ボンド映画は第1作で監督のテレンス・ヤングと初代ボンドのショーン・コネリーがベースとスタイルをつくり、第2作で秘密兵器(アタッシェケース)が独特の世界観を生み出し、第3作で2代目監督のガイ・ハミルトンがエンターテインメント性を加えて完成させた、といわれる。
ボンド映画になくてはならないハイテクカー
ボンド映画初の「ボンドカー」は、その第3作の『ゴールドフィンガー』でエンターテインメントの重要な小道具として登場する。同作は小説でも初めてボンドに特殊装備のクルマが支給されるもので、原作では尾行用のレーダー装置などを備えたアストンマーティンの『DB3』(正しくは『DB Mk Ⅲ』)。映画では最新モデルの『DB5』に防弾パネルや機関銃や助手席が宙に飛び上がる機構などを加えた「秘密兵器」にされ、まさに一大エンターテインメントの大活躍をし、以降、さまざまなギミックを施したボンドカーの派手なアクションシーンがボンド映画の大きな見せ場となった。
また冒頭に別のエピソードのクライマックスシーンを入れ、オープニングから観客の心を躍らせるエンターテインメント性あふれるボンド映画のスタイルも同作でハミルトン監督が確立したものだ。続く第4作の『サンダーボール作戦』では、それを再登板したヤング監督が受け継ぎ、冒頭シーンで特殊装備の『DB5』が大活躍をする。
アストンマーティン『DB5』
第5作の『007は二度死ぬ』ではトヨタの『2000GT』が2代目ボンドカーに選ばれた。ただし日本の秘密情報部のクルマで、ボンドも運転しておらず、厳密にはボンドカーではない。だが『2000GT』の流麗なスタイルがボンド映画にふさわしい魅力を放っていたのは確かである。
トヨタ『2000GT』
第2作『ロシアより愛をこめて』ではボンドのプライベートシーンに愛車のベントレー『マークⅣ』のコンバーチブルが登場する。1936年製のクラシックカーだが、小説ではボンドは1933年製や1930年製のクラシックのベントレーを乗り継いでおり、それを忠実に再現しようとした選択なのだろう。なお映画では左の写真のようにダービーグリーンだが、原作ではボンドのベントレーはどれも「軍艦のようなグレー」である。
ベントレー『マークⅣコンバーチブル』
※2012年冬号取材時の情報です。
- TEXT :
- MEN'S Precious編集部
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