ドラマログテキストマイニング

テレビ番組(ドラマ)の字幕情報を対象に、テキストマイニングの研究をしておりますので、解析結果の公開をメインに関連グッズを交えた構成で記事にしてます。また、解析結果の信憑性が確認できるよう、解析用ソースも部分引用し掲載してあります。

連続テレビ小説「なつぞら」総集編(前編)広瀬すず、松嶋菜々子… ドラマの原作・キャスト・音楽など…

連続テレビ小説なつぞら」総集編(前編)』のテキストマイニング結果(キーワード出現数ベスト20&ワードクラウド

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連続テレビ小説なつぞら」総集編(前編)』のEPG情報(出典)&解析用ソース(見逃した方はネタバレ注意)

 

解析用ソースを読めば、番組内容の簡易チェックくらいはできるかもしれませんが…、やはり番組の面白さは映像や音声がなければ味わえません。ためしに、人気のVOD(ビデオオンデマンド)サービスで、見逃し番組を探してみてはいかがでしょうか?

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連続テレビ小説なつぞら」総集編(前編)[解][字]

戦災孤児のなつ(広瀬すず)は、兄妹と別れ北海道、十勝へ。酪農を営む柴田家の主、泰樹(草刈正雄)に鍛えられ、なつは「信じる心」と「生きる力」を身につけていく。

詳細情報
番組内容
戦後、両親を亡くした9才の奥原なつ(粟野咲莉)は柴田剛男(藤木直人)に連れられ、北海道・十勝にやって来た。そして、なつは柴田泰樹(草刈正雄)や柴田富士子(松嶋菜々子)たちにたくましく育てられる。そして、高校生になったなつ(広瀬すず)は生き別れた兄を探しに東京へと向かう。そこでなつは、アニメーションの世界に出会う。アニメーターになりたいという夢に向かってなつは大きく動きだしていく…。
出演者
【出演】広瀬すず松嶋菜々子藤木直人岡田将生安田顕仙道敦子小林隆音尾琢真北乃きい,戸次重幸,柄本佑吉沢亮山田裕貴清原翔,平尾菜々花,比嘉愛未工藤阿須加戸田恵子鈴木杏樹ほか
原作・脚本
【作】大森寿美男
音楽
【音楽】橋本由加利

 

 


(なつ)<ここは 私が育った

北海道の十勝です。

私の大好きな風景に

今日も風が吹いています。

私は 子どもの頃 たった一枚の絵から

アニメーションの世界と
出会うことになりました。

そして 18の夏。

その懐かしい人は
突然 私の前に現れました>

本当に 信さん!?

(信哉)なっちゃんに また会えてよかった。

私も。

<これから語る この物語は
紛れもなく 私の人生そのものです。

私は やがて アニメーションという世界に
その人生をかけてゆくのです>

♬~

♬「重い扉を押し開けたら
暗い道が続いてて」

♬「めげずに歩いたその先に
知らなかった世界」

♬「氷を散らす風すら
味方にもできるんだなあ」

♬「切り取られることのない
丸い大空の色を」

♬「優しいあの子にも教えたい」

♬「ルルル…」

♬「口にする度に泣けるほど
憧れて砕かれて」

♬「消えかけた火を胸に抱き
たどり着いたコタン」

今は 昭和21年

戦争が終わった翌年の初夏です。

なつは 初めて
北海道・十勝にやって来ました。

まだ 9つの時です。

剛男さん!

剛男さんが帰ってきた!

お父さんが…
お父さんが帰ってきましたよ!

お父さん!
(夕見子)お父さん!

お帰りなさい。

やっと帰ってこられたわ。

きっと帰ってくるって信じてました。

お義父さん ただいま戻りました。
うん よく戻った。

で この子は誰なんですか?

あ… なっちゃん

こんにちは! 奥原なつと申します。

なつがやって来た柴田家は

苦労して 荒れ野を切り開き

この地に移り住んだ 開拓者の一家でした。

(泰樹)奥原なつと言ったな どこの子じゃ。

(剛男)あの子は 僕の戦友の子なんです。

その人は 残念ながら
満州で戦死してしまったんだ。

東京の日本橋
料理屋をやってると聞いていたんで

復員して ここに帰る前に寄ったんだわ。

でも その家もなかったんですよ 空襲で。

<私は 真っ赤な夕日を見て
あの日のことを思い出していました>

(咲太郎)なつ!

お兄ちゃん! 千遥!
お姉ちゃん!

なつ 無事だったか よかった…。

お姉ちゃん。
お前は 佐々岡医院の…。

佐々岡信哉です。
お母さんは?

ダメだった… 死んだんだ。

えっ…。

大丈夫だ。 兄ちゃんがついてる。

(剛男)あの子は
空襲で お母さんも亡くして

まだ12歳のお兄さんと 幼い妹と

子どもだけで生きてきたらしいです。

僕は 事情があって
あの子だけ引き取ることにしたのさ。

引き取るって
これから ここで暮らすってことかい?

ほっとけなかったんだ。

(富士子)やっぱり ぴったりだわ。

これ着て 学校に行けばいいわ。

ダメ! それはダメ! 絶対にダメ!

なしたんだ?
嫌だ!

(富士子)だだこねないの。

大丈夫です。 着るものなんか要りません。

お願いがあります。
(富士子)何?

私を ここで働かせて下さい。
えっ?

ここに いさせて下さい。
働きますから。 何でもします。

お願いします!
何も そんなこと…。

偉い! 働いてもらうべ。
お義父さん。

ずっと働いてきましたから
その方がいいんです。

ええ覚悟じゃ。
明日から 夜明けとともに起きて働け。

はい!
あの… 学校は?

学校など お前
体を壊したら 行きゃいいんだよ。

こっち来い。
はい。

かわいい!
(悠吉)めんこいか?

おやっさん この子は?
新しい見習いだ。

へえ~。
奥原なつです。 よろしくお願いします。

よろしく。
なっちゃんか。

しばらくは そこで見てろ。
はい。

それが なつが踏み込んだ
初めての酪農の世界でした。

よいしょ。

ここで働くと決めたなつは

一日も早く 酪農の仕事を覚えようと
必死でした。

大丈夫です。

その日は 日曜日でした。

おい こっち来い。

やってみろ。
えっ?

搾ってみろ。
はい!

(泰樹)上から指を折るようにして搾れ。

指を…。

あっ! そうか そうやるんだ。

あっ。

♬~

(剛男)すごい! やったな なっちゃん

うまいもんだ。 もう調子が出てきたべさ。

(笑い声)

なつが おじいさんに連れてこられたのは
帯広の街でした。

おう やっとるか ハハ。
(とよ)お~や 柴田さん お久しぶり。

店は やってるよ。
売るもんは な~んもないけど。

新鮮な牛乳と 卵を持ってきてやったぞ。

相変わらず 恩着せがましい言い方するね。

商売にならんでいいから 何か食わせろ。

は~い。
おお アイスクリームか! ハハハ…。

うん こりゃうまい!
ハハハ… 全く

大酒飲みかと見せかけて

甘いもんにだけは
目がないときてんだから この人は。

何も見せかけとらんよ。
なら 見かけ倒しか。

いいから もう引っ込んでろ。

うん… うまいか?

はい おいしいです!

甘い… すごくおいしいです!

うちのもんには ないしょだぞ。
はい。

それは お前が搾った牛乳から
生まれたものだ。 よく味わえ。

ちゃんと働けば
必ず いつか報われる日が来る。

人は 人を当てにする者を助けたりはせん。

逆に 自分の力を信じて働いていれば
きっと誰かが助けてくれるもんじゃ。

お前は この数日 本当によく働いた。

だから もう 無理に笑うことはない。

堂々と ここで生きろ。

行ってきま~す!

そして 次の日から なつは
学校へ通うことになりました。

うわ~ うまい!

それ あなたんちの馬?

うん 死んじゃったけどね。

大好きだったんだ この馬…。

(風の音)

おっ。

あっ!

ちょっと貸して。
まるで 馬が暴れてるみたい。

(いななき)

♬~

あっ…。

(正治)それじゃ。
ご苦労さま。

手紙… 来てませんか?

なっちゃんに?
はい。

うん… 来てないわ。

その夜 なつは 東京にいるお兄ちゃんに
手紙を書きました。

「お兄ちゃん 元気ですか?
なつは元気です。

なつは元気だけど
早くお兄ちゃんに会いたいです。

孤児院の暮らしは 大変だと思うけど

頑張って
早くなつを迎えに来て下さい。

早く また
千遥と 3人で暮らせることを 私は…」。

う~ん…。

<それから 何日たっても
兄からの返事は来ませんでした。

兄は 別れる時
私に 手紙を書くと言いました。

私は 考えていました。

兄は 私が会いたいと
手紙に書いたものだから

これ以上 寂しがらせないように
わざと 返事を書かないのではないかと…>

「お兄ちゃん 私は大丈夫です。

私は幸せです。

どうか 私のことは心配しないで」。

さようなら…。

なつは その朝 突然
東京に帰る決心をしたのです。

なつは 帯広に着きました。

だけど
東京へ行く切符を買うお金もありません。

(泰樹)おい いるか?
おいって 何さ~。

なつは いるか?
なつ?

こないだ来た あの子だ。
あの子が どうかしたの?

いなくなったんです。
えっ!

なしたの?

お前 あの子 見なかったかい?
ほら この前 ここで

柴田のおじいさんと
アイスクリーム食べてた…。

見ないよ。 なして?

やっぱり あの子は
東京に戻ろうとしたんです。

孤児院にいるお兄さんに会いたくて…。

(剛男)あのきょうだいは
特別な絆で結ばれてるんだ。

奥原咲太郎君と なっちゃんでしょ?

やっと会えた。

もう一人
小さなお嬢さんがいらっしゃると

お父さんから聞いてたんだけど
まさか…。

千遥は 親戚に預けました。
まだ小さい妹だけならばって…。

そうだったのか…。
それは つらかったね。

戦死された君たちのお父さんから
手紙を預かってきたんだ。

君たちへの思いが込められてる。

あっ お父さんの絵だ!

絵が とても上手だよね。

お父さんは とても人気があったんだ。

♬~

どうも ありがとうございました…。

よかったら おじさんと 一緒に来ないか?

おじさん 北海道に住んでるんだけど…。

君たちのお父さんと約束したんだ。

何かあった時には お互い助け合おうって。

おじさん!

咲太郎君…。

なつだけ… お願いできませんか?

君は どうするんだ?
俺まで行ったら

下の妹が かわいそうだから…。

「咲太郎 なつ 千遥
お父さんは 今 遠い戦地にいる。

大好きなお母さんと離れて
何よりも大事なお前たちとも離れて…」。

「この手紙を受け取った時には
もう この世にはいない。

だけど 今も
一緒にいる。

だから 悲しむな。

やっと 父さんは
お前たちのそばに戻れたんだ。

今 一緒にいるんだ…」。

♬「夕暮れに仰ぎ見る 輝く青空」

♬「日が暮れて辿るは わが家の細道」

(泰樹)なつ!
なっちゃん

(泣き声)

どうして 私には 家族がいないの…!

バカヤロー…。

(泣き声)

お前には もう そばに 家族はおらん。

だが わしらがおる。

一緒に おる。

おじいさん…!

♬~

それから ある日のこと。
学校帰りに なつは

天陽君と一緒に その家に向かいました。

わあ~ すごい!

これ 天陽君が描いたの!?

違うよ。 それは 兄ちゃんが描いたんだ。

僕の絵は こっちだよ。

ここで 死んだ馬を描いたんだ。

だから黒いの?
そういうわけじゃないよ。

黒い絵の具は
赤や黄色よりも安いんだって。

ここは いくら耕しても
土が悪いと言われて

父さんは もう
耕す気もなくなってしまったんだ。

そうなの?
作物が育たなければ

捨てるしかないよ こんな土地。

天陽君は 農家をやりたいの?

そりゃ やりたいよ!
俺は ここで生きたいんだ!

ここが好きなんだ!

この土に勝ちたいよ!

あ~!

お願いがあります。
天陽君を助けて下さい。

親は とっくに諦めてるんだべ。

天陽君は
それでも やりたいって言ったんです。

土に勝たせてあげて下さい!

無理だ。


土が悪すぎる。

おじいさんは 自分の力で働いていたら

いつか 必ず 誰かが助けてくれるもんだ
って言ったじゃない!

天陽君は 一人で土を耕してるの!

天陽君を 誰が助けてくれるの!?

なっちゃん 分かったから… ねっ。

なつの言葉に
胸を打たれたおじいさんは

ついに 立ち上がりました。

皆さん どうか よろしくお願いします!

まずは あの切り株を取り除く。

何年かかっても この荒れ地を

美しい我が里の風景に変えんじゃ!

(一同)オ~!

そ~りゃ! そ~りゃ! そ~りゃ!

<私には まるで その人たちが
歌っているかのように見えました。

開拓者の力強い歌が
聞こえてくるようでした>

(一同)そ~りゃ!
起こせ!

♬~

昭和30年の初夏。

なつが 十勝の柴田家に来て
9年の月日が流れました。

なつは 農業高校の3年生です。

なつ!
ん?

破水した!
じいちゃんが お前呼んでこいって!

じいちゃん!

なつ 逆子だ。

えっ… 逆子?
後ろ足から出とる。

逆子は 時間がかかると
途中で へその緒が切れて

子牛が おなかの中で
息ができなくなるかもしれんって

学校で習った。

早く引っ張り出さんと
子牛が生きられんよ!

(泰樹)引っ張れ!

お願い 助かって!

よし 引け!

よ~し 出るぞ。

なして動かんの?

息をしとらん。 ダメだ…。

じいちゃん 私にやらして!
これで 息をしとらんかったらダメだ。

まだ! 学校で 人工呼吸習った。

お願い やらして。
なつ…。

羊水飲んだのかもしれん!

なっちゃん そったらことまで…。

♬~

なつ!

あっ…。

やった…。

なつ!
よかった~。

よくやったな! よくやった。
よかった~。

(泰樹)ハハハハハハ…。

なつは この家で
本当の娘のように育てられていました。

おかげさんで なつは
元気に ここで生きています。

今日 新しい命が生まれました。

無事でした。

ありがとうございました。

戦争で亡くなった父と母のことも
なつは 大切に思ってくれていました。

本当の兄と妹は 今も行方が知れません。

おはようございます!
遅くなって すいませんでした!

大幅に遅刻したくせに
反省はしてないようだな。

何していた?
それ 聞きますか?

聞いてほしそうだなあ。 何だ?

牛のお産を手伝っておりました!

それが 逆子でした。
逆子?

へその緒が切れたら大変だと思って
急いで引っ張り出したんだけど

生まれた子牛は仮死状態だった。

それで 助かったのか?

はい! 私が 人工呼吸をして助けました!

(拍手)

先生 学校で教わったことに
うそはありませんでした。

当たり前だ。
よくやった なっちゃん

(拍手)
ありがとう ハハハ…。

天陽君!

おう なっちゃん

ちょ… 動かんで。
(天陽)うん。

このころ なつと天陽君は

時間を見つけては
絵を描くようになっていました。

あっ なっちゃん 来てたのか。
いらっしゃい。

おばさん お邪魔してます。

また 絵描いてるの? あんたら。
見れば分かるべさ。

ちょっとでも 天陽君から
絵を教わりたくて。

どら 見してちょうだい。

お~ 天陽の特徴をよく捉えてるわ。
よく描けてる。

でもね… ちょっと 天陽君の見して。

ほら~ やっぱり違う。

天陽君の絵は
うまいんじゃなくて すごいんです。

でも なっちゃんの絵は
いつも 躍動感があるんだよな。

今にも動き出しそうなんだよ。

あんたたち そんなに 絵好きなの?

本当は 陽平みたいに
もっと 絵の勉強がしたいの?

んなこと 誰も言ってないだろ。

違いますよ おばさん。
私たちは この十勝で働いてるから

絵を描くのが好きなんです。

どういうこと?

絵を描くのが楽しいと
働くのも楽しくなるんです。

絵を描きたいと思うことと

ここで生きたいと思うことは
同じなんだって

私 天陽君から教わったんです。

なっちゃん
ず~っと ここにいたいのね。

それは… まだ分かりませんけど。

東京に 本当のきょうだいがいるもんな。

東京にいるかどうかも。

♬~

<その瞬間 風が吹くように
その光景がよみがえりました>

<10年前 東京に空襲があった あの日>

<私は その人に救われたのです>

信さん…?

どしたの? 悠吉さんと菊介さんまで。

いや… なっちゃんをね 東京から
連れ戻しに来たんじゃねえかって

夕見子ちゃんが言うもんでさ…。
えっ?

(夕見子)その人
家族も同然だった人でしょ?

だけど 今更 連れていくなんて
言わんでもらいたいんだわ。

何言ってんのさ 菊介さん。
なつ姉ちゃん どこにも行かんで!

行かんよ。

大丈夫です。

なっちゃんが元気でいることを
確かめたかっただけですから。

バカ!
おめえが余計なこと言うからだべさ!

おやじが騒いだんだろ
力ずくでも 俺が止めてやるって。

よかった…。

なっちゃんが こんなにも
皆さんから大事にされていて…。

安心しました。
それで なつのお兄さん

咲太郎君の行方は分からないのか?
はい。 残念ながら…。

でも 4年前までは 新宿にいたって。
新宿?

いかったなあ 安否だけでも分かって。
うん。

(菊介)なあ。
とにかく 今も 元気でいると思います。

ありがとう 信さん。
これからも捜してみるよ。

何か分かったら すぐに教える。

これは 僕が 今いる所。

そっちも 何か分かったら教えて。

なつ ちょっといいかい?

何?

東京行かない?
えっ?

咲太郎さん 捜しに行こう。

なつと富士子さんは

十勝から2日かけて
東京の新宿にやって来ました。

信さん!
いらっしゃい。

お待ちしてました。
ここの店に 咲太郎を知ってる人がいます。

咲太郎さん… 私たちは 咲ちゃん。
劇場のみんなからは

咲坊なんて呼ばれていましたね。

サイボウ?
その劇場というのは…。

ムーランルージュ新宿座。

そこで 兄は お芝居をしてたんですか?

(光子)いいえ 掃除をしたり
もぎりをしたり 裏方を手伝ったり…。

みんなからは
かわいがられているようでしたよ。

そうですか…。
(ドアが開く音)

あっ。 ちょっと お待ちになって。

社長。
(茂木)やあ マダム 今日も あでやかで。

フフッ… ありがとうございます。

あの 是非 ご紹介したい方が…。

ちょっと よろしいでしょうか?
ああ。

皆さん こちら すぐそこの本屋さん
角筈屋書店の茂木社長。

新宿のことなら何でも
私よりも よく知ってらっしゃいます。

あっ こちらは ムーランルージュにいた
咲ちゃんの妹さんです。

なつと申します。

ああ… あの小僧さんか。

それで?
なつさんは 咲ちゃんを捜しに

北海道からやって来たんですって。
ああ…。

そういえば
そんな話を聞いたことがあったな。

生き別れになった妹を
いつか この新宿に呼び寄せるんだって。

本当ですか?
(茂木)ああ 本当さ。

そして 茂木社長に連れられ
咲太郎をよく知る人を訪ねました。

(拍手)

あっ。

あなたが なつさんね。
はい。

残念ながら 私も 今は

咲坊が どこにいるかは
心当たりがないんですよ。

ごめんなさいね なつさん。
あっ いえ…。

咲太郎が浅草にいるとのうわさを
信哉君が聞きつけ 訪ねてみると…。

ここの幕あいに
コントと呼ばれる芝居をしていて

それの手伝いをしてるらしい。

♬~

星がきれいな夜だ。

俺は この街で生きている 老けた浮浪児。

♬~

もういい 引っ込め!
早く女の子出せ!

お兄ちゃん!

誰だ?

なつ! なっちゃん

お前 なつか!?
なつだよ。

なつ!

えっ お兄ちゃん…。

なつ!

(拍手)

私は ずっと幸せだった。

これ以上ないくらい。

なつが 家族になってくれて
私たちも幸せだから。

ありがとうございます。
なつはね

あんたや 妹さんのことを忘れたことは
一度もないのさ。

あんたも そでしょう?

いつか 2人を
新宿に呼ぼうとしてたでしょ?

えっ?
角筈屋書店の茂木社長から聞いたんだ。

新宿に泊まってるのか?
ええ。

川村屋さんには すっかりお世話になって。

マダムは 何か言ってたか?

お兄ちゃんは
新宿のムーランルージュを愛してて

そこのみんなからも 愛されてたって。

それだけか?
ほかに 何かあんの?

あ…。
これから 一緒に 新宿に行かない?

みんな お兄ちゃんのこと 心配してるよ。

明日行くよ。
明日の昼 必ず行くって

川村屋のマダムに
そう言っといてくれないか。

分かった。
ああ。

本当は もっと心の底から
笑いたかったのにな… 咲太郎。

そして翌日 事件は起こったのです。

咲太郎が 警察に捕まった。

どういうこと!?
質屋に 時計を持っていったら

それが 盗品として
手配されていたものだったらしく

そのまま 取り押さえられて…。

この方は 藤田正士さん。

人呼んで 藤正親分。

咲太郎は 戦後のマーケットで
うろうろしてるところを助けたんだ。

ありがとうございました。
助けたのは俺じゃねえ。

戦前から ムーランで踊ってた
岸川亜矢美っていう踊り子だ。

亜矢美は 母親のように
咲太郎をかわいがってた。

だから あいつは
ムーランルージュが潰れた時

それを 必死に買い戻そうとしたんだ。

兄がですか?
要するに だまされたのよ。

10万円用意すれば 共同経営者として
買い戻せると思い込み

金貸しから借りたのよ。

それを そのイカサマ野郎に
持ち逃げされたんだ。

まだ ガキだったあいつに
ただ貸すわけがねえ。

誰かが あいつの保証人になったんだ。

だから 咲太郎は

その10万円を作るまでは
新宿に戻らねえ。

そう言って 姿を消したんだ。

しかし まあ その保証人も

よほどのお人よしか バカですな。

ハハハ…。

マダム!?
マダムが!?

親分
咲太郎は だまされたって 本当ですか?

咲ちゃんは
私を だましたわけじゃないのね?

そりゃ違う。

(佐知子)いらっしゃいませ。

なっちゃん
警察で 少し話が聞けたよ。 えっ?

あいつは 泥棒はしていないと
言ってるらしいけど

じゃあ 誰からもらった時計なのかと
聞かれれば それを言わないそうなんだ。

誰かを かばってるんだと思う。

それで… 警察から
あいつの手紙を預かってきたんだ。

「なつへ。

また なつに会える日が来るなんて
本当に信じられない。

なつ すまない…。

こんな兄ちゃんのことは忘れてくれ…。

忘れて 北海道で幸せになれ。

兄ちゃんも… お前を忘れる。

ごめんな」。

何だよ じいちゃん。

お前…

なつと結婚しろ。

えっ?
なつと結婚するんだ。

そしたら なつは
正真正銘の柴田家の家族になる。

一生 この家にいることになるんだ。

お前が そうしろ。

新宿の川村屋に
思いがけない人が現れました。

それは 東京の芸術大学に通う
天陽君のお兄さんでした。

今 大学の先輩の仕事を
手伝ったりしてるんです。

あっ なっちゃんなら
きっと 興味があると思うな。


その仕事に? うん。 漫画映画を
作る会社で働いてるんだ。

本当に!?
ああ。

見てみたい?
見たい!

どんなもの作ってんのか
どうやって作ってんのか見てみたい!

見に来る?
えっ?

おはようございます!

(仲)職場で デートをするのは
いかがなものかな。

違います。 彼女は 弟の彼女なんです。

アニメーション制作に興味があって
見学を望んで ここに来たんです。

いらっしゃい。

(陽平)動きの基礎となる絵を描く。
これを 原画といって

その原画と原画の間をつなぐように

中割と呼ばれる絵を描いてゆく。

これを 動画っていうんだ。

この紙を 5~6枚使って

2枚の絵の合間を描いて
薪割りを完成させてごらんよ。

♬~

あの~…。
できた?

(仲)うん…。
どうですか?

いや… なかなか いいよ。

この絵には ちゃんと
君らしさが出てたと思うよ。

本当ですか?
ちゃんと勉強すれば

アニメーターになれると思うな。

女でも なれるんですか?

そりゃ なれるよ!
ここは 今 仮のスタジオでね

もうじき 僕たちは
会社ごと 東洋映画に吸収される。

でも 私は 絵の勉強なんかしてないし…。

うん… 下山君
君は ここへ来る前 何をやってたっけ?

あ… 警察官であります。

警察で 絵の訓練をしていたであります!
バン! バン!

勉強は どこにいたってできるよ。

昭和31年の1月になりました。

寒~…。

(天陽)なっちゃん
漫画映画を作りたいのか? えっ?

兄ちゃんが 手紙で
そんなようなこと書いてたから。

兄ちゃんも 結局
その会社の試験受けて 採用されたらしい。

えっ 陽平さんも入ったの?

もし なっちゃんも来たいなら
相談に乗るって。

行けるわけないしょ 私が!
牧場があるから?

えっ?
捨てられないのか?

牧場をやりたいからに決まってるしょ。

映画は 見るだけでいいのさ。

ねえ いつ行こうか? ディズニーの映画。

いつでもいいよ。

そして
帯広の映画館で

なつと天陽君は
ディズニーの漫画映画を楽しんだのです。

すると…。

「この度 新しい映画スタジオが
完成しました。

そこで 私どもは
立派な漫画映画を作りまして

世界に進出いたしたいと考え…」。

広く新しい人材を求めております。

(天陽)じいさんに相談してみれば
いいんでないか?

何のことさ?

東京に行くこと。

お兄さんも 向こうにいるんだし

柴田家の人も
ダメとは言わないんでないか?

行きたいなんて言ってない!

だったら行くなよ。

俺 今度 スキー大会出るから。

えっ?
開拓青年団の。

出るの? スキー持ってたの?

うん… 板につける金具はあるけど
板はない。

自分で作るわ。 ハハハ…。

そして スキー大会当日がやって来ました。

何ですか? 大事な話って…。

お前… なつのこと どう思ってる?

えっ?

好きです。

だべ?
えっ?

そのことを なつに言ったのか?
いいえ…。

言えや!
なして 照男さんが

そんなこと 言うんですか?

兄貴だからだ!

よし 俺と勝負しろ。

俺が スキーで お前に勝ったら

お前は なつに好きと言え。

俺が勝ったら?

そん時は… お前の好きにしろ!

俺が勝ったら
なっちゃんのことは諦めます。

(ホイッスル)

(歓声)

天陽君 頑張れ!

[ 回想 ] 俺と勝負しろ。

俺が スキーで お前に勝ったら
お前は なつに好きと言え。

[ 回想 ] 俺が勝ったら
なっちゃんのことは諦めます。

♬~

何でだよ!

頑張れ~!

♬~

お前… ふざけんな。
諦める気か。

負けました。

約束は守れよ。

はい。

私ね… 漫画映画をやってみたい。

アニメーターっていうのになりたい。

そうか… 決めたか…。

まだ 許してもらったわけじゃないけど…。

俺は いいと思うよ。 頑張れ。

うん!

照男さん…。

なつと 話したか?

俺 ず~っと思ってたんです。

なっちゃんは いつか
この土地からいなくなるって。

だから 諦めんのか?

俺は ここで生きるって決めたから
子どもの頃に…。

なっちゃんが 俺にしてくれたように

なっちゃんが決めたことを 俺は守ります。

ごっつぉうさん。

じいちゃん… ちょっと待って。

じいちゃん…
私を 東京に行かして下さい。

漫画映画を作りたいのさ。

作れるかどうか分からんけど…

どう作ってるのかも分からんけど…

やってみたいのさ。

挑戦してみたいのさ。

酪農を… じいちゃんを裏切っても

私はやりたい。

何が裏切りじゃ!

ふざけるな!

よく言った。

それでこそ わしの孫じゃ!

行ってこい。

行って 東京を耕してこい!

開拓してこい!

≪天陽く~ん!

天陽君!

どうした?

じいちゃんが認めてくれた!

そうかい…。
ありがとう。

なつよ… それは 天陽君に

別れを告げてもいるぞ。

そして 旅立ちの日はやって来ました。

もう そろそろ行くわ。
おう…。

じいちゃんも
送別会 来てくれたらいいのに…。

牛を ほっとけねえべや…。

今まで ありがとうございました。

気ぃ付けてな。
うん…。

その日 帯広の雪月で
送別会が開かれました。

私の目標は 東京で
漫画映画を作ることです。

できれば… 家族のそばで

酪農を手伝いたいと思ってたことも
本当です。

だから それを裏切るのは

とても つらいけど…。

それは 裏切りじゃない。

それは 成長だ。

まだ9歳で この北海道まで来て

うちに来て ここまで成長してくれて

本当にありがとう。

みんな応援してるから 元気に行っといで。

なっちゃん

今まで 本当にありがとう。

俺は なっちゃんが好きだ。

それは これからも変わらない。

(拍手)

(泣き声)

ここは 東京・新宿。

なつは 試験に受かるまでの間
雪次郎君は お菓子の修業で

川村屋に お世話になります。

明日から 見習いとして ここに入る
小畑雪次郎君です。

杉本平助です。

厳しくご指導下さい。
お願いします!

ま ここは 軍隊じゃないから
そう かたくならずに。

よかった。
よかったじゃない!

はい!

その夜 なつは 咲太郎のことが気になり

以前 紹介してもらった
歌手の煙カスミさんを訪ねてみました。

♬「帰れない」

ありがとうございました。

ねえ もしかして あなたは…?
お久しぶりです。

ちょっと お酒につきあってくれる?
えっ?

食べてよ。
すいません。

あの~ 私 熱かんにして下さい。
お~ はいはい。

この3人はね
私の歌を聴きに来てくれたのよ。

おねえさんの古くからのお知り合い?

人を捜して 私を訪ねてきたのよ。

子どもの頃に生き別れた
お兄さんですって。

兄の名前は奥原咲太郎です。

(カスミ)ムーランルージュじゃ
咲坊って呼ばれてた子なのよ。

あの この子はね なっちゃん
本当に苦労したんだわ。

牧場に預けられてさ

人の苦労を 苦労とも思わねえような
おっかない開拓者のじいさんでな

牛の乳搾りできなきゃ
学校に行くなって言われてたんだよ。

いや もう いつの話してんだべ。

なっちゃん あれだよな…
お兄さん 川村屋に借金残してんだべ?

その借金 返すためにね
皿洗い 川村屋でやってるんです。

いや おじさん それは違うっしょ!

そういうことにも なるべさ。

お前 支えてやれ!
うん…。

分かったか? 雪次郎 お前…。
おっ…! あっ!

おじさん…? えっ…?

咲ちゃんにさ…。
咲ちゃん?

お兄さんに 私にも返すように言ってよ。

あなたにも お金を借りてるんですか?

お金じゃない…。 私の心よ。
はい?

心の操!
真心を一晩 貸したままだから…。

ただいま!
咲太郎…。

相変わらず不景気か?
神武景気も ここまでは届かないか。

そっか まだ知らないか…。
えっ?

それで帰ってきたってわけじゃないんだ。
何の話だ?

あんたの妹 新宿に来てるよ。
えっ なつが!

今度は こっちで暮らすために
出てきたらしいよ。

何で?

今更 俺なんか…。
あれは…

追い出されたんだね。
えっ 北海道をか?

(ドアが開く音)
あっ すいません 今日…。

なつ!

遅くなって悪かったな。

お兄ちゃん!
お前を迎えに来たんだ。

えっ?
どういうことなの?

あ マダム…。
お久しぶりね。

マダム 俺の借金と妹は
何の関係もないだろ!

これを!
妹が ここにいると知って

慌てて返しに来たわけ?

行こう なつ。

そこは…。

(戸が開く音)
連れてきたよ。

いらっしゃい。 おばんでござんす。

なつ 奥行こう。
待ってよ お兄ちゃん…。

いい加減にしてや!
どうした? なつ。

こんな大人の人まで…。
えっ?

ここで 一緒に暮らしてるってこと?

まあ そういうことだ…。

ねえ 言うよ! 私 言っちゃうからね!
うん 何でも言ってくれ。

煙カスミさんと 一緒にいた人も…。
土間レミ子ちゃんね。 付き人の。

その人が お兄ちゃんに返してだって!
何を?

心の操!
何だ? それ。

知らんわ そったらこと!
それから 佐知子さんは…。

あ~ 待て! 分かった!
言いたいことは分かった。

違うよ。 それは勘違いだ。

この人は 俺の母ちゃんだ。

母ちゃんみたいなもんっていうか
岸川亜矢美って 元ムーランルージュの踊り子だ。

あっ…。
(藤田)咲太郎は

戦後のマーケットで
うろうろしてるところを助けたんだ。

ありがとうございました。
助けたのは俺じゃねえ。

戦前から ムーランで踊ってた
岸川亜矢美っていう踊り子だ。

(亜矢美)あっ ああっ あ~っちっち…!

あなたが そだったんですか…。
まあね…。

それより なつ

ここで お前も 一緒に暮らさないか?
えっ?

生活の面倒は 俺が見るよ。
なんとかする。

あっ 何だったら
ここで働いてもらってもいいわよ。

客も ろくに来ない こんな所で
働いて どうするんだよ。

こんなかわいい子 来てくれたら
お客さん いっぱい来ちゃうわ。

俺の妹を 商売に使おうってのかよ。
ちょっと手伝ってもらうだけでしょ。

あっ その方がね
ここに いやすいわよ。 ねえ?

嫌です…。
えっ?

2人して 私をバカにしないで下さい。

なつ! なつ…。

お兄ちゃんは 私と千遥を捨てたんでしょ。

それで楽しかったんでしょ?
なつ…。

これはね 帯広にある
うちの店の菓子なんだわ。

北海道土産には 是非 バター煎餅を。

なつは 北海道で
さんざん つらい目に遭って

東京に来たんだろ。
えっ?


さんざん こき使われて
北海道の家を追い出されたんだろ。

ええ!
(雪之助)それは違うぞ。

誰から聞いたんだ そんなこと。

あ! それは多分…。

なっちゃんはね 柴田家で
本当に 大事に育てられたんだよ。

だから 東京にも来られたんだ。
本当に そなの。

どういうことだよ?

なっちゃんは 夢があって
東京に出てきたんです。

漫画映画を作りたいの。

漫画映画って ディズニーとか?
うん。

子どもが見るもんだろ あんなのは。
あんなのって…。

そういう子どもの夢を作りたいの。

子どもが見るものだから
私は作りたいの。

それなら 兄ちゃんだって応援するよ。

お兄ちゃん…。
よし 俺に任せろ!

何を? なんとかしてやる。
何もしなくていいから。

(雪之助)まあまあ まあまあ。
なっちゃんは あれだね

東洋動画に入りたいんだよね。

試験は6月だっけ?
はい。

受かるといいね。
頑張ります。

誰ですかね? 東洋のスターですかね。

バカね 咲ちゃん あれは東洋の社長よ。

失礼ですが
東洋映画社長の大杉 満さんでは?

そうだけど…。
新しく出来た東洋動画という会社に

私の妹が入りたがってるんです。
アータの妹が 漫画映画を?

はい。 奥原なつといいます。

奥原なつ 奥原なつです!

どうか 鶴の一声 あっ いや…

どうか 名前だけでも
覚えてやって下さい!

はい 分かった。
ありがとうございます! それじゃあ?

うん。 それじゃ。
あっ…。

ありがとうございました!

こないだは 失礼しました。

謝りに来たの?
はい…。

あっ あと…
この人は佐々岡信哉さんです。

子どもの頃
私や兄と一緒に 街で暮らしてたんです。

信? 咲太郎と同い年の幼なじみ?
はい…。

やだ~…!
もう信ちゃん もう早く言ってよ!

ちょっと お座んなさいよ!
座んな。

(亜矢美)ほら ほら…。
はい。

よし! よし よし…!

孤児院から逃げ出して
新宿の街に流れ着いたあの子は

闇市で 靴磨きを始めてね。

勝手に始めたもんだから

周りの浮浪児たちから
袋だたきに遭ってね。

しょうがないから
親分さんとこに連れてって。

ラーメン食わしてやったら
ボロボロ泣きだしてな…。

北海道に行きたいんだ… 妹を迎えに…。

北海道へは どうやったら行けますか?

妹のためだと思って
行かせたのはいいけれど

一人になってみたら
もう会いたくて会いたくて

たまんなくなったって。

あなたを捨てたってわけじゃ
ないからね。

なっちゃん これも お願いね。

はい。

仕事や勉強を重ねながら

なつの東京での日々は
あっという間に過ぎていきました。

そして 2か月がたち

アニメーターになる試験の日を
迎えました。

じいちゃん… 行くべ。
やれ… なつ。

では ご説明します。

馬が 柵に向かって走っています。

その絵の続き 馬が
見事に 柵を飛び越えて走り去るまでを

6枚の絵で表現して下さい。

♬~

奥原なつです。 よろしくお願いします。

アータ ご両親は ご健在かね?

本当の両親は 戦争で亡くしました。

だけど 9つから 私を育ててくれた両親は
北海道にいます。

(山川)それじゃあ 東京には
身寄りがないんですか?

兄がおります。
兄?

奥原…?

奥原なつさんね…。
はい…。

(大杉)アータの絵は 実に面白いね。

こんなに高く跳ぶ馬を 初めて見たよ。

ありがとうございます。

社長の宣伝も すごい面白かったです!

あっ あの 帯広の映画館で見ました。
あんなの 初めて見ました。

あんなの?
あ… すいません つい余計なことを…。

結構ですよ。
はい。

♬~

ちょっと これ見て下さい。
(井戸原)ん 何だよ? えっ?

お~ いいんじゃないの。

絵は この中じゃ 下手な方だけど

馬が 一番 キャラクターになってる。

何より面白い。

何か いいんですよね この子。
まあ まだ 絵は未熟ですけどね。

それからのひとつき
どんなに忙しくても

なつには とても長く感じられました。

そして それは届いたのです。

奥原なつ?
この絵を描いた子ですよ。

なぜ落としたのか
理由を聞かせて下さい。

ああ この子は

社長の判断で
落としたんだ。 えっ?

以前 あの子のお兄さんに
挨拶をされてね。

あの子の兄は 新劇をやってるんだよ。

赤い星座だよ。

あそこは 戦前から プロレタリア演劇の
流れをくむ劇団じゃないか。

しかも あんな愚連隊だか
太陽族だか分からないような

不良の兄がいる子を
入れるわけにはいかないよ アータ。

なつ お前が東洋動画に落ちたのは…

俺のせいだ。

俺が 大杉社長に会って
余計なことを言ったばっかりに…。

そんなことない!

あれは 自分の実力。

そうじゃなきゃ 見返せないしょ。

見返す?

そう。
まだ ダメと決まったわけじゃないの。

9月に もう一度 試験があるの。

それに受かって 必ず そこから
漫画映画を作ってみせる。

それだけは 絶対諦めたくない。

そうか。

なつが受ける試験は 仕上という

絵に色を塗る部署の試験でした。

今度こそという思いで 練習に励みました。

それから
秋の訪れを感じるようになった9月。

なつは 再び
東洋動画の採用試験を受けました。

絵の具を使う仕事には…。

仕上の面接に
大杉社長が来ることはありませんでした。

奥原さんは どうしても
うちに入りたいですか?

はい。 どうしても
漫画映画を作ってみたいです。

そして 今度こそ…。

やった… やった!

(一同)かんぱ~い!
なっちゃん 乾杯!

(菊介)なっちゃん おめでとう!
なつ おめでとう!

これで なつは
ますます忙しくなるだろうしな。

帰ってこんのが いい知らせじゃ。

すごい強がり。

うるさい。
(笑い声)

そして なつは

咲太郎と亜矢美さんの3人で
暮らすことになったのです。

ここだ。
うわ~!

今 私の衣装部屋に
なっちゃってんだけどね。

なまら すごい…。

あっ そんで お部屋代はいくらですか?

部屋代?
いいよ 部屋代なんか。

言って下さい。
う~ん そうね…

まあ タダって言いたいとこだけど…。

じゃあ このうちにあるもの
何でも使い放題

食べ放題 着放題ってことで

1 5! 1, 500円でどうだ? 1か月。

はい 分かりました。

よろしくお願いします。

そして 東洋動画
初出社の日を迎えました。

(山根)え~ 今日から 皆さんに働いて頂く
ここが 仕上の作業室です。

仕上というのは
作画の人たちが描いた絵を

透明なセルロイドに書き写し

色を塗って
セル画というものに仕上げることです。

書き写すことを トレース

色を塗ることを 彩色

この2つが 仕上の仕事です。

奥原なつさん。
はい。

まずは このカットをお願いします。

ダメよ。
えっ?

手袋して。
セルは 素手で触っちゃダメって

言われなかった?
指紋がついちゃうから。

そでした。 すいません…。

慣れたら モモッチって呼んで。

モモッチ?
森田桃代でしょ。

なぜか みんな モモッチって呼ぶのよね。

モモッチ先輩。
先輩は いらないから。

モモッチさん。
そのうち さんも取っていいから。

そして なつは 自分の仕事が終わると

すぐに 仲さんたちの部屋へ向かいました。

♬~

あれっ 君…。
あっ… 下山さん!

僕のこと覚えててくれたの?
もちろんです。 元警察官の!

バン! バン!

ううっ! あっ…。
(麻子)ちょっと!

ごめんなさい…。

これは動画ですか?

いや これは原画に近いもんだね。

あの~ こういうさ ラフな原画を

できるだけ きれいな状態にしてから
動画を描く人に渡すんだ。

まあ 何せ ここで原画を描いてんのは

仲さんと井戸原さんの
2人しかいないから

そんなに 手が回らないわけ。
2人だけで…。

本当のアニメーターと呼べるのは

まだ この2人しかいないからねえ。
アニメーター…。

まあね。
大げさだな 下山君。

なつは 時間さえあれば

制作中の漫画映画
「白蛇姫」の絵コンテを見て

物語の世界を想像していました。

それは 白娘と兵士が戦うシーンですね。
分かる?

悲しい恋の話なんですよね 「白蛇姫」って。

勉強してるね。
私も いつか 描いてみたいです。

え 描いてみる?
えっ?

ゴミ箱から拾って
先輩の絵を どんどん模写して

自分なりに描いてみるといいよ。

はい。
うん。

あ… すいません。

やっぱりダメです。 やり直して下さい。

表情を変えずに 泣き崩れたって
何も伝わってこないんですよ。

(堀内)だったら その表情を
原画で描くべきだろ。

動画は ただのつなぎじゃないでしょ?

これは 戦いに敗れた白娘が
白蛇に戻ることを知って

許仙を思って泣くシーンでしょ?
それを思って動かしてよ!

もういい。 ここ 私がやる。

♬~

何なの? あなた。

あっ…。
何しに来てんの? ここに。

結婚相手でも探しに来てんの?
えっ?

そんな おしゃればっかり気ぃ遣って。
いや これは…。

将来の旦那に会いたいって気持ちが
にじみ出てんのよ その顔から!

はあ!?

男 探しに来てるだけなら 目障りだから
私の前 うろちょろしないでちょうだい。

はあ…。

何だべ 今の…。

う~ん…
この絵に 何が足りないんだろう…。

許仙とは もう会えないと思って
泣くシーンだ…。

<人は どうして泣くんだろう…>

♬~

マコちゃん お待たせ。
トミさん 何ですか? この動画。

えっ? さあ 知らないわ。
彩色の机よね…。

さっきまで ここにいた
奥原って新人の机よ。

マコちゃん…?

堀内君! 堀内君 ちょっと…。
何ですか?

これ あなたが描いたのよね?
は?

前に描いて
あの箱に捨てたもんでしょ?

でも どうして捨てたの? これ。
いいと思う 私は。

許仙は 自分のものだと言いたげに

何より 許仙に会いたいという気持ちが
にじみ出てんのよ この顔から!

僕じゃないよ。
ん?

僕が描いたんじゃない。

僕は こんな稚拙な絵は描かないよ。

(麻子)じゃ 誰が描いたの?

あっ あの…。
なっちゃん

まさか…。
すいません…。

どうして描いたの?
勉強のために

勝手に ここから拾って描きました。

絵を なぞっているうちに
そうしてみたくなったんです。

だから どうして
そうしてみたくなったの?

白娘の気持ちになっているうちに
そうなったんです。

自分は ただ 許仙が好きなだけなのに

それを周りから
どうして悪く思われなきゃいけないのか

そういう怒りが 自然と湧いてきたんです。

白娘は ただ 許仙が好きなだけですよね?

本当は 誰も傷つけたくはないし…。

もう分かったわよ!

マコちゃん。
はい。

ちょっと これ見てくれる?

奥原なつの描いた動画だよ。

一人で練習してたらしい。

君が見てくれないか。
どうして私に?

何たって 君は 奥原なつの才能に

最初に気付いた人かも
しれないんだからね。

あれは才能なんでしょうか?

まあ 正直言って 僕にも分からないよ。

君の意見を聞かせてほしい。

♬~

なつは きれいな線で動画を描く練習を
続けました。

そして 再び アニメーターの試験を
受けるチャンスが巡ってきました。

<じいちゃん…。

じいちゃんは くわを手に

まだ何もない大地を耕しました。

私は 鉛筆を手に
まだ何もない世界を耕しています。

じいちゃんの歩いた道は
まだまだ遠いけれど

いつか そこに たどりつけるように…>

今回も 枚数は 君が一番多い。

50枚とは恐れ入ったよ。

短い間に よく ここまで上達したね。

君に アニメーターとしての可能性が
あることだけは

誰もが認めざるをえない。

合格だ。

「私 頑張るからね。

じいちゃんに 今度 会う時までに

私は この道を
しっかり歩ける人になっていたいです。

そっちに帰れなくても
大好きなじいちゃん

じいちゃんは いつでも私の
一番の誇りです」。

東洋動画の次回作は
「わんぱく牛若丸」に決定。

なつは アニメーターとして
忙しい日々を送っています。

しかし 忘れられないのが
千遥のことでした。

なつは 千遥の居場所を
信哉君に探してもらっていました。

なつ。
うん?

下に信哉が来てるよ。

信さん! 見つかったの?

うん。
本当に?

千葉の船橋って所だ。
ふなばし?

(信哉)これが 船橋の住所だよ。

ありがとう。

会いに行こう。
うん!

ここだ。

千遥?

千遥か?

私は… 違います。
あなた方は?

千遥の家族です。

千遥に会いに来たんです…。

(鈴の音)

これは 下の娘の幸子です。

そんで 千遥は 今 どこにいますか?

申し訳ない…。

千遥ちゃんは いないんです。

死んだということですか?

いえ… 家出をしたんです…。
家出?

21年の夏でした。

警察にも届けたんですが
手がかりはなくて…。

私は すぐ 千遥ちゃんのいた
孤児院に行ったんです。

そこには もう 誰もいませんでした。

手紙は?
俺の出した手紙があったはずです。

その手紙には ここにいる なつの住んでた
北海道の住所が書かれていたはずです。

その手紙は
千遥ちゃんが持って出たようです。

千遥が?

うちの母から 逃げたんだと思います。
えっ?

母が… 千遥ちゃんにばかり
きつい仕事を言いつけて…

それで 我慢しきれなくなって
逃げ出したんだと思います。

ごめんなさい… 私たちのせいなんです…。

♬~

(富士子)「なつ
二十歳の誕生日 おめでとう。

記念に 万年筆を贈ります。

たまには 手紙書いてね。

みんな喜びます。 母より」。

千遥…。

ごめんね…。

なつ… 俺が悪かった。

俺が千遥を
あんな目に遭わせてしまったんだ。

けど 俺は 千遥が
どこかで生きてると信じてる。

だったら 今すぐ 千遥を捜さないと…

私は 絵なんて描けないよ…。

どうして? 千遥のために描くんだよ。

お前 言ったよな?

漫画映画は 子どもの夢なんだって。

だったら その夢を千遥に見せてやれよ。

千遥に?

お前 これを動かしてたんだろ?

子どもの頃 この絵を生かそうとして

それで
漫画映画を作ろうとしたんだよな?

♬~

みんな生きてたんだろ?

そんないい夢 千遥に見せてやらないで
どうするんだよ!

千遥のために…?

絵を描け なつ。

ねえ 信さん。
うん?

私は 千遥の生きる力を信じてるから!

うん そうだね。 僕も信じてる。

ありがとう…。
うん。

今日のおでんは よ~く しみてるよ。
食べる?

食べる。

ただいま。
(3人)お帰り!

何だよ 3人そろって…。

あ… なつ お前んとこ
新しい作品やるんだってな。

うん そう…。
うちの亀山蘭子が

また その役の声をやることになったんだ。
本当に!?

ああ。
「白蛇姫」の評判がよかったからな。

あっ… これだ! ここに名前載るっしょ!

必ず 私の名前を載せてみせる!
うん…。

ほら! そしたら
どこかで これを千遥が見たら

映画やポスター見たら
私の居場所が分かるっしょ!?

そうか… そうだな!
だったら もっと もっと頑張んないとね

早く 名前が載るように。

私 頑張るから…。

ストレッチ アンド… スクオッシュ…?

なつは また 一心に夢を追い始めました。

その いつかを信じて…。

あ~ もう…
もっと 英語を勉強しとけばいかったわ…。

(露木)よ~い スタート!
(カチンコの音)

(坂場)あっ いって…。
お前 大丈夫か おい…。

(坂場)すみません…。
(カメラマン)おい お前 ぶきっちょだね。

(笑い声)

なつは ライブアクションに参加しました。

ライブアクションとは
俳優が 実際に演じたものを撮影し

それを
アニメーションの資料にすることです。

(常盤)「そなたなど知らぬ。

出ていかねば
人を呼んで追い払いますよ!

え~い! 二度と その姿を見せるな!」。

(露木)カット!
(カチンコの音)

そして 作画作業が佳境に入ったある日。

下山さん すみません。
演出助手の坂場です。

この動画の動きは
おかしくないですか? おかしい?

あっ それ 私が描いた動画ですか?
うん そうだよ。

何か おかしいですか?
おかしくないですかと

僕が聞いてるんです。

これは 馬が崖を下っていくシーンです。

ものすごい崖なんで
加速して 地面が迫ってきます。

だから 牛若丸も馬も
怖がりながら走ってるんです。

怖がっているなら
体を後ろに のけぞらそうとしませんか?

いや それでは 速く走っているように
見えないじゃないですか。

見て下さい。
馬が 崖を下っていく動きに合わせて

牛若丸や馬の顔が
伸びたり縮んだりしてますよね?

こういうのを アニメーションでは…。
ストレッチ アンド スクオッシュですか?

えっ…。
ディズニーの原則ですよね。

そです。
そういう表現は

動きに リアリティーがなければ
ただの説明になりませんか?

リアリティーって何ですか?

僕には 実際 まだ分かってないんです。

現実的な世界のリアリティー
追求しようとしているのか

アニメーションにしかできない表現を
追求しようとしているのか…

分かってないんです。
すみません 新人なもので。

これからも教えて下さい。
失礼しました。

東洋動画の問題点を
ずばり 口にしやがった…。

問題点?
えっ それは何ですか?

(堀内)この会社の方向性だよ。

どこに行きたいのか。
今 やってるのだって

日本の時代劇に ディズニーの要素を
適当に入れてるだけじゃないか。

待って下さい。 適当なんですか?

私は 仲さんや下山さんの原画は

その2つを結び付けてて
すごいなって思います。

ありがとう。 でも いいんだよ。
僕たちに 気を遣ってくれなくても。

仲さん 気を遣ってるわけじゃありません。

あの新人の言うことも
堀内君の言うことも正しいんだよ。

アニメーションの作り方に
明確な方法は まだないわけだから。

我々は 我々ができる新しい表現を

今 ここで
見つけていくしかないんだからね。

はい…。

なっちゃん。 これ 頼む。

僕が 原画を描き直してみたんだよ。

この絵を動かしてみてよ。

あのカチンコ君…
坂場っていう人が直しを要求してきた

馬と牛若丸の動き。

あれか…。

いい?
あの理屈をこね回すカチンコ君を

ギャフンと言わせる動画を
描いてちょうだい。

はい!

何か落としたんですか?

あっ いや… 馬の気持ちと
体重移動を研究してたんです。

ご苦労さまです。

あっ… ちょっと待って下さい!

教えて下さい。 アニメーションにしか
できない表現とは何か…。

それは…。

やはり あなたが 自分で考えて下さい。
えっ?

それを いつか 私に教えて下さい。

あなたが 本当のアニメーターならば。

あなたが 本当のアニメーターならば…。

あ~ もう… くっそ~!

また馬ですか?
馬です。

もし お役に立つなら…。

えっ?

私が 馬になって
ここを駆け下りましょうか?

大丈夫です…。

一人で なんとか頑張ります。

うわ~!

大丈夫?
大丈夫…。

(坂場)ん? 何ですか…。

これ!

これ! これ! これ! これ! これ!
これ! これ! これ! これ!

あっ あっ… ああっ! あ~…!

ああっ… えっ…。

♬~

また これで見て下さい。

(笑い声)

面白い。
えっ… そですか!

うん 面白いよ…
ちょっと マコちゃんも見て。

(ひづめの音)

(いななき)

前足 4本描いたの?
はい。

それなら 指定された動画枚数の中でも
たくさん動いてるように見えますし

それに タメを作っても

一連の動きの勢いを
殺さないと思ったんです!

面白いと思うわよ。
えっ 本当ですか!?

ただ 仕上げでの色のつけ方次第かな
という気もします。

やってみないと うまくいくかどうか
分からないっていうのが 正直な感想ね。

はい。

昭和33年の春です。

「わんぱく牛若丸」の制作が
大詰めを迎えていました。

まだなの? ここからの遅れは

仕上に迷惑かけるばかりだからね。
分かってる? 奥原さん。

分かってます。 今 描いてます…。
手 休めないで答えなさいよ。

まあ まあ
敵対しないで みんなで乗り切ろう。

下山さんも やって下さ~い。
(下山)は~い…。

そして 長編漫画映画
「わんぱく牛若丸」は完成しました。

「わんぱく牛若丸」の成功を祈って
かんぱ~い!

(一同)かんぱ~い!

♬「ソーレ ソレソレ お祭りだ」

なっちゃん 天陽には手紙書いてるの?

いや 最近は忙しくて…。

でも やっと落ち着いたんで
また書きます。

あっ いや…。
えっ?

こんな時に言うのはなんだけど…。

天陽は 今年の冬に結婚するんだ。

えっ…。

なっちゃん

♬~

(牛若丸)「うりゃ~!」。
そして 迎えた

「わんぱく牛若丸」の公開初日。

(いななき)

子どもが楽しめる漫画映画として
評判を呼び

大ヒットを記録しました。

考えてますか?
えっ?

アニメーションにしかできない表現は
見つかりましたか?

そう簡単には見つかりませんよ。

あの馬の足は偶然でしたか。

だったら そっちから言って下さいよ。

ありえないことも
本当のように描くことです。

違う言い方をするならば

ありえないことのように見せて
本当を描くこと…。

ありえないことも
本当のように描くこと。

どんなに ありえないことも
本当らしく見せる動きがある。

大きなうそから 真実を描き出す…

それをできるのは
アニメーションしかない!

ふに落ちましたか?

はい!

そして それから また一年。

なつは 動画の仕事を続けました。

だけど まだ ポスターや映画に

なつの名前が出ることはなく

その一年で 変わったことと言えば
これでした。

はい もしもし 風車です。

☎(富士子)もしもし なつ?

母さん?
おはよう なつ。

うん。
今年はどうなの?

なつ 帰ってこれんのかい?

あ…。

帰ってこい!
帰ってきて! なつ 帰ってこい!

よし 今年は帰る!

(拍手と歓声)

なつよ この娘さん 誰だか分かるか?

後半へ続けよ。