フジテレビジュツの仕事
ノンストップ!
2012年4月〜
毎週月〜金曜日 9:50〜11:25
- 美術プロデューサー:古江 学
- アートコーディネーター:大村 光之
- 大道具:中本 晃幸
- アクリル装飾:犬塚 健
- 装飾:後藤 佑介
- 生花装飾:荒川 直史
ビジュツのヒミツ①
イメージは「自然の中の彫刻」
アート作品のような白い立体でできたセット。
“大自然の中の彫刻作品”というイメージを、
思い切ったフォルムに仕上げました。
材料は発泡スチロール。
あえて粗く削った大道具の“彫刻家たち”の技で、
近くで見ると流木のような質感があります。
そして、印象的なポップな配色。
インパクトのあるショッキングピンクは、
蛍光性のある「ローダミンレッド」。
ライトグリーン(パントーン社の色見本No.375)との組み合わせは、番組のイメージカラーとして各所で使われています。
タイトルロゴはもちろん、
サイドテロップの色使いも統一されています。
セットに巻き付いた、
マルチカラーのシートでアクセントをつけました。
背景の奥は、緑の壁面に草が生い茂る世界。
斜めのラインと電飾で、差し込む光も表現しました。
ピンク色の「情報の種」から育っていった緑の世界を
ご堪能ください。
ビジュツのヒミツ②
仕上げはおまかせ!“塗り師”のワザ
テレビジュツのセットの材料は、
自由な表現ができて扱いやすい、
発泡スチロールがよく使われます。
とはいえ、材質そのままだと単調なものに見えてしまう。
そこで大道具の“塗り職人”の登場となります。
こちらのオブジェは、流木風の仕上げ。
外壁塗料の「ナコ」を、ハケ跡を意識して一気に塗ります。
カウンターの台座はツルツル仕上げ。
強化プラスチックの「FRP」を溶かして塗り、
表面を徹底的に磨き上げているんです。
塗料の種類や塗り方の違いによって、
様々な表現ができるのです。
図面にも、コーティング剤の種類が指定されています。
テレビの場合、照明の反射には特に気を使うので、
ツヤ消しの具合が重要。
毎日使うデイリー番組のセットは、痛みが激しいので、
“塗り職人”たちはメンテナンスにも余念がないのでした。
ビジュツのヒミツ③
プレゼンを支えるアイテムの正体
情報番組のプレゼンコーナーでは、
しばしば実物を使った説明が行われます。
そんな時に大活躍するのが、コレ。
ちょっとしたモノを置いたり、時にはパネルの支えになったり、
変幻自在のこのアイテムは、
その名を通称「アブスト」といいます。
サイズも各種取り揃えています。
というか、用途に応じてちょうどいいサイズで作ります。
「アブスト」の部品がこちら。
素材はスチール。
担当はアクリル装飾のスタッフ。
角をユニット器具で固定して天板をはめたら完成。
とはいっても、プロの仕事ですから、
ある程度の強度と、水平レベルはきっちり取っています。
カメラで撮りやすいように、ディスプレイ台も様々。
これは、おなじみの“八百屋台”。
商品や料理がズリ落ちないように、
表面は滑り止め効果のある素材で仕上げます。
こちらは、発展形の発明品。
これなら、大丈夫ですね。
これは、アクリル製のフリップ台。
何枚かまとめて置けるように、溝を作りました。
どんな要求にでも応えられるように、
情報番組の美術スタッフも日々研究でございます。
デザインのヒミツ
平面図
ー情報番組としては独特な雰囲気のセットである印象を受けますが、デザインの着想はどこから?
邨山
番組開始時にプロデューサーから、箱根・彫刻の森美術館にある「ネットの森」(子どもが中で遊べるアート作品)をイメージしたセットにしたい、との要望がありました。そこから、「大自然の中のアート作品」をモチーフにすえ、そこで情報を展開していく、という形が頭の中に出来上がりました。
ー「大自然の中のアート」から、今のデザインをどのように具体的に描き出したのですか?
実は、初めにプロデューサーに提案したデザインは「風」のイメージだったんです。紙縒り(こより)がふわふわと風になびくような、軽やかな。それを見せたところ、プロデューサーからは、「朝の情報番組として“定着”させたいので、セットもその意識に沿わせたい。風のように流れる、飛ぶものではなく、どっしりとした安定感を印象づけるものに」と、真逆の課題を出されてしまいました。
そこで、今度は「根付く」をテーマに変えました。種から根っこ、芽、茎、葉がぐんぐんと育って根付いていく。それを柔らかく包む大自然の緑――そんな光景をイメージした、大自然の中の彫刻作品を造ろうと。
色合いとして、種はピンク、根っこや芽は白、そして新緑、この3色をテーマカラーにしました。番組タイトルロゴやサイドテロップもこの3色ベースで統一感を出しています。
ー「せきららスタジオ」コーナーのセットはまた別の趣
ですよね?
ちょっとわかりにくいかもしれませんが、あれ、実は大きなコーヒーカップのセットなんです。プロデューサーから「ファミリーレストランでコーヒーを飲みながらトークする雰囲気で」と言われ、「だったらいっそのこと、コーヒーカップの中でトークしちゃいましょうか」と(笑)。
ー特異なデザインのセットで苦労した点は?
曲線と空洞の多いセットをどう立たせ、どう解体するかが悩みどころでした。単体では如何せん無理で、結局、10基以上のパーツを接ぎ合わせて1つの大きなセットを造る形にしました。帯番組で毎回これだけの数のパーツを接ぎ合わせで立てるセットは珍しいかもしれません。
ー視聴者に気付いて欲しい、こだわったポイントはありますか?
セットのところどころに入れたマルチカラーのアクセントです。サイドテロップを出す時に、ベースがピンク、白、緑だからテロップにも3色しか使わない、と決め事にしてしまうと、伝える内容によっては合わなくて、スタッフのストレスにもなってしまいます。それで、マルチカラーを画面に一緒に映り込ませることで、たまに他の色のテロップを出しても、マルチの親和性で違和感なく馴染ませるのが狙いです。このマルチカラーシートは、セットのどこを切り取っても映るように配置していますので、気づいて頂けると嬉しいですね。