Caris

故に、学校で「ガンダムが好き」と周りの友達に言うと、笑われ、馬鹿にされます。 〝ガンダムが好き〟というレッテルは、若者の間ではマイナスイメージです。 そして自分も、以前は同じように思っていました。

しかし中学生になったある日、自分は深夜に放送されていた〝Gのレコンギスタ〟というガンダムのアニメを偶然見ました。 話の内容はさっぱり分かりませんでしたが、何故か惹かれてしまったのです。 今思えばそれは、巧みな映像表現はもちろんの事、その作品の中に〝夢があった〟からこそだと思います。

それから数日後、初代の機動戦士ガンダムを見ました。 そこで自分は、凄まじい衝撃を受けたのです。 てっきり自分は、ガンダムという作品が、正義のヒーローである主人公が巨大ロボットのガンダムに乗って、悪役のジオンをぼこぼこにするだけの幼稚なアニメだと思っていました。 ですが、違いました。

ガンダムには、絶対的な正義なぞ存在していませんでした。 結論から言うと、面白かったのです。 アニメと言えば、子供から見ても下らなくつまらないと思う物、というイメージがありました。 だからこそ、ガンダムを見て激しい衝撃を受けました。 これは大人が見てもハマるな、と一人納得しました。

高校生になる頃には、すっかりガンダムに魅入った人間の一人となっていました。 故に学校で「ガンダムが好き」と言ってしまったのです。 結果はもちろん、馬鹿にされました。 〝ガンダムは幼稚で、大人が集まる気持ち悪いアニメ〟という認識が若者にはあるからです。

しかし自分は、実際に見て、そうでは無い事を知りました。 「見れば分かるのに！見れば！」と心の中で歯噛みしました。 それでもやはり、世間に行き渡った〝ガンダム〟の印象に染まった同級生たちからは、理解を得られませんでした。

それなのにも関わらず、萌えアニメなどは理解を得られていました。 ロボットアニメより、下らない萌えアニメ（全てがそうだとは言いません）が上に見られているのです。 同学年三百人以上の中で、萌えアニメが好きという人はかなりの数いるのに、ガンダムを見た事がある人は自分を含めて四人ほどでした

世の中に、先入観なしで物事を判断できる人は、一体どれくらいいるでしょうか。 ガンダムの持つ印象だけで、見もせずに避けてしまう若者は、きっと大勢いるはずです。 それがきっと、ガンダムを生み出した富野由悠季さんの作品が、ジブリ並みに社会から評価されない要因なのではないでしょうか。

富野由悠季さんのアニメ作品、本当にすごいんですよ！ 社会性のあるメッセージは、見た人の心を強くえぐります。画面を目一杯使う迫力の映像演出は、他に類を見ず、度肝を抜かれます。見ただけで、鳥肌が立ちます。 その他にも、言葉で言い表せない多くの凄い事が、盛りだくさんに詰まっているのです。

昨今、すっかりアニメは〝大人の物〟として定着してしまいました。 正直言って、吐き気がします。 今の大半のアニメは、夢の欠片すらも無く、大人の汚い性欲などの願望にまみれた、とても見るに堪えない物たちです。

そんなアニメばかりが蔓延して、売れてしまうのだから、すっかり子供の為のアニメは衰退します。 そして、夢や希望（＝面白いこと）を享受したい子供たちは、結果的に夢の欠片もないスマホを見ざるを得なくなり、やがて考えるという事をしなくなってしまっています。（これはもちろん大人もですが）

同じことが、ガンダムにも言えます。 大人が、現実で希望を見出せないからと言って、いつまでも自分の子供時代を懐かしむ。 その中でも、子供時代でガンダムに夢中になった人たちは、「また当時の感動を思い出したい」と思うばかりに、いつまでもガンダムから離れられない。

それが悪い事だとは言いません。それだけ魅力的なのですから。 しかし、大人がガンダムにいつまでも執着する事によって、〝ガンダムに込められたメッセージ〟を享受すべき子供たちに届かなくなるのです。 楽しいからガンダムを手放さない。子供に譲ってやらない。 それは大人のわがままだと思うのです

結果的に、夢の欠片も含まれていない初代ガンダムの模造品が複数生まれる。 子供向けに作ったとしても、〝子供向け〟故に幼稚にした、ガンダムという名だけを冠しただけの夢の無い作品が生まれる。 その子供向けの作品でさえも大人たちが寄って集るのだから、ますます子供たちが寄り付かない。

四十年前、「子供に見て欲しい」という想いで、富野監督を始めとする人たちが『機動戦士ガンダム』という一つの作品を世に送り出したのだと思います。 そして、その願いは成就し、多くの子供たちの心を魅了しました。

しかし、いくらヒットしようと、今日の今日まで富野監督の想いは変わらなかったのでしょう。 「子供に見て欲しい」という昔の想いそのままに、数年前、富野監督は『Gのレコンギスタ』という作品を世に送り出したと思うのです。

しかし、今度はその願いが成就する事はありませんでした。 何故か。 四十年前の子供時代に魅了された大人たちが、今尚ガンダムに居座っているからです。 皮肉にも、過去に富野監督が魅了した子供たちが大人になり、尚も執着し続けた末に生み出されたイメージが、現在の富野監督の邪魔をしているのです

それが、Gレコの待遇には良く現れていると思います。 「ガンダムなんて、大人しか見ないよ」と判断され、子供向けのアニメが深夜放送になる。 それでも子供に見て欲しいが為に劇場版を作っても、「大人しか見ないから売れない」と判断され、ここ最近のようにろくな宣伝もされず、ないがしろに扱われる

ここまで読んでくださった物好きな方、今一度、良く考えてみてください。 本当に、このままで良いのでしょうか。   このまま〝劇場版Gのレコンギスタ〟が公開されても、子供には届きません。

昔、ガンダムという作品から今の人生を豊かにしてもらった人々が、今の子供たちがそれらを享受する機会を奪ってしまっているのです。 こんなにも素晴らしいガンダムという体験を、今の子供たちは経験する事が出来ないのです。

これだけ勿体無い事って、そうそう無いと思います。 富野監督の作品には、今の子供たちに〝生きる夢と希望〟を与える事が十分に出来ると信じています。 「日本終わるんじゃないかなー」なんて言っている現代の枯れてる子供たちに、夢と希望で一泡吹かせてやりたいと思うのです。

自分はただ、富野監督の作品に夢と希望を与えられた一人の人間です。 だからこそ、〝劇場版Gのレコンギスタ〟には子供たちを含めた多くの方に見てもらいたい。そして、見た人全員に夢と希望と〝元気〟を与えて欲しい。（商業的にも成功して欲しい。）

そのために出来る事って、一体何なのでしょうか。   ……そう考えた末に出した自分なりの答えが、このツイートです。 非力な自分には、この程度しか出来ません。