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(なつ)短編映画ですか?
(仲)なっちゃんにも 思い切って原画をやらせたいと思ってるんだ。3人で話し合って 何か企画を考えてよ。(3人)はい。
なつが初めて原画を任された そのころ行方の知れなかった妹 千遥が柴田家に現れました。
今すぐ行くから…。
どうしても 千遥に会いたい…。
しかし 千遥は なつと咲太郎を待たずに去っていきました。
2人に宛てた手紙を残して…。
上手だね 千遥…。
(夕見子)ただいま。夕見!
(剛男)おお!(夕見子)何さ この家は。
女は働いて飯を作り 男は座って飯を待つ。
相変わらず 遅れてますもね。
夕見子 お帰り!ただいま。
北海道大学に通う夕見子ちゃんが帰ってきました。
なつとは 実に3年ぶりの再会でした。
夕見。うん?私のお兄ちゃん。
(咲太郎)あ… 咲太郎です。
お~! あの泥棒の咲太郎かい!
えっ?
(照男)夕見子 失礼だべ!
無実だったからね あれは。
(富士子)ちょっと 夕見子。うん?
あんた 何で来たの?
何でって 母さんが電話してきたからしょ。
そうでなくて帯広から どうやって来たの?
ああ…。そうだ 連絡よこせば 迎えに行ったのに。
大丈夫 車で来たから。車?
うん すぐそこまで送ってもらったから。
(富士子)誰に?(夕見子)大学の友達。ドライブのついでだったからね。
(剛男)男の人かい?まあ… 性別で言ったら 男でないのかい。
(剛男)本当なのかい?(富士子)どういうつきあいなの?
そんなことより なつ千遥ちゃんは どうしたの?
えっ?千遥ちゃんが ここに来たんでしょ?
今は… いない。
千遥は 自分の場所に帰ったわ。
♪~
♪「重い扉を押し開けたら暗い道が続いてて」
♪「めげずに歩いたその先に知らなかった世界」
♪「氷を散らす風すら味方にもできるんだなあ」
♪「切り取られることのない丸い大空の色を」
♪「優しいあの子にも教えたい」
♪「ルルル…」
♪「口にする度に泣けるほど憧れて砕かれて」
♪「消えかけた火を胸に抱きたどり着いたコタン」
千遥ちゃんって 年いくつだっけ?
今 18。18で結婚?
結婚するから もう なつにも咲太郎さんにも会えないっていうの?
それは しかたないしょ…。
(夕見子)しかたないって 何がさ?
大体 自分で望んでる結婚なの? それ。どういうこと?
周りが 勝手に望んでるだけで千遥ちゃんは しかたなく そういう流れに乗っかってるんじゃないかってことよ。
おい 勝手なこと言うなや。
なつを 不安にさせてどうすんだよ。
(明美)人の心を ひっかき回すな!
私は それが千遥の意志だって信じてるから。
18で結婚することが そもそも女の意志って言えんのかい?
18だったら 十分 お嫁に行く年だべさ。
それ! 母さん 今 つまんないこと言った。
はあ? つまんないこと!?
それは言っちゃいかんだろ 夕見子!
あ…。
いいですか 皆さん女が 子どもを産んだら母親になる。
これは 当たり前の話。
したけど その前に 誰かの妻になる。よそのうちの嫁になる。自分ではない ほかのものになる。そういう固定観念を生み出しているものを疑わなければ女は いつまでたっても自由には生きられないと私は言ってんのです。
俺は 砂良のこと俺のもんなんて思ってねえからな。
(砂良)えっ私は あんたのものじゃないんだ?
いや 俺のもんだ…。
どっち?
もう いいでしょや そったらことは。
ダメだ。 もっと普通を疑え なつ!
(富士子)いい加減にして 夕見子。
ハハハハ…。お兄ちゃん。
いや 面白いな。
なつは 本当に面白い家で育ったんだな。
そう? 普通の家族しょ。
いや 普通じゃないと思うぞ。
(夕見子)これを 千遥ちゃんが… へえ…。
さすが なつ姉ちゃんの妹だべさ。
絵がうまいっしょ。うん。
(明美)やっぱり 私とは大違いだわ。
そったら寂しいこと言わんでよ明美ちゃ~ん!
やめれ~!明美ちゃ~ん!
不思議だね…。
お父さんの手紙は知らないんでしょ?えっ?
ほら あんたが そこに貼ってた戦死したお父さんの手紙にあった絵さ。それを知らないのに 千遥ちゃんも同じことをしてたってことだべ?
お兄ちゃんも 東京で描いてたのさ家族の絵を。
咲太郎さんも?
お父さんのまねして…。
(夕見子)へえ…。
何だか あんたが絵描きになるのも必然だったんだね。
随分 幼稚なの読んでんだ。えっ?
これ。
あっ それは 仕事のために読んでんの。仕事?
漫画映画の原作になるものを探してるんだわ。
えっ あんた もう そんな仕事までさしてもらってんの?
短編映画だけどね…。
若手の育成のために 企画から作らせてもらえることになったのさ。
へえ…。で 何の話にするの?
それが決まんなくて…。
そういえば…あんたら きょうだいって「ヘンゼルとグレーテル」みたいだもね。
「ヘンゼルとグレーテル」?
(夕見子)そう。 兄と妹の話だよね これ。
まま母に捨てられたきょうだいが森の中で お菓子の家を見つける話だよね。
うん そう。ほら 深い森の中に連れていかれる時兄は 帰り道が分かるようにパンを ちぎって落としていくでしょ?
うん。あんたら きょうだいにとってそのパンが 絵なんだわ。
絵?
パンを落とす代わりに 絵を描いてんの。
それが 自分の家に帰るための道しるべなんだわ!だけど そのパンは鳥に食べられてしまってきょうだいは 帰り道を見失ってしまう。その鳥は…そう 時の流れという名の鳥なんだわ!時は流れて 子どもは いつしか子どもじゃなくなっていく…。
ねえ 何言ってんの?
ねえ ぴったりっしょ!なつがやるなら これしかないべ!
♪~
「ヘンゼルとグレーテル」…?
咲太郎君… 君らをこんな運命にしてしまったのは私かもしれんな…。
そうですよ。
そだな…。
だから 俺は 心から感謝してます。
ありがとう…。
さあ 飲んで。ああ すいません…。
(泰樹)咲太郎。はい…。
お前は ここまで よくやったな。
えっ?(泰樹)よく頑張って生きてきた…。
この先も 胸張って生きりゃいい。
♪~
(悠吉)なっちゃん 腕は なまってないな。
うん… これで また当分できなくなるからしっかり この手に残しておきたくて。
本当に もう 今日戻っちゃうんかい?
これ以上いたら東京に戻りたくなくなっちゃうでしょや。
(菊介)だったら戻るな。このまま ここさ いろ!
漫画映画を作りたければここで作ればいいべさ!
この菊介さんが手伝ってやっから。
お前に 何ができんだ?
なっちゃんの…肩もみぐらいはできるべよ。
ありがとう 菊介さん。
それ聞いて やっと戻る気になれたわ。
いや そりゃないべ なっちゃん!
(笑い声)
♪~
はい 出来た。
ありがとう なつ姉ちゃん。うん。 行ってらっしゃい。
元気でね…。
なつ姉ちゃんも。うん。
行ってきます。行ってらっしゃい。
行ってきます。気を付けてね。
体 気ぃ付けてね。
うん… みんなも。
それじゃ また。
今度は もっと ゆっくりね。
砂良さん 照男兄ちゃん赤ちゃん 楽しみにしてる。
産まれたら会いに来て。
咲太郎兄さんも また来て下さい。
そっちの兄さんも 東京に また。
皆さん 俺もですが…千遥が 本当にお世話になりました。
千遥の服は ここに置いとくから。
分かった。
いつか 取りに来てくれるといいね。
うん。
それじゃ 夕見 またね。
そのうち 東京にも連絡すると思うわ。
必ずよ。(夕見子)うん。
じいちゃんも また。うん。
こっちのことは心配すんな。
咲太郎。はい。
しっかりしろや。
はい。
最後に怒られた…。(笑い声)
じゃ 行こうか。うん。
行ってきます。
(一同)行ってらっしゃい。
・(車のエンジン音)
こうしてなつの短い里帰りが終わりました。
♪~
なつよ 千遥の目にも きっとこの風景は 焼き付いているだろう。
♪~