大声援、満塁、ストレートの四球。京田でなくても勝ち越し点は入っていたと思うかもしれないが、僕は野球の神様からのちょっとしたギフトだと思っている。
「一塁に立ったあたりから、この話を聞かれると思っていろいろ考えてはみたんですけど…」。京田が僕の取材を予想し、身構えていたのには伏線がある。交流戦の終盤ころから「20個目を選んだときには書く」と宣言していたからだ。
今季20四球。1年目が18、昨季が19ときて、ささやかながら過去の自分を超えた。「四球を取れない」。早いカウントから打って出る京田には、出塁率が上がらないという欠点も指摘されてきた。そんな京田が80試合目で早々とキャリアハイ。節目の四球が決勝押し出しだったのが、ギフトだというわけだ。
現在319打席。昨季と同じ打席(632)に立つとすれば39.6個と倍増する。それを補強するように、過去2年はリーグ1桁順位だった空振りが、今季は18位(107)に減り、ファウル(248)は10%ほど増え、1打席あたりの球数も4球弱と今までで最も多い。要するにボール球にバットが止まり、難しい球はファウルにもできているということだ。
「今日も4球目は『待て』でしたけど、それまでは打ちにいってバットが止まりました。何なんですかね、四球って…。狙っていくものではないですが、見極められれば結果としてついてくる。打ちにいってのおまけというんでしょうか…。そういうことをしっかりできれば、打率も上がっていくと思うんです」
京田が話す通り、四球を目的に打席に入る人はいない。ただ、打てる球は限られるし、投手はあらゆる術を駆使してボール球を振らせようとする。空振りやファウル、総投球数は、いわば打者を打ち取るための「難易度」の指標。劇的とまでは言わないが、京田は確実に進化しているのだ。