落ちるか、捕るか。1番打者の打球判断力で明暗が分かれた。どちらも1回は無死一塁。2番には犠打ではなく打たせた。表の安部は二塁への低いライナー。落としても故意落球となっただろうから、併殺はない。ところが、走者の野間はショートバウンドを恐れたのか、中途半端な離塁の末、膝の高さで直接捕球した阿部からビシエドへの送球に戻れなかった。
裏の大島は右翼の前にポトリと落とした。好機が広がったのは、走者の平田の「落ちる」の判断が速かったからだ。二塁までなら誰でもいける。三塁を陥れたことで、ゴロの多いアルモンテに余裕が生まれた。
「しっかり判断できたかなと思います。一つ先にいく走塁は大切にしているので。三塁にいけば打者が楽になるだけじゃなく、暴投やパスボールも気になって、バッテリーにプレッシャーをかけることもできますから」
2死走者なしとなった広島に対し、中日は無死一、三塁。ここから連続適時打が生まれ、薄氷の逃げ切りにつながった。
平田は右前打で口火を切ったが、2ストライクからの3球目を軽振した。カウント別打率は1割8分2厘(11打数2安打)。言うまでもなく、投手が絶対有利で打者は絶体絶命。打者は何とかボール球を見極めて、カウントを整えるのに精いっぱいの状況なのだから、平田の成績は驚くものではない。それでも僕がこのカウントになるたびに平田をずっと注目してきた。それは昨季の驚異の数字を知っているからだ。
「そんなに打っているとは知らなかったけど、秘訣(ひけつ)はないですから…。去年も今年も同じ。やはり追い込まれたら幅広く対応しようとは思っています」
打率3割7分1厘(35打数13安打)。この尋常ではない数字は、恐らく12球団トップだ。徳俵を踏んでからの強さは、果たしてシーズンをまたいでも継続されるのか。「ツーナッシングの平田」にご注目を-。