私は、舐めたい女です。
もっと言えば、飲みたい女でもあります。
辿り着くところは、「全部知りたい」。

小さな子供はなんでも、興味を持ったものは口に入れてしまいますよね。
なぜ口に入れたがるのか、理由はいくつかあるようですが、「子供は口でものを見る（感じる）」と言われることがあります。

大人はそれまでに蓄えた知識や経験から目の前にあるものを捉え、判断します。
対してまっさらな子供は、それが何であるのかを判断する材料を持っていません。

そこで、口に入れる。
硬いのか柔らかいのか、苦いのか甘いのか、大きいのか小さいのか、口に入れたときの気分はどうか。

私は、男性経験が多くはありません。
そもそも、男性と接した経験自体が少ないと思います。
女性が多い環境で育ちましたし、男友達なんていたこともありません。
単身赴任の父とは離れて暮らしていたこともあり、身近にいた男性といえば祖父くらい。
だからこそ、物心がついたときから男性と男性の身体に興味がありました。

口に入れたい、味が知りたい。
そう思うようになったのはいつからか、覚えていません。
舐めたいと思っている、それは私にとって当たり前のことで、「舐めたいと思っている自分」に気付きもしませんでした。

「舐めるの、そんなに好き？」
社会人になってからできた恋人に聞かれたとき、ハッとしました。
どうしてそう思うの？と涎の糸を引かせながら聞き返したら、「嬉しそうに見えるから」と。

ほんの短い時間、考え込んでしまいました。
たしかに嬉しい…
でも、なぜ私は嬉しいのだろう？
舐めることのどこに喜びを感じているのだろう…？

なぜ舐めるのか、その理由は人によって違うと思います。
相手を喜ばせたいからかもしれませんし、“味”をきっかけに性的な興奮を高める気質の人もいますよね。

私は冒頭で書いたように、知りたいのだと思います。
舐めている時間は、相手の情報を集めている時間。
子供がそうするように、硬いのか柔らかいのか、苦いのか甘いのか、大きいのか小さいのか、口に入れたときの気分はどうか。

男性を知るために、本当はもっと良い方法があるのかもしれません。
たとえば会話を重ねるとか…
でも口下手な私にとってそれは難しく、ましてや好きな男性の前では緊張して言葉が出なくなってしまいます。
電気を消した部屋で体を舐めることが許されるのなら、自分のすべてを舌に集中させて味わいます。

私は部屋の掃除を趣味としていますが、目指しているのは「一度も掃除したことがない箇所はない状態」。
愛したものに対する私なりの姿勢なのでしょう。
男性も、舐めていないところがない程に全身を舐め尽くしたいです。

勢いよく、激しく、早く…それを求められればなるべく言う通りにしますが、自分からはしません。
ゆっくり見て、嗅いで、触って、舌を這わせてから、やっと口に含みます。

いつだって、男性を前にしたら気持ちは急いています。
でも好きだからこそ勿体なくて、勢いに任せて触ったりはできません。
相手を大切に想う気持ちよりも、自分が高まりたい気持ちが勝っていることもあります。

伝わっていると思います。
自分勝手な欲も、すっかり体の用意はできていることも、興奮して普段とは違う顔つきになっていることも…
だとしても、ゆっくりと味わい続けます。

口の中は性感帯だと思っています。
舐めるという行為は相手を攻めているように見えますが、私は舐めるほどに興奮して、力が抜けて立てなくなってしまったこともありました。

私がダメになるか相手がストップをかけるか、そのあとに待っているのはまったく別の快感です。
舐めて知る、口で高まる、それとは違う方向からやってくる気持ちよさ。

ちょっと趣向は変わりますが、お預けでも良いかもしれません。
舐めて興奮が高まり切った状態で突然の終わり。
「十分楽しんだでしょ。続きは次会ったときね」
なんて言われたら、物凄く悔しそうな目で睨みつけてしまう自信があります。

時間のない中で求め合うのも好きですが、もし許されるのならば、時間をかけてすべてを舐めとってしまいたいです。
贈り物もいらないし、束縛もしません。
求めることはひとつだけ、「隅々まで舐めさせてほしい」。
このセリフが私なりの愛の告白だと、過去の恋人たちは気付いていたのでしょうか。


文｜あさがお
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