今日は多発性骨髄腫を題材に高齢者抗がん剤医療の是非についての話です。
私が医者になった頃は、血液疾患と言えば山口百恵さんの赤いシリーズや、世界の中心で愛を叫ぶなどの若い美女の白血病!といったイメージがありました。事実、夏目雅子さん、吉井怜さんなんかに負けない美女や、本当に性格のいい若い男性がよく入院してきたものです。若い人の命を助けるために、結構無茶をしたものです。
それに比べて肺癌、胃がん等は当時から高齢者が多く(といっても60代から70代でしたが)、まして白血病に比べて治りが悪いということ等から、最初から抗がん剤治療を行わないといったこともざらでした。
ところが同じ血液疾患でも多発性骨髄腫は当時から高齢者が多く、そして当時の肺癌と同じくらい治しにくい病気で、抗がん剤治療があまり効かず、治療することがある意味苦しませているだけではないかとすら感じる病でした。それでも目の前の患者が治らないかと治療をおこなっていたのです。
今現在多発性骨髄腫は、3種の神器と言われているボルテゾミブ、サリドマイド、レナリドマイドという薬が使えるようになっています。そのおかげで、大量化学療法併用の末梢血幹細胞移植療法を併用することなどで、若年者(60歳未満)の長期予後が得ることができる、抗がん剤治療の恩恵が得られる疾患に変貌しました。(それこそ格段の進歩を得ている肺癌治療以上の成果を得ることができています。)
しかし、最近の血液内科の常ですが、医療費がべらぼうに高く、まして一度はじめると一生やめれない薬ばかりです。おかげで、高額療養制度をほぼ全員が使い、製薬会社はとても儲かり、健康保険制度はパンクしてきています。(ちなみに病院はさほど儲かっているわけではありません。)
さあ、本題です。最近の心筋梗塞や脳卒中の治療の進歩に伴い、以前に比べ心筋梗塞や脳梗塞等で命を落とす方がとても少なくなってきています。そうすると、人間長生きしますが、最終的にはいつか必ず命を落とします。その原因が癌です。
年をとればとるほど、帯状疱疹に罹患するなど免疫が低下することが言われています。そして加齢に伴う免疫低下の結果、悪性新生物、いわゆる癌を抑え込むことができず、体に悪性新生物が出てくる確率は高くなります。
もちろん超高齢者の手術成功例などもマスコミでよく報告されていますが、術後の合併症等はなかなか予想がつかず、癌は治ったけど寝たきりということも多々あり、それは報道されません。
それ故様々な合併症を持つ高齢者の癌治療はとても悩むところで、多発性骨髄腫等の血液の悪性新生物を抗がん剤治療するのかどうかもとても悩む状況です。
では治療しないとすると緩和療法になるのですが、以前も書きましたが血液内科の緩和療法はとても難しく、抗がん剤を使うなど、所謂普通の緩和療法とは少し異なります。(血液疾患の緩和医療)
ゆっくりと悪くなっていくのであれば周りも納得できるのですが、結構あっという間に悪くなって、そして突然命を落としてしまうため、納得の時間がなかなかつくれません。
なんとかその辛い状況を改善しようと抗がん剤を使うと、病気はすこし改善しますが、副作用が出現し治療をすることで悪化してしまうことも多々あります。
さまざまなパラメーターを使って、何とか薬の量を変更し、治療に伴う合併症を防ごうという研究もなされていますが、所詮75歳未満が対象です。つまりそれ以上に抗がん剤を使おうとすれば、5感を研ぎすまして患者さんを診察し、個々の情報に頼るしかないのです。
多発性骨髄腫は以前は治せない病気でしたので、無理な治療、いや無駄な治療は行わない方向でした。しかし現在5年長生きできる治療ができたことで、どうしてもぎりぎりの戦いに出てしまうことがあります。 マニュアル通りにはなかなかいきません。(だから近藤先生にみんなだまされてしまうのです)
今後も医師として、技術を磨いていきたいと思いますし、勉強しない医師達に患者さんがだまされないようにしていくことを続けていこうと思っています。
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- 2014年10月01日 21:57