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【ゴルフ】

石川遼、2年11カ月ぶりV 最大7打差追い付きPOで奇跡イーグル

2019年7月8日 紙面から

プレーオフでウイニングパットを沈め大喜びの石川遼。通算13アンダーで優勝=いぶすきGCで

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◇日本プロ選手権<最終日>

 ▽7日、鹿児島県指宿市、いぶすきGC(7150ヤード、パー70)▽晴れ、29・5度、東南東2・2メートル▽賞金総額1億5000万円、優勝3000万円▽73選手▽観衆4282人

 石川遼(27)=カシオ=が2016年8月以来、2年11カ月ぶりのツアー通算15勝目を国内最古のメジャー戦で挙げた。変則日程で最終日に36ホールの決勝ラウンド(R)を一気に行い、最大で7打差をつけられる大ピンチをはね返して通算13アンダーで終了。韓国の黄重坤(ハン・ジュンゴン)とのプレーオフ1ホール目でイーグルを奪い、奇跡的な大逆転優勝で令和最初のプロゴルファー日本一に輝いた。

◆黄重坤ダボで流れ

 3年待った織り姫に、石川はついにめぐり合った。最後のパットはピン左4メートル。読みにくいラインだったが「最後にカップ1~2個分、必ず右に曲がる」と直感した。強めに打ち出した球はイメージ通りの軌跡を描き、真ん中から沈んだ。「こんなウイニングパットを打てるなんて信じられない。今までの優勝で一番興奮した」。勝利との間に横たわっていた天の川を渡りきり、右手を突き上げて雄たけびを上げた。

 最終日を首位で迎えたが、最初の第3Rの前半はアイアンショットを引っかけるミスを連発。5、6番を連続ダブルボギーとした。同組で回る黄重坤は、ゆるみのないスイングで着実にスコアを伸ばす。最終Rの15番を終えた段階で3打差まで詰めたが「残りは3ホールしかない」と、あきらめの気持ちがよぎった。

 ところが、ここから信じられない出来事が続いた。16番をバーディーとして2打差。17番パー3では黄重坤の第1打がグリーンから下り斜面に乗って池に転がり落ち、ダブルボギーになった。これで漂っていた「石川惜敗」の空気が一変。2人が首位に並び、18番を舞台にするプレーオフとなった。

◆カート道ではねた

 第1打。石川は「同じ場所から第2打を打てば、ショットの精度の高いジュンゴンにかなわない」と、OBのある右側からドライバーでフックさせて距離を稼ごうとした。だが打球は思ったほどには曲がらず、そのままラフへ…と思った瞬間、大きな音を立ててはずんだ。

 アスファルトのカート道に当たり、しかも左へはね、狙いより30ヤード先、黄重坤よりは50ヤードも先のフェアウエーに出た。残り200ヤードの第2打は5番アイアンで打つことができた。まるでひこ星に会いたい織り姫がいたずらをしたような、奇跡のドライバーショットだった。

 大会前から九州南部に豪雨が降り続いた。会場のある指宿市も避難勧告が出され、石川は選手会長として中止を主催者に進言した。決行が決まったときは「いつも以上に盛り上げないと」と踏ん張り、初日から首位に立った。大会は3日間に短縮され、観戦に来たくても来られない人もいた。それでも、4月のマスターズでのタイガー・ウッズ(米国)に続く復活優勝は、多くの人の心に響いたはずだ。

 この優勝で5年シードを獲得し、海外に再挑戦しやすい状況になった。ただ、本人は「日本で一番の富士山に登るのも素晴らしいこと。順番に山を制覇して、エベレストの頂上を目指す」という。すべての優勝セレモニーや取材を終えたとき、空には七夕の星が輝いていた。 (大西洋和)

 

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