コラム

[野分 大阪発・論点] 籠池夫妻法廷ドラマ 刑事告訴ありきか?

2019年7月4日

 籠池夫妻の法廷劇場、この日も熱いバトルが展開した。

 2日の法廷は、森友学園が運営する幼稚園への補助金に審理が移った。証人は補助金を担当する大阪府私学課の職員だ。一連の問題が発覚して間もないおととし3月。大阪府が学園に立ち入り調査した際、この職員も加わっていた。そこに籠池泰典元理事長の弁護人の水谷恭史弁護士も立ち会っていた。現場にいた人ならではの質問だ。

 「背表紙に『刑事告訴』と書かれたファイルを持った職員が立ち入り調査に加わっていました。同じ頃、松井大阪府知事(当時)が刑事告訴の可能性について発言しています」

 刑事告訴ありきだったのではないかという指摘に、職員は「私は知らない」という答えに終始した。

 次いで水谷弁護士は、森友学園以外にも同じように補助金の返還を求められた学校法人が複数あること、中には車の私的利用や自宅の家電の購入など補助金の私的流用で措置命令を受けたところもあると指摘し、刑事告訴されているかただした。職員は、刑事告訴は森友学園だけだと認めた。

 ここで検察側が反撃に出た。

 主任の堀木博司検事「補助金申請には教員の私学共済への加入が必要ですが、不正をした複数法人の中で、私学共済に入っているように偽って書類を偽造していた法人は森友学園以外にありますか?」

 職員から「私の記憶ではない」という答えを引き出した。

 バトルはこれだけではない。水谷弁護士は、専任教員の数に応じて交付される「経常費補助金」は、保育園などとの兼任であっても1人は対象にできるという規定があると指摘。検察はこれを見落として不正額を過剰に見積もっているのではないかと指摘した。

 これに堀木検事「争点整理でここは争わないと言っていたのに、争うということなんですか?」

 水谷弁護士「われわれはこの件も詐欺罪ではなく(より罪の軽い)補助金適正化法違反に問われるべきだと言っています。不正受給の額は詐欺にあたるかどうかの点で重要です」

 堀木検事「争っているじゃないですか! 今の尋問、証拠排除を求める!」

 水谷弁護士「真実の発見に反する!」

 証拠として扱うかどうかは、後日裁判所が判断を示すことになった。検察は、弁護側が従来の主張を変えるなら新たな証人も必要だと主張。裁判の日程に影響する可能性も出てきた。

 終了後、籠池氏に感想を聞いた。「ぼくは不正があったことは認めているからね。明鏡止水ですよ。それにしても私学課の職員は、何年も前のことをよくあれだけ覚えているよね」

 検察と事前に何度も打ち合わせをしていることを皮肉った。(相沢冬樹)