【完結】鈴木さんに惚れました   作:あんころもっちもち
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47.断罪の瞬間

☆ナザリック第9階層にて

 

 

私が再び目を開けると、そこは見知らぬ場所だった。フカフカのベッドの上で寝かされていたようだ。レエブン侯の屋敷でも見たことが無い 豪華で落ち着いた雰囲気の室内だった。

 

 

「お加減はいかがですか、お嬢さん」

 

 

声がした方を見れば、全身鎧を身に纏った男がベッドの脇に立ち、私の様子を伺っているようだった。

 

 

「貴方は・・・」

 

「この姿では分かりませんね。私はパンドラズ・アクター以後お見知りおきを」

 

 

自己紹介をしながら、姿を変えたパンドラズ・アクターは、鈴木さんから聞いた通りの姿をしていた。黄色の軍服にのっぺりとした顔。

 

 

「あぁ、鈴木さんの作ったNPC・・・あ!!鈴木さ、モモンガさんは?!ココは何処?私は一体どうなって」

 

 

“何故ここに居るのか”とその答えに行き着いた時、私はいても立ってもいられず ベッドから身を起こした。治癒されているのか身体の痛みは 全く感じず、身体を確認すると肌触りの良い上質な服が着せられていた。戸惑う私を見て、パンドラズ・アクターが声をかけてきた。

 

 

「落ち着いて下さい、ツアレ様。貴方が気を失ってからまだ そう時間もたっておりませんよ」

 

「も、モモンガさんは!!?」

 

「我が創造主は、王国を落すべく行動しておられます。安心してください、貴方様をこんな目に合わせた奴らには 必ず報復します」

 

「私を モモンガさんの所へ連れて行って!!お願いします!!!」

 

 

朦朧としていた記憶では、あの出来事が夢だったような気がして怖くなった。何より・・・今すぐ会いに行かなくちゃいけないような。そんな気がしたのだ。

 

 

「Natürlich will ich!!このパンドラズ・アクターにお任せを」

 

 

必死に頼み込んだら、パンドラズ・アクターは何処か喜色を含んだ様子で大袈裟な手振りを付け了承してくれたのだった。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

☆モモンガ視点

 

 

加藤さんを傷付けられた怒りに胸の内が激しく煮えたぎっていた俺に、アルベドが泣きながら必死に呼び掛けてくれた。

 

彼女が止めてくれなければ、怒りに身を任せて王都に超位魔法をぶち込み、加藤さんを傷付けた奴らを周り諸共破壊し尽くしていただろう。

 

破壊尽くされた都市を見たら、加藤さんはどんな反応をしただろうか・・・例え、元に戻せたとしても “死”を見るのか見ないのかは 精神状態を大きく変える。彼女を悲しませるのも、失望されるのも、拒絶されるのも、俺には耐えられなかっただろう。

 

 

だからといって、コイツらを許す訳がないのだがな。

 

 

 

王都の最奥、ロ・レンテ城。

その城を囲んでいた城壁は 下僕たちによって破壊され、確保された空間には多くの人間が集められていた。

 

その人間共が見つめる視線の先には、階層守護者達によって設置された豪華な壇上があり、そこに俺は立ち、人間共を見下ろす形となっていた。俺の周りには、アルベドを筆頭に階層守護者が固め 誰もが冷徹なまでに冷たい視線を人間共へぶつけていた。

 

 

「我々はアインズ・ウール・ゴウン。私はその王である」

 

 

ハッキリと思いの外 低く発せられた俺の声は、この広く大勢の者がひしめく場であったにも関わらず、よく響き渡った。

 

 

「犯罪組織、八本指。貴様らは我が仲間を侮辱し、拷問にかけた。これは耐え難い屈辱である!!」

 

 

目下の人間共は 皆が恐怖に震え、絶望を顔に貼り付けていた。そんな姿を見ても俺の怒りが僅かにでも収まることは無かった。

 

 

「このような犯罪組織を野放しにしてきた お前達 貴族も同罪だ。聞けば、八本指に苦しめられている国民達を見て見ぬふりをし続けていたらしいではないか!もはや、上に立つ者としての資格は貴様らには無い!!このような腐った国家を見過ごすことなど、私には出来ぬ。我々、アインズ・ウール・ゴウンは貴様らを断罪する!!!!」

 

 

静まり返っていたその場は、俺が言い終わった次の瞬間 人間共の嘆きと叫び声に埋め尽くされた。

 

 

「お待ちください、アインズ・ウール・ゴウンの王よ」

 

 

王国戦士長 ガゼフ・ストロノーフを先頭に兵士達に守られながらやって来た王国を治める王、ランポッサ三世は馬から降りると 俺を見上げてから覚悟を決めたように俯き、言葉を紡いだ。

 

 

「貴方様の仰る通り、大切なお方を傷付けた八本指を野放しにしてきたのは、我らの不徳の致すところ。貴方様に全面降伏いたします。誠に申し訳ございませんでした」

 

 

ランポッサ三世の謝罪に どよめきが起こった。顔を蒼白にさせた貴族達が声を張り上げ、反論を始めた。

 

「な、何をおっしゃるのですか!!」

 

「このような化け物共に、王国の王たるものが頭を下げるなど恥を知れ!」

 

ランポッサ三世が貴族共を黙らせようとしていたが 無視され続け、段々と顔色を悪くさせていった。父に加勢したザナック王子の働きかけも虚しく王族派と貴族派で口論になりだし、大きくなっていった怒鳴り声がまるで伝染するように辺り一面に響き出した。

 

 

・・・本当に愚かな奴らだ

 

 

事前に話が通っていたとはいえ、被害を抑えるべく降伏を決断したランポッサ三世の判断は正しいだろう。それを批判するばかりか 俺達と戦おうとする者まで現れた。勝てる訳がないだろうに。

隣に控えていたアルベドが声のトーンを落としながら俺に問いかけてきた。

 

 

「ゴミムシ共を黙らせますか?」

 

「そうだな・・・いや、まて」

 

 

アルベドに同意しようとしたが、その前に興味深い人物が前に出てきた。彼女、ラナー姫は護衛の青年を1人だけ引き連れ 俺に向かって跪いた。

 

 

「偉大なるアインズ・ウール・ゴウンの王よ、このような無様を晒す無礼をお許しください。私が彼らを黙らせます・・・どうかお力添えを下さいませ」

 

 

ラナー姫は俺を見た後、デミウルゴスに視線を向け また俺に視線を戻した。ラナー姫はこのような事態を想定していたのか?デミウルゴスを見れば、頷き返されたので 俺は許可を出した。

 

 

「良かろう。デミウルゴス、協力してやれ」

 

「御意に」

 

 

デミウルゴスはスキル「支配の呪言」を使うと騒いでいた貴族共を黙らせた。やられた奴らは突然の事で戸惑っていたようだが、俺としても聞くに耐えない発言のオンパレードを聞かずにすんでほっとした。静かになった場には ラナー姫の声はよく響き渡った。

 

 

「皆さん、この御方は“あの”アインズ・ウール・ゴウンです。彼らの噂を聞いた方も多いでしょう。人間と異形種が共存している国家、悪を許さず脅威から立ち向かえるだけの力を持った国です。情けない事に我が国は腐りきった果実 そのものでした。民は苦しみ、疲弊する一方・・・もう、国としても限界でしょう」

 

 

あぁ、成程。コレは貴族達に向けた言葉ではなく 王国国民へ向けた演説だ。

 

 

「かの王は無意味な殺しをしないとお聞きしました」

 

 

そう言って視線を向けてきたラナー姫に 俺はハッキリと答えた。

 

 

「我らの下では全てが平等。民になるのであれば 殺しは勿論、虐げることもない。今より、暮らしも豊かになるであろうな」

 

「偉大なる王に感謝致します。さぁ、我ら王族も、そして貴族も引き下がるべきですわ。我らの愛する民の安全は保証されたのですから」

 

 

ラナー姫は言い終わると、綺麗に一礼し下がっていった。俺はデミウルゴスにスキルの解除をさせてから、呆然とした様子のハ本指とそれに関わり合いを持つ貴族達へ視線を向けた。

 

 

「さて、貴様らの罪は理解出来たか?八本指の者達はコチラで引き取らせてもらおう。八本指に協力していた貴族共も含めてな」

 

 

俺の言葉に顔を蒼白にさせた者達が抵抗しようと声を上げた。

そうだ、そうやって 国民を蔑ろにし 無様を晒す姿をお前達が見せれば、この光景を見ている“王国国民”はどう思うだろうな?

 

自分達の支配者へ怒り、異形種であるハズの俺達へ期待する。・・・急にことを進めたから何処まで上手くいくか分からないが。本来なら、蒼の薔薇が持ち帰った報告と共に 王国中にアインズ・ウール・ゴウンの噂を浸透させてからの計画だったのだから、不安定な部分があっても致し方ないだろう。

 

まぁ上手くいけば、帝国 そして法国を手に入れる為の良い布石にもなるからな。うまく踊ってくれよ、クズ共。

 




王国の国民達はどっから見てるの?
→ナザリックの配下達総出で 主な集落に巨大モニターを設置。そこから生中継されております。

巨大モニターどっからきたんだべ?
→ナザリックにそれぐらいあるさ!HAHAHA

※クリスタルモニターって事にしといて下さい


※あと、2話で完結予定!!


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