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【社説】

<’19参院選>9条改憲 戦後平和主義の岐路だ

 自民党が争点と位置付ける憲法改正にどう向き合うか。九条に自衛隊の存在を明記すれば、戦後日本の平和主義は変質する恐れがある。有権者は改憲の要・不要やその影響を熟考し、投票したい。

 九条改正を含む改憲四項目について、自民党が条文イメージをまとめた上で国政選挙に臨むのは初だ。党総裁の安倍晋三首相は九条への自衛隊明記を「防衛の根本」と明言。「自衛隊違憲論争に終止符を打つ」と意気込む。

 しかし、国民の間でそんな論争が起きているのだろうか。

 内閣府が昨年行った世論調査では、自衛隊に「良い印象を持っている」が約九割。共同通信社による直近の世論調査では、安倍政権下での改憲に「反対」が50%なのに対し「賛成」は35%にとどまる。国民の多くは、現状のままの自衛隊を受け入れている。

 安倍氏は自ら「二〇二〇年の新憲法施行」を表明して、自己目的化しているだけではないか。

 安倍政権では、現行憲法の下でも集団的自衛権の行使容認、安全保障関連法制定で自衛隊による米軍の後方支援が地理的制限なく可能になった。巨額な米国製装備の導入や護衛艦の事実上の空母化など、自衛隊と米軍との一体化や専守防衛からの逸脱も進む状況だ。

 この上、憲法に自衛隊の存在を明記するとどうなるか。

 自民党案では、九条には国と国民を守るため「必要な自衛の措置をとる」として「自衛隊を保持する」との条文を加える。「自衛の措置」の明文化は、集団的自衛権の行使を正式に認めるとも解釈できる。違憲の疑いがある安保法を合憲化し、自衛隊の活動を無制限に拡大する危うさをはらむ。

 現行の一、二項は残すとしても、戦力不保持、交戦権否認という平和憲法の土台は大きく揺らぐことになろう。

 公明党は九条改正について「慎重に議論」とあいまいだ。一様に改憲勢力とみなされていいのか、態度を明確にすべきではないか。

 日本維新の会を除く主要野党四党は、九条改正に明確に反対している。自民党改憲案の問題点をより分かりやすく訴えかけてほしい。

 自民党が参院で改憲の国会発議に必要な勢力を確保するには、公明、維新を含め改選百二十四議席中八十五議席が必要となる。

 「高いハードル」ではあるが、それを越える議席を改憲派に与えるか否かは有権者の判断次第だ。

 

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