲しい。
〇山田さんは、三拍子の音楽に合わせてリズミカルにワルツを踊っている。
〇日本の能は、緊張をはらんだ間、序破急の変化の自由リズムであり、拍節
 的なリズムを超越している。
〇美空ひばりは、バックで演奏する楽団伴奏の規則的な拍節にとらわれない
 ない自由リズムで歌う。自分なりのフィーリングで、こぶし、バイブレー
 ション、伸ばす、縮める、ふるわす、音色変化、ノイズ、裏声と地声の使
 い分けなどのテクニックを上手に使って、自由なリズムで自由奔放に歌っ
 ている。
〇マラソン競技で、いまのところ山田選手は、軽やかなリズム調子で走り続
 けている。このリズム調子でゴールまで走り続けていけたら優勝するでし
 ょう。
○野球の試合は、わがチームにとってよいリズムで進んでいる。わがチーム
 のピッチャーは1・2イニングともに三者凡退でうちとった。現在3イニ
 ングの第一打者であるが、1ボール2ストライクで、相手バッターが味方
 ピッチャーのリズムを外すため、タイムを要求しちょっとの間をとった。
 間をとって味方ピッチャーのいい流れ・調子の投球リズムを変更させたの
 である。
○1分間に120のリズムで走る。リズムにのって走る。音楽のリズムに合わ
 せて行進する。
〇日本舞踊では、踊っている時の身体表情が大切である。手の表情、脚の折
 れ具合、顔の向きや傾きや表情、視線の向け方などが大切である。日本舞
 踊は音楽に合わせて踊るのだが、音楽のリズムよりも、歌詞やメロディー
 が重要である。歌詞内容をどう動作に振付けてメロディーに表情をつける
 かが重要となる。
〇社交ダンスのワルツは3拍子のリズムに合わせて踊る。しかし、「ワン」
 「ツー」「スリ」の等時間隔でなく、「ワン」→「ツウーー」→「スリ」
 と、「ツウーー」をやや長く伸ばして、「ワン」と「スリ」とを、その分
 だけ臨機に短縮した時間間隔にして踊るとリズムよい華麗な踊りになる。
○平成16年度「学校体育長期研修研究報告書」(広瀬清美執筆)より引用
 小学校では「リズムへの乗り方がやさしくて弾んで踊れる軽快なロックや
 サンバのリズムを取り上げ、友だちと自由にかかわって即興的に踊る体験
 を大切にする。中学・高校では小学校で経験したロックやサンバに加えて、
 乗り方のやや難しいヒップホップなどのリズムを取り上げレパートリーを
 広げたり、好きなリズムや曲を選んで一曲にオリジナルの振付けを工夫す
 る学習へと発展させる。


    
 ⑥音楽プロパーにおけるリズム使用例


〇音楽には三つの基本要素がある。メロディー、ハーモニー、リズムである。
 メロディーやハーモニーのない音楽は考えられるが、リズムのない音楽は
 考えられない。
〇音楽用語で、拍子は、音の進行で強拍と弱拍を一定の法則で単位とした 
 ものをいう。楽譜では小節と一致する。2拍子、3拍子、4拍子、6拍子
 などのリズムがある。
〇一つの小節の中の個々の拍は、その位置によって強弱のリズムがつくもの
 とつかないものが決まっている。四分の二拍子は強弱・強弱・強弱であり、
 四分の三拍子は強弱弱・強弱弱・強弱弱である。
〇リズムが構成されるいちばん基底にあるのは、等拍のパルスの連続的な進
 行である。
〇下記は、東京新聞(2013・2・14)芸能・音楽欄の記事から引用
 音楽の作り方(作曲法)は大きく変わった。最大の革命はデジタル技術の
 登場だ。ドラムマシンの隆盛で「リズム隊の仕事はなくなる」ともいわれ
 た。「デジタルは正確で絶対にぶれない心地よさがある。でも、人間が刻
 むリズムの、揺らぎやブレの魅力も捨てがたいものだ」
〇下記は、岡田暁生『音楽の聴き方』(中公新書、2009)より引用
  言葉と音楽の分節規則(リズム)は深く関連し合っていて、背景になっ
 ている言語を知らないと音楽もまたよく分からないといったことが、しば
 しば起こる。「波長の相性」の具体的な原因は、多くの場合、案外このあ
 たりにあったりする。(中略)
  いわく言いがたい(数比化しにくい)「こぶし」のような揺れは、楽譜
 から原則として取り除かれる。音楽をいわば身体から引き剥がし、客観化
 するわけである。リズムが身体にへばりついている(その人の身に備わっ
 たものである)限り、それはあくまでも個人の「芸」という時間的、空間
 的制約を超えることはできない。(中略)
  五線譜として合理化された部分は他人でも再生できるが、それ以外の部
 分は生身の人間の身体から決して分離させることは出来ない。例えばショ
 パンのノクターンやマズルカが彼自身によって一体どのように弾かれてい
 たか。それこそがこれらの曲に生命を吹き込んでいただろう、ショパンに
 よる演奏の繊細きわまりないテンポの揺れがどのようなものであったか。
 いくら楽譜を眺めていても分からない。五線譜に収まっている音は何とか
 再生が可能であるが、そこにはまりきらないニュアンスにこそ宿っていた
 ショパンの「芸」は、彼の死とともに永遠に失われてしまった。
〇下記は、学習指導要領(平成20年版)小学5・6学年から引用
 「内容の取扱い」の中の「音楽づくりの指導」の項
 ア音遊びや即興的な表現では,リズムや旋律を模倣したり,身近なものか
  ら多様な音を探したりして,音楽づくりのための様々な発想ができるよ
  うに指導すること。
 イつくった音楽の記譜の仕方について,必要に応じて指導すること。
 ウ拍節的でないリズム,我が国の音楽に使われている音階や調性にとらわ
  れない音階などを児童の実態に応じて取り上げるようにすること。


    
   ⑦文芸におけるリズム使用例


〇俳句は、575のリズムである。
〇短歌は、57577のリズムである。
〇この詩には、57調(または75調)のリズムがある。
〇定型詩には、音の強弱からくることば調子、長短からくることば調子のリ
 ズムがある。
〇日本の新体詩は、和歌の伝統もあって、耳に快いことば調子のリズムを重
 視してきた。現在でも、詩の言葉というと、いまだに、きれいごとの美文
 調だという先入観をもっている人々が多くいる。
〇現代詩は、新体詩と比べて、音楽的なリズム感よりも、視覚的、絵画的な
 要素が大きくなり、イメージの追求が主になってきている。リズムは内在
 的になり、表立たなくなってきている。
〇西洋の詩は十九世紀までは定型詩であった。押韻、脚韻、オート、ソネッ
 ト、ヴァース、音数律、発音上のリズムについてさまざまな約束があった。
〇文章におけるリフレーン(同じ一節をくりかえす修辞法)や、対句(類似
 している二つの一節を相対してならべる修辞法)は、音声表現に快いリズ
 ムを与え、上手に使えば、とてもよい表現法だ。
○人はそれぞれ、自分の思考パタンに「くせ」や「リズム」をもっている。
 そうした思考の個性を大切にしながら、自分に合った文章の表現スタイル
 をつくることが大切だ。
〇下記は本HP第1章「星とたんぽぽ」(金子みすず)より引用
  第一連の詩句「青いお空のそこふかく、海の小石のそのように、夜がく
 るまでしずんでる、星のお星はめにみえぬ。見えぬけれどもあるんだよ、
 見えぬけれどもあるんだよ。」は、「3+4+5」の語群からなり、75
 調のリズムを構成している。
〇下記は本HP第1章「おむすびころりん」(羽曾部忠)より引用
 「おむすびころりん」(羽曾部忠)には、くりかえし言葉が使われていま
 す。「おむすび ころりん すっとんとん。ころころ ころりん すっと
 んとん。」が四回も、繰り返されています。
  その他、「ころころ ころりん かけだした。」と「すっとんとんと 
 とびだした。」のリズムの対応が音読していておもしろいところです。
 「おどった おどった すっとんとん。こづちを ふりふり すっとんと
 ん。」と「しろい おこめが ざあらざら。きんの こばんが ざっくざ
 く。」の対応リズムも音読していておもしろいところです。「じぶんも
 あなへ すっとんとん」と「おじいさん ころりん すっとんとん。」
 との対応リズムも音読していておもしろいところです。
  この作品には、「すっとんとん」の言葉のくりかえしが12回もありま
 す。「ころころ ころりん」が、5回もくりかえされています。「おどっ
 たおどった」のくりかえしが、7個もあります。
  ほかのくりかえし部分も書き出してみましょう。「むかし むかし」、
 「まて まて まてと」、「これは これは」、「きこえる きこえる」、
 「おどった おどった」、「あれ あれ あれ」、「ふり ふり」。こう
 した繰り返しがリズム調子よく、楽しんで音声表現ができるようになって
 います。
  子ども達は、くりかえし言葉が好きです。子どもにとっては、くりかえ
 し言葉を音読することは一種の遊びです。ゲームで遊ぶようにくりかえし
 言葉を楽しみます。くりかえし言葉は物語の流れを単純にして、分かりや
 すくします。この単純さ、分かりやすさが、子ども達に好まれるのです。
〇下記は、藤田竜生『リズム』(風濤社、1976)より引用
 日本語のアクセントはふつう高低アクセントと言われている。高低アクセ
 ントとは少しばかり音楽的に言いなおせば音程アクセントである。さらに
 比喩的に言えば、強弱アクセントのリズム的アクセントに対し、旋律的ア
 クセントとでも言えようか。(中略)英語が三拍子のワルツ調であること、
 それに対して地名や人名をはじめ、七五調や七七調、はては応援や手締め
 の手拍子までが二拍子や四拍子の偶数拍子を構成すること、わが国には三
 拍子の曲がほとんどみられない。(中略)
  和歌のリズムも、能のリズムも、三味線のリズムも、そして、日本語の
 リズムも、日本人のからだのリズムも、ともに日本のリズムであり、その
 限りではたしかにこの国の風土が生んだ「風土的リズム」にちがいない。
 日本語のリズムも、日本人のリズム感も、時代と歴史と生活の渦の中で、
 たしかに変わってきているし、これからも十分に変わっていくだろう。そ
 れを変えるもの、変えさせるものは何か、という点に新しいリズム論はき
 りこむ必要があるだろう。


       
⑧形態変化おけるリズム使用例


≪本節⑧は、規則的に繰り返される事物(多くは無機物、図形・形態・色
彩・音響)の形態変化(色 彩、図形、明暗、強弱、遅 速)で連続して繰
り返す場面における「リズム」使用の文例である ≫
〇水道の蛇口からしたたり落ちる水滴の音は、 強弱・遅速の等間隔のリズ
 ムを刻んでいる。
〇心電図の図形グラフは正常なリズム曲線を繰り返していて、異常はみられ
 ません。
〇ここから見ると、電柱が規則正しく配置されてるようで、遠近の繰り返し
 リズムが美しく見える。
○コンパスで円の中に描いた図形に順序よく色を塗った紋様のリズムがきれ
 いだ。その下図に色をまだ塗ってない線だけの紋様リズムも美しい。
○赤(大)・青(中)・黄(小)の色の順と形の順が順序よく並んでいて、
 その繰り返し模様にはリズムがあって、きれいだ。
〇電車の車輪の回転音が、規則正しい強弱・遅速リズムで繰り返していて、
 いつの間のか寝入ってしまった。
〇砂漠の砂紋が描く図形構成リズムは、まるで芸術品のようだ。
〇楠の大木の年輪を見ると、その年輪構成リズムには、北西の風に堪えてき
 た長い年月の歴史が刻まれていることがわかる。
〇交差点の信号機は、緑・黄・赤の点滅リズムを繰り返して発信している。
〇ネオンサインが、くるりくるりと規則正しい色変わり変化のリズムで回転
 しているのが見える。
〇天守閣を固めている石垣の配列模様(図形)に朝の光が当たって、キラキ
 ラしている。石垣の配列模様(図形)が光って見える。遠くから見る石垣
 の配列模様(図形)はリズムがあって美しい。
○日本最後の職員滞在灯台であった女島灯台(長崎市五島列島)は2006年11
月に自動化され、総ての灯台が無人化した。女島灯台は、単閃白光15秒
 に1閃光のリズムで光を発している灯台である。女島灯台は「喜びも悲し
 みも幾年歳月」(木下恵介監督、昭和48年)の映画化の舞台ともなった。
 灯台守の夫婦愛(佐田啓二、高峰秀子)のすばらしさに感動し、わたしは
 涙した。ユーチューブで片鱗が覗ける。


    
総称的な概念としての「リズム」


 これまで「リズム」という語のいろいろな場面での使われ方を書いてきた。
もちろん、以上に書いた使われ方はほんの一部分であり、わたしたちの生活
はリズムに包まれているといってもよいだろう。
 わたしは、リズムの分類として、「自然界におけるリズム」と「人間界に
おけるリズム」に分け、さらに前者を二個に、後者を八個に分け、計十個に
分類した。リズム使用場面の文例を計十分類のいずれかに差し入れて書いて
きた。しかし、差し入れにはかなり迷った文例もあった。わたしの十分類は
かなり曖昧な分類であり、あっちにもこっちにも挿入できそうな文例があっ
た。どこに挿入しようか迷った文例もあった。
 「交差点の信号機は、緑・黄・赤の点滅リズムを繰り返す」の文例でいえ
ば、「緑・黄・赤」の点滅は「色彩の連続する規則的な繰り返し」であると
すれば「⑧形態変化おけるリズム使用例」個所へ挿入となる。また、「緑・
黄・赤」の点滅は、時間間隔では、等時間間隔でなく、多くの信号機は
「黄」が短く、「緑」と「赤」は、人と車との交通量過多によって緑が長か
ったり、赤が長かったりするわけで、異時間間隔の周期的な機械的な繰り返
しであって、そこに注目すれば、「自然界におけるリズム」の「②ルーズな
時間間隔におけるリズム使用例」にも入りそうだし、「人間界におけるリズ
ム」の「①日常の生活行動おけるリズム使用例」にも入りそうである。ちょ
っとばかり深くほじくりだして考えていくとあちこちに入りそうで迷ってし
まうことになる。
 リズムの分類は、大雑把に二、三個に分けるとよいのかもしれない。こう
すれば迷うこともなくなる。リズムを二、三個に分類している識者もいる。
三木成夫は『人間生命の誕生』(築地書館、1996)の中で、リズムを
(1)生物リズム(人間世界)
(2)四大リズム(天体世界) (四大=地水火風)
に分けている。
藤田竜生は『リズム』(風濤社、1976)の中で、リズムを
(1)等間隔という時間的要素
(2)文化論視点から
(3)人間の生活や生き方視点から
に分けている。
 こうした大雑把な分類では、リズムの具体的使用場面をあぶりだし、どの
場面で、どのように使われているか、を知るには、できるだけ多くの使用場
面の分類表があったほうがよいことは言うまでもない。その観点で、わたし
の上記した分類表は、具体的で分かりやすいと言える。

 これまでリズムという語の具体的使用のいろいろな場面について書いてき
た。上記した使用例を読んでいて分かることは、リズムという語は、いろい
ろな使用場面で多様な意味内容で使われていることが分かる。多義的概念で
あり、その使用場面で、それぞれの限定された顔(限定概念)を表出してい
していることが分かる。であるから、「リズム」という語は、一義的な概念
内容でなく、総称的な概念内容であることが分かる。しかし、多様性の中に
も普遍性もあるはずだ。
 ルードヴィッヒ・クラーゲスは、リズムと拍子とを区別し、リズムは生命
であり、拍子は精神である、と語っているそうだ。次回は、クラーゲスのリ
ズム論について考えてみたい。これからクラーゲスの著書を初めて読み出す
わけだが、どんなことが書いてあるか楽しみにしている。

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