2008/7/19



1-1 民主主義国家における国民の義務
 民主主義国家とは何か、と言えば、極単純には「国民が国の方針を決定する国家」と言えるだろう。「国民主権」と言っても良い。国家元首なり大統領なり議員なりを選挙で選出して国の方針を委ねようが、あるいは直接的に国民投票にかけようが、方法はいろいろあるが、兎に角国民の意思によって国家の方針が決まり、国の舵取りが決まる国家が民主主義国家と言える。
 であるならば、民主主義国家の国民は国家の方針を考え、国の舵取りを決める義務がある。
 それは最終的に「共和党に投票するか民主党に投票するか」とか「自民党に投票するか民主党に投票するか」とか「この国民投票に賛成するか反対するか」といった選択肢の形をとるかもしれないが、その選択をなす根拠は「この国の方針をどうしたいか」と言う検討であり思考であるべきで、「出身が地元である」とか「何かの時にお世話になった」とかで選択するべきではない
 さもなければ、民主主義国家はその民主主義ゆえに、衆愚政治に堕する他なくなる。
 古代ローマ帝国は、民主主義の大先達としてその栄華を極めたが、国民が「パンと見世物」を求め、「パンと見世物」しか求めなくなった時、滅亡への第1歩を踏み出したのではなかったか。
 言い換えるならば、真の民主主義国家においては、政治的無関心と言うのは、国民としての義務の放棄であると言える。
 それは、民主主義の自殺に他ならない。

1-2 国家における軍事の重大性

 あまり一般的ではないが、「政戦両略」という言葉がある。政略というのが謀略を含めた政治的手段、軍略というのが戦争を含めた軍事的手段で、「その両方に通じている」という意味でつかわれるようです。
 が、この二つを並列に置くのは誤りであろう。
 クラウゼビッツは戦争を「別の手段による政治」政治の延長であると喝破した。即ち、戦争を含む軍事的戦略の根幹には政治的目的・戦略があり、政治的戦略が軍事的戦略の上位であるということです。政略・戦略と言うならば、政略の方が上、ということです。(日本国憲法が「軍事による政治問題解決を禁じている」というのは、日本の特殊事情であって、一般論たりえません。「憲法9条による制約」なんてのは、世の大半の国にとっては全く関係のない話ですから。)

 さらには、国家主権の確保の一環として、国防があります。我が国の領土領海領空及びそれらに及ぼす主権を確固たるものにするために、通常は経済力、外交力ばかりでなく、軍事力を以てこれを確保します。

 つまり、国家の方針を決める上で、軍事というのは極めて重要なファクターである。

 民主主義国家の国民に、国家の方針を検討する義務がある以上、民主主義国家の国民には一定レベルの軍事知識が必要である。
 さもないと、国家の重大な方針である軍事方針・国防方針の選択を誤ってしまう。
 軍事方針・国防方針の誤りは、往々にして戦争・敗戦・亡国を意味するのであるから、事は重大である。


1-3 我が国における軍事知識の普及レベル

 で、翻って我が国を考えると…まず、少なくとも制度として民主主義国家である。(国名には民主主義をうたっていないけれど。国名に民主主義とうたっている国の方が非民主的なのは何故だろう。)従って、国防・軍事を含めた政治は、直接的であれ間接的であれ、国民の判断に依っている。
 クラスター爆弾禁止条約などという国防上重要な条約を締結する政府も、同条約批准の可否を判断する国会も、国民を代表してこれを行うのである。
 では、国民のレベルは如何ほどであろうか。
 さらには、我が国民の軍事知識レベルは、はたして適正だろうか。
 
 正直なところ、戦後平和教育の成果か、我が国民の軍事知識は極めて心もとないと私には思われる。
 だからこそ、湾岸戦争などという異常事態には、箸にも棒にもかからぬような有象無象の「軍事評論家」が突如大量発生したりするし、軍事知識と言うと「オタクの知識」扱いされることもしばしばである。
 

1-4 提言:軍事知識の普及を図るべきである

 一説によると、軍事あるいは武器武具に係ることを忌み嫌う日本人の思想は、死や穢れを忌み嫌うケガレ思想に根ざしていて、平安時代にまで遡るという。だとすると、我が国民が、真の民主主義国家の主であるために軍事知識の普及を図ろうというのは、なかなかの難事であると言わざるを得ない。
 確実なのは、義務教育課程に於いて基礎的な軍事知識(教科名は「軍事学」じゃ余りに厳めしいから「軍学」が良いかな。)を教育することだが、何しろ学校で「愛国心を教えよう」と言うだけであの大騒ぎだ。
 まあ、学校で学ぶ、教えるばかりが教育でも啓蒙でもないのであるから、ここはひとつ、搦め手から進めるのが上策か。即ち、学校教育と言った正式な場ではなく、テレビや映画、小説やゲームと言った媒体を通じて正しい軍事知識の普及を図る方法である。