マリリン・マンソンの"Antichrist Superstar(アンチクライスト・スーパースター)"を和訳してみました。同名のアルバムの中の一曲。題名はロックミュージカル"ジーザスクライスト・スーパースター"のもじり。
訳はともかく解釈が難解なのですが、
まず、この歌は誰が誰に向けて歌っているのか?
この歌詞の中のYou(お前)は、キリストのことともとれるが、むしろキリスト教会、あるいはキリスト教信者に向けて歌ったものである。
そしてI(俺)はAntichrist Superstar(アンチキリスト)である。
詳しい解説(注釈)は訳の下の方に。
You built me up with your wishing hell*
I didn't have to sell you**
You threw your money in the pissing well***
You do just what they tell you
お前の「願い地獄」のおかげで俺はのし上がった
お前を売る必要はなかったな
お前は持ち金を全部小便井戸に投げ込んじまった
お前にできるのは奴らの言いなりに動くことだけさ
Repent*4, that's what I'm talking about
I shed the skin to feed the fake*5
Repent, that's what I'm talking about
Whose mistake am I anyway?*6
悔い改めよ それが俺の言いたいことだ
俺は自分を偽るために皮まで剥いだんだぜ
悔い改めよ それが俺の言いたいことだ
それはそうと、俺は誰の失敗作なんだろうな?
Cut the head off
Grows back hard
I am the Hydra
Now you'll see your star*7
頭を切り落としてみろよ
またすぐに生えてくる
俺はヒドラ
さあ、お前のスターの姿が見えてくるだろう
Prick your finger it is done
The moon has now eclipsed the sun
Angel has spread it's wings
The time has come for bitter things*8
指を針で刺してみろよ、賽は投げられた
今や月は太陽を覆い隠した
天使は羽を広げてる
苦難の時が始まったんだよ
Prick your finger it is done
The moon has now eclipsed the sun
Angel has spread it's wings
The time has come for bitter things
指を針で刺してみろよ、賽は投げられた
今や月は太陽を覆い隠した
天使は羽を広げてる
苦難の時が始まったんだよ
Repent, that's what he's talking about
I shed the skin to feed the fake
Repent, that's what he's talking about
Whose mistake am I anyway?
悔い改めよ それが俺の言いたいことだ
俺は自分を偽るために皮まで剥いだんだぜ
悔い改めよ それが俺の言いたいことだ
それはそうと、俺は誰の失敗作なんだろうな?
Cut the head off
Grows back hard
I am the Hydra
Now you'll see your star
頭を切り落としてみろよ
またすぐに生えてくる
俺はヒドラ
さあ、お前のスターの姿が見えてくるだろう
Time has come it is quite clear
Our Antichrist is almost here
Time has come it is quite clear
Our Antichrist is almost here
Time has come it is quite clear
Our Antichrist is almost here
時は来た、もう疑いはない
俺たちのアンチキリストがそこまで来ている
時は来た、もう疑いはない
俺たちのアンチキリストがそこまで来ている
時は来た、もう疑いはない
俺たちのアンチキリストがそこまで来ている
Cut the head off
Grows back hard
I am the Hydra
Now you'll see your star
When you are suffering know that I have betrayed you
When you are suffering know that I have betrayed you
When you are suffering know that I have betrayed you...
お前が傷を負ったとき、お前は俺の裏切りに気づくよ
お前が傷を負ったとき、お前は俺の裏切りに気づくよ
お前が傷を負ったとき、お前は俺の裏切りに気づくよ...
wishing hell*
おそらくwishing well(願い井戸)のもじり。願い井戸とは、コインを投げ込んで願い事を唱えると、それを叶えてくれるという言い伝えの井戸のこと。トレドの泉の井戸版みたいなやつかな。とすると、wishing hellとは、願いを叶えてくれる地獄であると考えられる。マンソンが言いたいのは、キリスト教(会)が、自分たちに逆らえば「地獄」に堕ちると人々を脅しながら人々をコントロールしてきた=あたかも井戸で願い事を叶えるように、「地獄」というタームを使って自分の望みを達成してきたということだと考えられる。
I didn't have to sell you**(お前を売る必要はなかったな)
キリストの弟子であり裏切り者であるユダのようにお前を売る必要はなかった、という意味。なぜなら、
You threw your money in the pissing well***(お前は持ち金を全部小便井戸=願い地獄に投げ込んじまった)キリスト教(会)は脅し文句を使い尽くし、そうして自滅の道を辿っているからである。
Repent*4(悔い改めよ)。
これが、Antichristが最も言いたいこと。Repentとは、聖書の中でキリストが多用するフレーズ。「悔い改めなさい、神の国(あるいは最後の審判)が近づいているから」というように使われる。すなわち、裁きの日が近づいているのだから、自分の行いを省み、改め、より善い人間になりなさいということである。しかしこの歌詞の中でのRepentは、もちろん逆説的なものである。Antichristが悔い改めよと迫るのは、いわゆる悪人達/不信心者に対してではない。「地獄」や「神の罰」を脅しに使いながら、人々を思い通りに動かしてきたキリスト教会であり、偽善的キリスト教信者達に対してである。お前達は自分が善だと言い、それを人々に押し付け、逆らうものを虐げてきたが、本当にお前達が正しいといえるのか、真に悔い改めるべきはお前達ではないのかという問いかけである。
I shed the skin to feed the fake*5(俺は自分を偽るために皮まで剥いだんだぜ)
つまり偽りの自分=キリスト教会に迎合し、善を装うために大変な犠牲を払った=苦痛を味わったということ。
Whose mistake am I anyway?*6(俺は誰の失敗作なんだろうな?)
もちろん創造主は神だけであるから、俺(Antichrist)もまた神の創造物である。しかし神が失敗するはずはない。神は完全な存在であり、神に失敗はあり得ないのである。キリスト教の立場からすれば。お前達の主張が正しいのであれば、俺は神の失敗作=悪などではない。Antichristは悪ではない。とAntichristは主張するのである。
Cut the head off/Grows back hard/I am the Hydra/Now you'll see your star*7(頭を切り落としてみろよ/またすぐに生えてくる/俺はヒドラ/さあ、お前のスターの姿が見えてくるだろう)
ヒドラはクラゲみたいな骨のない生き物で、再生能力が半端ない奴である。つまり、一部を切り落としてもすぐにそこから新しい触手が生えてくる。Antichristはそういうヒドラみたいな奴なのである。キリスト教会がいかに抑圧しても根絶してもすぐに生まれてくる何かである。
The time...for bitter things*8(苦難の時)おそらく王国の到来/審判の日/最後の日/アルマゲドンのこと。聖書上、この時に審判を行ったり王国を支配したりするのはキリストなのだが、ここではAntichristがその役目を担うのである。だからキリスト教会やキリスト教信者達は自らの行いを悔い改めなければならないというわけ。
結局(ヒドラのような)Antichristの正体とは何なのか?それは厳格なキリスト教信者である両親や教師に苦しめられてきたというマンソン自身のことであり、同じように信仰に虐げられ、そこから救いを得ることができなかった他の全ての人間(の思い)である。キリスト教の外まで敷衍して言えば、規律からはみ出し悪人/不良とレッテルを貼られた人々のことである。キリスト教世界が存続する限り、そういう存在は絶え間なく生まれ続けるのである。当然のことながら。そして、Antichristが主張するように、Antichristは悪=神の失敗作ではない。
したがってこの歌は、悪を礼賛するものではない。もっと言えばキリストの教え自体に対する批判とも違う。ごく自然なキリスト教会批判である。キリスト教会の提示する一義的な善/正義への批判である。ここらへんを捉え損ねると、マリリン・マンソン=悪の権化みたいな風に理解しちゃうのである。注意注意。
でもMVのいかずちマークとかナチスのハーケンクロイツのパクリじゃん、演説なんかもヒトラーのマネしてるじゃん、やっぱ悪いじゃん、と思うでしょうか。しかしそう考えるのも違うと思うのである。確かにヒトラーの思想と行動は悪であった。でもハーケンクロイツはただのマークである。ヒトラーのマニックな演説の仕方も、それは1つの演説手法に過ぎない。それ自体は全然悪くないのである。そういう形に過ぎないものに惑わされて本質を見失ってはならない。悪にしろ善にしろ。ヒトラーやナチ(=悪のイメージ)に身を固めた俺の本質を見抜いてみろ!とマンソン氏は言っているのであろう。
・・・まあナチのショッキングなイメージを利用して売ったっていうのは否めないかもしれないけど。
訳はともかく解釈が難解なのですが、
まず、この歌は誰が誰に向けて歌っているのか?
この歌詞の中のYou(お前)は、キリストのことともとれるが、むしろキリスト教会、あるいはキリスト教信者に向けて歌ったものである。
そしてI(俺)はAntichrist Superstar(アンチキリスト)である。
詳しい解説(注釈)は訳の下の方に。
You built me up with your wishing hell*
I didn't have to sell you**
You threw your money in the pissing well***
You do just what they tell you
お前の「願い地獄」のおかげで俺はのし上がった
お前を売る必要はなかったな
お前は持ち金を全部小便井戸に投げ込んじまった
お前にできるのは奴らの言いなりに動くことだけさ
Repent*4, that's what I'm talking about
I shed the skin to feed the fake*5
Repent, that's what I'm talking about
Whose mistake am I anyway?*6
悔い改めよ それが俺の言いたいことだ
俺は自分を偽るために皮まで剥いだんだぜ
悔い改めよ それが俺の言いたいことだ
それはそうと、俺は誰の失敗作なんだろうな?
Cut the head off
Grows back hard
I am the Hydra
Now you'll see your star*7
頭を切り落としてみろよ
またすぐに生えてくる
俺はヒドラ
さあ、お前のスターの姿が見えてくるだろう
Prick your finger it is done
The moon has now eclipsed the sun
Angel has spread it's wings
The time has come for bitter things*8
指を針で刺してみろよ、賽は投げられた
今や月は太陽を覆い隠した
天使は羽を広げてる
苦難の時が始まったんだよ
Prick your finger it is done
The moon has now eclipsed the sun
Angel has spread it's wings
The time has come for bitter things
指を針で刺してみろよ、賽は投げられた
今や月は太陽を覆い隠した
天使は羽を広げてる
苦難の時が始まったんだよ
Repent, that's what he's talking about
I shed the skin to feed the fake
Repent, that's what he's talking about
Whose mistake am I anyway?
悔い改めよ それが俺の言いたいことだ
俺は自分を偽るために皮まで剥いだんだぜ
悔い改めよ それが俺の言いたいことだ
それはそうと、俺は誰の失敗作なんだろうな?
Cut the head off
Grows back hard
I am the Hydra
Now you'll see your star
頭を切り落としてみろよ
またすぐに生えてくる
俺はヒドラ
さあ、お前のスターの姿が見えてくるだろう
Time has come it is quite clear
Our Antichrist is almost here
Time has come it is quite clear
Our Antichrist is almost here
Time has come it is quite clear
Our Antichrist is almost here
時は来た、もう疑いはない
俺たちのアンチキリストがそこまで来ている
時は来た、もう疑いはない
俺たちのアンチキリストがそこまで来ている
時は来た、もう疑いはない
俺たちのアンチキリストがそこまで来ている
Cut the head off
Grows back hard
I am the Hydra
Now you'll see your star
When you are suffering know that I have betrayed you
When you are suffering know that I have betrayed you
When you are suffering know that I have betrayed you...
お前が傷を負ったとき、お前は俺の裏切りに気づくよ
お前が傷を負ったとき、お前は俺の裏切りに気づくよ
お前が傷を負ったとき、お前は俺の裏切りに気づくよ...
wishing hell*
おそらくwishing well(願い井戸)のもじり。願い井戸とは、コインを投げ込んで願い事を唱えると、それを叶えてくれるという言い伝えの井戸のこと。トレドの泉の井戸版みたいなやつかな。とすると、wishing hellとは、願いを叶えてくれる地獄であると考えられる。マンソンが言いたいのは、キリスト教(会)が、自分たちに逆らえば「地獄」に堕ちると人々を脅しながら人々をコントロールしてきた=あたかも井戸で願い事を叶えるように、「地獄」というタームを使って自分の望みを達成してきたということだと考えられる。
I didn't have to sell you**(お前を売る必要はなかったな)
キリストの弟子であり裏切り者であるユダのようにお前を売る必要はなかった、という意味。なぜなら、
You threw your money in the pissing well***(お前は持ち金を全部小便井戸=願い地獄に投げ込んじまった)キリスト教(会)は脅し文句を使い尽くし、そうして自滅の道を辿っているからである。
Repent*4(悔い改めよ)。
これが、Antichristが最も言いたいこと。Repentとは、聖書の中でキリストが多用するフレーズ。「悔い改めなさい、神の国(あるいは最後の審判)が近づいているから」というように使われる。すなわち、裁きの日が近づいているのだから、自分の行いを省み、改め、より善い人間になりなさいということである。しかしこの歌詞の中でのRepentは、もちろん逆説的なものである。Antichristが悔い改めよと迫るのは、いわゆる悪人達/不信心者に対してではない。「地獄」や「神の罰」を脅しに使いながら、人々を思い通りに動かしてきたキリスト教会であり、偽善的キリスト教信者達に対してである。お前達は自分が善だと言い、それを人々に押し付け、逆らうものを虐げてきたが、本当にお前達が正しいといえるのか、真に悔い改めるべきはお前達ではないのかという問いかけである。
I shed the skin to feed the fake*5(俺は自分を偽るために皮まで剥いだんだぜ)
つまり偽りの自分=キリスト教会に迎合し、善を装うために大変な犠牲を払った=苦痛を味わったということ。
Whose mistake am I anyway?*6(俺は誰の失敗作なんだろうな?)
もちろん創造主は神だけであるから、俺(Antichrist)もまた神の創造物である。しかし神が失敗するはずはない。神は完全な存在であり、神に失敗はあり得ないのである。キリスト教の立場からすれば。お前達の主張が正しいのであれば、俺は神の失敗作=悪などではない。Antichristは悪ではない。とAntichristは主張するのである。
Cut the head off/Grows back hard/I am the Hydra/Now you'll see your star*7(頭を切り落としてみろよ/またすぐに生えてくる/俺はヒドラ/さあ、お前のスターの姿が見えてくるだろう)
ヒドラはクラゲみたいな骨のない生き物で、再生能力が半端ない奴である。つまり、一部を切り落としてもすぐにそこから新しい触手が生えてくる。Antichristはそういうヒドラみたいな奴なのである。キリスト教会がいかに抑圧しても根絶してもすぐに生まれてくる何かである。
The time...for bitter things*8(苦難の時)おそらく王国の到来/審判の日/最後の日/アルマゲドンのこと。聖書上、この時に審判を行ったり王国を支配したりするのはキリストなのだが、ここではAntichristがその役目を担うのである。だからキリスト教会やキリスト教信者達は自らの行いを悔い改めなければならないというわけ。
結局(ヒドラのような)Antichristの正体とは何なのか?それは厳格なキリスト教信者である両親や教師に苦しめられてきたというマンソン自身のことであり、同じように信仰に虐げられ、そこから救いを得ることができなかった他の全ての人間(の思い)である。キリスト教の外まで敷衍して言えば、規律からはみ出し悪人/不良とレッテルを貼られた人々のことである。キリスト教世界が存続する限り、そういう存在は絶え間なく生まれ続けるのである。当然のことながら。そして、Antichristが主張するように、Antichristは悪=神の失敗作ではない。
したがってこの歌は、悪を礼賛するものではない。もっと言えばキリストの教え自体に対する批判とも違う。ごく自然なキリスト教会批判である。キリスト教会の提示する一義的な善/正義への批判である。ここらへんを捉え損ねると、マリリン・マンソン=悪の権化みたいな風に理解しちゃうのである。注意注意。
でもMVのいかずちマークとかナチスのハーケンクロイツのパクリじゃん、演説なんかもヒトラーのマネしてるじゃん、やっぱ悪いじゃん、と思うでしょうか。しかしそう考えるのも違うと思うのである。確かにヒトラーの思想と行動は悪であった。でもハーケンクロイツはただのマークである。ヒトラーのマニックな演説の仕方も、それは1つの演説手法に過ぎない。それ自体は全然悪くないのである。そういう形に過ぎないものに惑わされて本質を見失ってはならない。悪にしろ善にしろ。ヒトラーやナチ(=悪のイメージ)に身を固めた俺の本質を見抜いてみろ!とマンソン氏は言っているのであろう。
・・・まあナチのショッキングなイメージを利用して売ったっていうのは否めないかもしれないけど。
コメント
コメント一覧 (4)
コメントどうもありがとうございます。
マリリン・マンソンの歌詞は本当に詰め込まれた意味合いが多いですね。
なかなかさらっとは聞き流せない歌です。
とても為に成りました。有難う御座いました。
公式訳はwishing hellの意味を全く理解してませんしRepentも後悔と訳して言いて無茶苦茶ですよね…
ただマリリンマンソンは"キリスト教はファシズム"という風刺でナチスを使っているのであって、ショッキングに記憶に残ってもらうようにしているわけではないのですが…
そもそもユダヤ人差別はキリスト教原理主義的価値観に基づいたものですし(詳しくは聖書を読めばわかりますが)
その部分だけ少し気になったのでコメントさせて頂きましたが素晴らしいとしか言いようがない考察です!