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【社会】

ハンセン病訴訟 控訴せず 家族被害 国の賠償確定へ

 ハンセン病患者の隔離政策による家族への差別被害を認め、国に損害賠償を命じた熊本地裁判決について、安倍晋三首相は九日、「家族の苦労をこれ以上、長引かせない」として控訴しないと表明した。家族五百四十一人に計約三億七千六百万円の賠償を命じた判決が確定する。政権内で「控訴するべきだ」との声もあった中での政治決断。控訴すれば、批判を浴びることは必至で、参院選への影響を懸念したとみられる。謝罪や国の責任には言及しなかった。控訴期限が十二日に迫っていた。

 首相は「極めて異例の判断。家族は筆舌に尽くしがたい経験をされた」と説明。根本匠厚生労働相は九日の閣議後会見で「早急に具体的な対応を検討したい」と述べ、被害家族の救済方法を打ち出す姿勢を示した。原告団の林力団長は取材に「あまりにも遅過ぎたが、やっとここまで来た」と話した。

 安倍首相は控訴期限前に開かれる閣議に合わせ、最終調整を図った。「判決内容に受け入れがたい点がある」と話しており、山下貴司法相は閣議後会見で「その点を含め、法務省では検討してきた。元患者や家族に寄り添いたいという思いによる決断。その重さは共有している」と述べた。

 元患者本人を巡っては、二〇〇一年五月に熊本地裁が国に約十八億二千万円の損害賠償を命じ、小泉純一郎首相(当時)が控訴しないことを決断し、補償制度につなげた経緯がある。ただ、家族訴訟の原告団によると、提訴していない家族も多数いるとみられるが、総人数は不明。被害者の掘り起こしが必要となる。

 また、母親が患者だった鳥取県の男性が、国と県に差別被害の賠償を求めて最高裁に上告中で、政府が対応を検討する可能性がある。根本氏は、今回の判断が旧優生保護法など他の国家賠償請求訴訟に波及しないとの見方を示している。

 六月二十八日の地裁判決は、らい予防法の隔離政策により、学習機会や最低限度の社会生活を喪失したり、結婚差別が生じたりしたことを認め「家族も回復困難な被害を受けた」と指摘。隔離政策の必要性がなくなった後も、政府が差別・偏見を取り除く措置を取らなかったことを違法と判断した。時効で賠償請求権が消滅したとする国の主張も退け、原告五百六十一人のうち五百四十一人について一人当たり三十三万~百四十三万円の賠償を命じた。

 

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