コラム

[野分 大阪発・論点] 籠池夫妻法廷ドラマ 「異常だから」に「無礼千万」

2019年6月12日

 「異常とはどういうことや!」。弁護士の怒りの声が法廷に響いた。籠池夫妻の裁判は、いつ何時何が飛び出すか分からない。

 10日の公判で証人に呼ばれたのは、森友学園が開校を目指した小学校の建設を請け負った建設会社の社長。法廷で証言台に立ったところで被告席の方を振り向いた。そこでは籠池元理事長がじっと社長を見つめていた。目と目が合った。社長も見つめ返す。籠池氏いわく「この男、やる気やな、と思ったね」

 小学校の建設費は約14億円。だが鉄骨代金の見積もりに漏れがあって2億~3億円不足することが分かった。普通なら上乗せを施主にお願いするが、絶対無理だと思っていたという。どうして施主である籠池夫妻に話さなかったのか?

 浦功弁護士に問われた社長は一言、「施主が異常だからです」。すかさず浦弁護士が一喝、「異常とはどういうことや!」。裁判長「弁護人、ご注意を」。浦弁護士「侮辱ですよ!」。社長「聞かれたから答えただけです」…法廷に緊張感が走った。

 裁判の焦点の一つは、校舎建設に出る補助金の水増し申請が、籠池夫妻の指示かどうかだ。社長自身、詐欺容疑で検察の取り調べを受け不起訴になっている。社長は次のように証言した。

 ■工事費を水増しして22億円の契約書を作ることを、うちの営業担当者から聞いた。

 ■補助金や銀行融資のため、水増しした見積書を出すことは建設業界では珍しくないが、契約書まで水増しすることはない。

 ■「契約書までいらんやろ。見積書でいいやろ」と言っても「契約書がどうしても必要」と言う。設計会社の代表も「かなわんねん。よしなに」という感じだった。理事長に言われてるんだろうと思い、うその契約書を作ることを認めた。

 ■「偽物の契約書なんやから、はんこなんか“ドラえもん”のでもいいんちゃうか? 適当に押しとけや」と担当者に言った。

 社長は、籠池夫妻が補助金に執念を燃やしていたと強調したが、直接夫妻に話を聞いていないのではないかという弁護側の追及には「覚えていない」と繰り返した。

 法廷が終わった後、籠池氏に話を聞いた。

 「異常という発言、無礼千万やね。僕はオレとは言わないのにそんなふうに言っていたし。検察のストーリー通りに話していたけど、弁護士には『覚えていない』を連発したね」

 ここで一句。「我と彼 正邪まみえる 雲の峰」

 次の公判はきょう12日。建設会社の営業担当者が証言に立つ。注目の裁判はまだまだ続く。(相沢冬樹)

(随時掲載)