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 この声を聞いてピンと来ない人はいないかもしれない。国民的人気アニメ「ドラえもん」のドラえもん役を務める声優・水田わさびさんは三重県伊賀市出身で、大の野球ファン。令和元年、101回目となる新たな時代を歩む高校球児たちにエールを送ってもらいました。

 ――中学、高校はソフトボール部でした。

 伊賀市出身なのに、広島県出身の父の影響で根っからのカープファン。中学ではソフトボール部に自然と入部しましたが、高校は厳しかった。というか顧問の世界史の先生がちょー怖かった。バント練習は決められた枠内に連続で成功させないと最初からやり直し。これだけで世界史が嫌いになったぐらい。でも、引退したときは大号泣したし、あれだけ嫌だった先生も好きだったと気づきました。部活ってそのときはしんどいのですが、なくなったらポッカリとなりました。

 ――野球部との関わりはありましたか。

 中高とも野球部とは同じグラウンドでした。こんな私でも時々スーパープレーをすることがあって、「すげー」とか歓声があがってめっちゃうれしかった。

 部活の中で一番遅くまで練習しているのはだいたい野球部。本人たちはどう思っているか分からないけれど、「まじめな人」だと思っています。高校に入ってからはあこがれは強くなりました。ソフト部内で「あの子、かっこいいね」とか。青春の1ページでございます。

 ――部活での経験は生きていますか。

 お芝居には「こうすれば正解」というのがない。同じせりふを繰り返しながら、「これだ」というのを探っていく根気のいる作業です。耐えながら頑張るというのは同じだと思います。稽古場ではいつも泣いていましたが、それでも休まなかった。

 ――2005年にドラえもん役を射止めました。

 突然だったのですが、楽しくて仕方がなかった。当時はまだアルバイトと掛け持ち。こんな恵まれたことはないって。本番の前日は不安です。そんな時は、「これだけリハーサルしたから大丈夫」と自分を励まします。

 ――高校野球の魅力は。

 難しすぎる……。強いて言うなら、良い意味で裏切られるドラマがある、ということでしょうか。夏は常に高校野球のチャンネルです。見ているといるんですよ、すごい選手。将来の球界を担うような選手を見つけられるように観戦しています。

 高校3年生の長女は野球部のマネジャーなので、高校野球は私の中で大ヒット中なんです。遠征になれば4時半に起きて弁当を作り、始発の駅に送り届ける。選手のお母さんだともっと大変。毎日汚れたユニホームを洗濯もありますよね。「支えられてなんぼやで。感謝せなあかんで」。母が言っていた言葉ですが、球児の方も大切にしてほしいです。

 ――いよいよ夏が始まります。球児にエールを。

 ベンチでもスタンドでも、高校3年の夏に参加しているだけで私はみなさんをたたえたいです。試合に出られずメガホンを持っての応援でも、ずっと野球を続けてきた証し。いつか大きな自信になるはずです。(聞き手・村井隼人)

     ◇

 みずた・わさび 声優、ナレーター、舞台俳優。青二プロダクション所属。8月4日生まれの三重県伊賀市出身。名張桔梗丘高校(2018年3月に閉校)卒業後に上京し、「劇団すごろく」に入団。2005年、アニメ「ドラえもん」の声優陣が一新され、大山のぶ代さんに代わってドラえもん役を務める。声優の交代は26年ぶりだった。ドラえもんの他、「忍たま乱太郎」「あたしンち」「ヒカルの碁」などのアニメ作品でも主要キャラクターの声を担当。中学と高校はソフトボール部に所属し、中学では外野手、高校は内野手。趣味はプロ野球観戦で広島カープの大ファン。高校生と小学生の娘を持つ。