コラム

[野分 大阪発・論点] 籠池夫妻法廷ドラマ キャラ立ちしている当事者たち

2019年6月6日

 ドラマはキャラが立っていないと面白くないという。とすると籠池夫妻の裁判は、主役はもちろん検事も弁護士も実にキャラが立っている。

 例えば主任検事。2回目の公判で森友学園の籠池泰典元理事長から満面の笑みで笑いかけられると、腕組みをしたままニヤっと笑い返した。2人は旧知の間柄なのだ。だって主任の堀木博司検事は、籠池夫妻の自宅を家宅捜索し、逮捕から約40日間取り調べた元特捜検事だ。4月の人事で特捜部から公判部の特別公判(重要裁判を担当)に異動し、籠池裁判を2回目から担当することになった。

 一説には大阪地検トップの北川健太郎検事正の意向が働いたという。籠池氏の取り調べにあたったのは特捜のエース検事の証し。その投入は検察がいかにこの公判に力を入れているかを示す。検察内では「あいつにやらせるしかない」と評価は高い。顔つきも体格も取り調べもコワモテで知られるが、籠池氏はニヤっと笑い「堀木さんは結局、私をよう落とさなかった(供述させられなかった)からねえ」…かくて2人は再び相まみえた。

 笑いかけたことを籠池氏は「あれはほほ笑み外交。宮本武蔵の兵法で言う『頭を抑える』ということ」

 一方の堀木検事。私が話しかけると、じろっとこちらを見て「何もしゃべらんよ」と言いつつ、笑顔の応酬について尋ねると「見たままだから」…互いに役者やのう。

 対する籠池氏の主任弁護人、秋田真志弁護士は大阪で名うての刑事弁護士だ。大阪府私学課の職員が証言に立った際、森友学園の小学校認可への近畿財務局の関わりを追及した。すると堀木検事が立ち上がり、「異議あり! この事件にどこが関係ありますか?」。対する秋田弁護士は「近畿財務局がどう関わったのか聞くのは当然です」。そしてすかさず、「そんなに近畿財務局のこと聞かれるの嫌なんですかね?」

 キッツイ嫌みに法廷中がどよめいた。

 そして諄子夫人の主任弁護人、浦功弁護士は、秋田弁護士より18期先輩で、刑事司法に関する著作も数々ある。小学校建設の補助金審査の担当者に審査のあり方を追及。証人が不服そうに「私がいいかげんな審査をしたように聞こえますけど」と答えると、すかさず「いいかげんな審査したん違うの?」。またまた法廷がどよめいた。

 籠池夫妻、検事、弁護士、これだけキャラがそろえば面白くならないはずがない。法廷で籠池劇場の始まりだ。審理は10月まで続き、その後判決を迎える。その日まで私は“籠池夫妻の法廷ドラマ”を記事にしていく。

 (大阪日日新聞論説委員・記者 相沢冬樹)