『オリンピック関連登録商標の商標法上の位置づけ』
が掲載されたのを皮切りに、
国会及び東京新聞紙上で、表記の件が立続けに話題に挙がっています:
●2019年3月20日
小川敏夫議員による国会質疑(法務委員会『違法ライセンス疑惑』質疑)
https://twitter.com/OgawaToshioMP/status/1108238785207132160
http://www.webtv.sangiin.go.jp/webtv/index.php
(「法務委員会」→「2019年3月20日」で当日の中継録画がでますので、
00:45:40~01:50:00 で小川敏夫議員の質疑を視れます)
http://online.sangiin.go.jp/kaigirok/daily/select0103/main.html
(元榮太一議員→有田芳生議員→小川敏夫議員の順です)
●2019年3月28日
東京新聞特報面(見開き2面『違法ライセンス疑惑』特集);
https://www.tokyo-np.co.jp/article/tokuho/list/CK2019032802000180.html
https://twitter.com/charajunpei/status/1111078432341843969/photo/1
●2019年4月12日
東京新聞第1面(登録商標『五輪』に対する異議申立報道)
https://twitter.com/tokyohotweb/status/1116458608265322496
https://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201904/CK2019041202000159.html
https://twitter.com/charajunpei/status/1116500091492130816
●2019年4月14日
東京新聞特報面(『五輪』異議申立/『違法ライセンス疑惑』追跡記事)
SNSでの反響も大きいのですが、
車道やメディアで日々目にするオリンピック関連登録商標の使用実態が、
商標法侵害罪という刑罰を伴う重大な違法行為に繋がりうることと、
登録商標『五輪』の異議申立がどのような意義があるかについて、
なかなかピンとこない方々の感覚が伝わってきます。
そこで、ここまでの一連の流れで挙がった疑問点について、
私から、少しずつ解説させていただきます。
《オリンピック関連登録商標の使用実態》
典型的な例として、
国際登録第1026242号のオリンピックシンボル、
商標登録第6008759号のオリンピックエンブレム、及び、
商標登録第6076125号のオリンピックマスコットについて、
ネット上で、以下のような使用実態を見ることができます。
①オリンピックエンブレムとオリンピックシンボルを付したタクシー
②オリンピックシンボルを使用した家電企業のサイト
③オリンピックエンブレムエンブレムを使用した新聞社のサイト
④オリンピックエンブレムを使用した東京都の広報誌
⑤オリンピックエンブレムを使用した新宿区の広報誌
⑥オリンピックエンブレムを使用したIT関連製品企業のサイト
⑦オリンピックマスコットを使用した葉書
上記の使用実態は、ほんの数例にすぎませんが、
これらを含めたオリンピック関連登録商標の使用実態は、
いずれも、IOCファミリーがスポンサー企業に対して
総額4000億円に迫る協賛金と引き換えに、
オリンピック関連登録商標をライセンス契約を締結した結果生じています。
https://tokyo2020.org/jp/organising-committee/marketing/sponsorship/
https://tokyo2020.org/jp/games/budgets/
《オリンピック関連登録商標の違法ライセンス疑惑の影響》
しかし、このオリンピック関連登録商標は、商標法の下では、
ライセンスすることが禁じられていることを、
商標制度の専門家たる弁理士である私と
検察・裁判官ご出身の小川参院議員から指摘しており、
政府もオリンピック関連登録商標の管理責任者である組織委員会も、
その指摘を否定することができない状況にあり、
オリンピック関連登録商標のライセンス契約の多くは、
違法であるということが否定されていません。
そうであれば、我国には、
IOCファミリーの商標権者以外は、
オリンピック関連登録商標を合法的に使用できる者は存在しない
ことになるので、上記の使用実態は、いずれも、
商標権侵害罪(商標法78条)の現行犯状態にある
ということが否定できないことになります。
さらに言い換えれば、今や、日本列島は、
オリンピック関連登録商標の違法使用の下で、
山のような違法商品と違法サービスが蔓延していることになり、
日本人は、そのような違法状態の蔓延の中で、日々生活している
ということになります。
《違法ライセンスで誰か損害を受けているのか?》
オリンピック関連登録商標の違法ライセンス疑惑について、
周囲の人にお話しした際に、
「IOCファミリーの違法ライセンスにより、
スポンサー企業が商標権侵害罪状態に置かれたからと言って、
誰にも損害はないのだから、問題ないのではないか」
という方が少なからずいらっしゃいました。
法律に携わる端くれとして、私には
大々的な違法疑惑行為を目前にして、このように言い切れる心境が、
本当に理解できず驚くばかりなのですが、
まあ、以下の話について考えてみてください。
道路を法定速度以上で車を爆走させる動画がYouTubeに投稿され、
それがSNS上で話題になり、皆が楽しんで大騒ぎになった挙句に、
投稿者が書類送検・逮捕されるという報道を
しばしば見聞きされることと思います。
https://www.youtube.com/watch?v=7N1WNK1U9zo
この場合、この投稿者は自身を危険な状態に置いたとしても、
事故を起こして他人を死傷させた・他人の車を破壊した等の、
他人に損害を与えたわけではなく、
動画の内容は既に過去のことで現行犯であるわけでもありませんが、
やはり道交法違反で書類送検・逮捕されてしまいます。
それは、このような投稿者を放置すれば、
道路での違法運転を皆がすれば怖くないとなってしまい、
道交法違反者が激増して、結局は重大事故のリスクが大きくなり、
我国の交通安全秩序が崩壊してしまうからです。
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オリンピック関連登録商標の違法ライセンスと侵害疑惑行為は、
この投稿者の違法運転とおなじようなもの、
というよりも、より悪質である、
と言われても仕方がないのではないでしょうか。
IOCファミリーは、
オリンピック関連登録商標の違法ライセンス疑惑がここまで公になった今、
わかっていながら(故意に)違法ライセンスに関するHPでアナウンスし、
スポンサー企業は、
TVCM、HP、車道、売店等ににおいて商標権侵害疑惑行為の実施を、
公然と現在進行形(過去形ではなく)でしており、
日本全土に違法商品と違法サービスを蔓延させる結果を招いており、
合理的に運用されてきた我国の商標秩序を完全に崩壊させています。
オリンピックには少なからぬ税金が注ぎこまれ、
福島の復興や地方の公共事業に支障をきたすほどに、
土木分野の作業者はオリンピック関連事業に振り向けられており、
その挙句に、国民が、
違法商品と違法サービスの蔓延という無法状態の中で生活させられる
とあっては、
税金の不当投入による経済的損失と、
国民の受ける精神的苦痛は十分な損害といえるでしょう。
さらに、このような日本を挙げての違法状態を他国が知れば、
我国の国際的信用は知に落ちてしまうリスクは非常に大きく、
そうなった場合は取返しのつかない損害ということになります。
商標制度が守るのは商標に蓄積した「信用」ですから、
商標秩序の崩壊は、信用が崩壊することと同じであることに
留意して下さい。
IOCファミリーと同様に、
著名な登録商標のライセンスが禁じられている大学・NPO法人は、
特許庁の指導の下でライセンス活動を我慢しており、
違法ライセンスにならないように、
様々な工夫をして対応していることと比べてみて下さい。
http://www.tokugikon.jp/gikonshi/285/285kiko2.pdf
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その一方で、IOCファミリーは自己の商標権に基づき、
アンブッシュマーケティング対策の名の下で、
(法的根拠があいまいな)差止警告をする旨を公言しています。
https://tokyo2020.org/jp/copyright/data/brand-protection-JP.pdf
非営利公益法人(たるIOCファミリー)が、
一方で、法律で禁じられている行為を故意に公然と行い、
他方で、権利を過剰に行使して他人の自由な経済活動を制限する、
という、性善説に立つ従来の商標制度が想定していない、
IOCファミリーの法律無視のデタラメとも言える活動が、
YouTubeの違法運転投稿者に比べて良心的であるとは到底思えない、、
と言うことではないでしょうか。
即ち、YouTubeの違法運転投稿者は書類送検・逮捕されることで、
曲がりなりにも交通安全秩序が守られているのに対して、
IOCファミリーの法律無視のライセンス活動が放置されることにより
(この放置状態は我国の政治的・社会的・文化的な劣化に他なりません)
我国の商標秩序は、現に崩壊してしまっており、結局、その損害は、
税金の不当投入による経済的損失、精神的苦痛、国の信用失墜
として、国民全体に行き渡っている又はそのリスクに晒されている
ということではないでしょうか。