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<普通解雇の方法>

普通解雇するには、労働者側に解雇もやむを得ないといえる理由が必要です。具体的には、①労働能力面に問題があるとき、②健康状態の問題、③協調性を著しく欠くとき、④勤務態度不良のとき、などが考えられます。

企業からの制裁罰としての懲戒解雇以外に、労働契約を継続しがたいやむを得ない事由のあるときに認められる解雇を「普通解雇」といいます。
普通解雇は上記のような事実があったとしても、それがすぐに解雇の理由となるわけではなく、「客観的に合理的な理由」でなければ、解雇権の濫用として無効となります。労働能力面の問題や勤務態度が不良であった場合でも、その原因は何か、評価は適正であるか、解雇の警告を伴った観察期間を設けるなど、改善のために注意・指導を尽くしたか、などが考慮されます。
判例では「解雇事由は極めて限定的に解すべきであって、労働能力が平均的な水準に達していないというだけでは解雇理由として不十分であり、著しく労働能力が劣り、しかも向上の見込みがないときでなければならない」(セガ・エンタープライゼス事件:東京地決平11.10.15)とされています。
また、就業規則違反等の事実があっても、戒告等の程度の軽い処分から段階を踏んで処分しなければなりません。辞めさせるに際しては、1ヶ月間の猶予期間を置くか、平均賃金の30日分以上の解雇予告手当を支払って即時に辞めてもらうかします。また猶予期間を短縮する方法として、短縮したい分の予告手当を支払えば猶予期間のその分短縮できます。退職金の定めがあればこれも支払うことになります。

<社員の懲戒方法>

懲戒処分は企業秩序への違反者に対する制裁です。就業規則では次のような種類と内容の処分が定められています。軽い処分から挙げてみると、①戒告(将来を戒めるのみで始末書の提出なし)、②譴責(始末書を提出させて将来を戒めること)、③減給(労働者が受け取ることができる賃金から一定額を差し引くこと)、④出勤停止(労働契約をそのままとして就労を禁止すること)、⑤賞与の支給停止、⑥降格、⑦諭旨解雇(退職願や辞表の提出を勧告し、即時退職を求め、催告期間内に勧告に応じない場合は懲戒解雇に付するもの)、⑧懲戒解雇、などです。

懲戒権を持つには就業規則が必要
懲戒権の根拠について最高裁は、労働者が労働契約を締結したことによって企業秩序遵守義務を負い、使用者は労働者の企業秩序違反行為に対して制裁罰として懲戒を課すことが出来るが(関西電力事件:最判昭58.9.8)、その行使にあたっては就業規則の定めるところに従ってなし得るとしています(国鉄札幌運転区事件:最判昭54.10.30)。特に実務的には懲戒に関する規定を詳細に整備しておくことが必要です。特に従業員が10人未満の場合、就業規則の作成義務がありませんので(労基法89条1項)注意が必要です。

予防策
判例・学説に従えば、懲戒処分の根拠や手続きは就業規則の定めの有無と内容に大きく影響をされるため、各種の非違行為・服務規律違反等と懲戒手続(弁明の機会など)に関する規定を整備し、それがルーズにならないように、管理職による管理を徹底することです。
この中で、労基法は減額だけについて「1回の額が平均賃金の1日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えてはならない」と規定しています(労基法91条)。

<懲戒解雇の方法>

労働者を解雇するかどうかの意思決定は次の手順で行います。
まず、解雇しなければならない事由を正確に把握すること

その解雇事由に対して、就業規則の解雇規定を適用することができるかどうかを検討すること(就業規則違反の解雇は無効)

解雇方法が、労基法第19条・第20条・第21条及び労働契約法第16条の解雇条項に違反していないかどうか検討すること

解雇が、労基法第3条の差別的取扱いの禁止に違反していないか検討すること

過去の裁判における判例などを検討して、解雇の正当性を確認すること

懲戒解雇は、社員の重大な非違行為により即時解雇することをいい、解雇予告手当も支給しない厳しい処分です。予告手当はもちろん、退職金も支給しない旨の就業規則をおくのが通常です。いわば社員にとっては死刑宣告にも等しい処分です。

懲戒解雇とは、解雇の一形態であると同時に懲戒処分の一形態でもあります。懲戒解雇が使用者による制裁罰だからといって、使用者が自由勝手に行えるというわけではありません。法律では、使用者が懲戒解雇を含む懲戒処分について定めようとする場合には、その種類や程度に関する事項を就業規則で定めることを義務付けています。懲戒解雇を行うには上記のような手順を踏んで行うことが必要です。「それがどのような根拠に基づくものなのか」、「他の人の場合や前例はどうなっているのか」、「必要な手続きを踏んでいるのかどうか」などの点について、一つずつ確認しておくことです。
なお、懲戒解雇事由としては、経歴詐称、職務懈怠、職務命令違反、職場規律違反、私生活上の非行などがあります。懲戒処分については、その運用や行使にあたり、守るべきルールがあります。これまでの判例によると、そのルールは次のとおりです。
①懲戒事由、懲戒内容を明示すること《罪刑法定主義の原則》
②すべての労働者を平等に扱うこと《平等待遇の原則》
③同じ事由で二重に処分することは出来ないこと《二重処罰の禁止》
④懲戒規定の制定以前の行為には適用できないこと《不遡及の原則》
⑤連座制は許されないこと《個人責任の原則》
⑥処分の種類・程度には客観的妥当性が必要であること《相当性の原則》
⑦就業規則や労働協約などで定められた手続きが必要であること《適正手続きの原則》

<整理解雇の方法>

整理解雇は次の4つの要件をすべて満たす必要があります。
①企業が著しい経営危機に陥っていて、人員整理の必要性があること。
②解雇を回避するために相当な措置を講ずる努力をすること。上記解雇回避措置を講じたにもかかわらず、なお人員整理の必要上解雇する必要があること。
③被解雇者の選定基準が客観的かつ合理的なものであって、具体的な適用も公平であること。
④解雇に至る経過において労働者又は労働組合と十分な協議を尽くしたこと。

人事整理の必要性
この要件は、整理解雇の有効・無効を判断するのに最も重要です。人員整理の必要性が認められなければ整理解雇は無効になります。では、どのような場合に人員整理の必要性が認められるのでしょうか。かつての判例では、「人員整理をしなければ企業が倒産の危機に直面する程度でなければ人員整理の必要性は認められない」という、整理解雇に対して非常に厳しい見解をとっていました。すなわち、企業が倒産する一歩手前の状態になるまで整理解雇は認められないとする考え方です。
しかし、このような見解は、裁判所が企業経営者の判断に介入し過ぎることになり、また、企業の再建のチャンスを失わせることになりかねないので、最近では、「企業の合理的運営上やむを得ない必要性があれば足りる」とか、「企業の経営利益がマイナスとなり、整理解雇以外の方法で当面その解消が期待できない場合には、必要な範囲で整理解雇の必要性が認められる」などの考え方がとられるようになってきました。
また、一部の判例では、さらに条件を緩和して、「生産性向上等、経営の合理化のためであっても整理解雇の必要性は認められる」とするものもあります。ただし、解雇の必要性という点で緩やかな基準をとった場合には、他の要件(解雇回避努力等)を厳格に解する傾向にあります。

解雇回避の努力
解雇が労働者に与える不利益は非常に大きなものです。したがって、経営者が解雇を行う前には、解雇を回避するための措置を可能な限り講じなければなりません。
そのような措置としては、希望退職者の募集、配置転換、出向、一時帰休、労働者の短縮、残業の廃止、新規採用の中止、昇給停止、一時金の支給停止などが挙げられます。
それらを行わずにいきなり整理解雇の手段に出た場合は、解雇回避努力義務を尽くしていないといえます。特に希望退職の募集をせず、いきなり指名解雇した場合は、基本的に解雇回避努力義務を尽くしていないと判断されることになるのです。また、希望退職の募集をした後、その応募者に対して使用者が慰留している場合も、解雇回避努力義務を尽くしていないことになります。
判例としては、「(売上高の減少を理由に行った整理解雇につき)人員整理の必要性は認められるものの、希望退職者の募集を1年以上行っていないことなど、解雇回避の努力を尽くしていない」としたもの、「人員削減は希望退職募集期間経過後わずか10日余り後に解雇通告を行っており、整理解雇回避努力を尽くしたというには疑問がある」としているものなどがあります。

人選の合理性
誰を整理解雇の対象者とするかの選択についても合理性、公正さが求められます。たとえば、労働組合に入っている者を狙い打ちにして、解雇の対象者とすることなどは認められないことがあります。臨時雇用者、パートタイマーなどがいる場合は、まずそれらの者から解雇すべきであり、そのような労働者を温存して正社員を解雇することは原則として認められません。「工場秩序を乱す者」「会社業務に協力しない者」「職務怠慢な者」「技能低位な者」「事故欠勤が多い者」「一定の年齢以上(たとえば満55歳以上)に達する者」などを整理解雇の対象者にすることはどうでしょうか。
このような事例が争われた判例においては、これらの基準には合理性があると認められています。つまり、他の予見が満たされていれば、これらの者から解雇は許される、ということです。また、解雇される労働者の生活上の打撃の程度を基準とすること、たとえば解雇される労働者の再就職可能性や家族構成などの生活事情を考慮することにも合理性がある、とされています。

手続きの妥当性
整理解雇にあたり、経営者は労働者や労働組合に対し、人員整理の必要性やその内容(時期、規模、方法等)について十分な説明を行い、理解と納得を得られるように努力すべき義務があるとされています。その説明や協議を怠ると、いざ裁判になった場合に経営者側に不利に働くばかりでなく、労働者の不満や不振が増大し、無用な摩擦や紛争を引き起こすことにもなりかねません。経営者としては、十分な説明や協議を行い、きちんと手続きを踏んだうえで、整理解雇を行わなければならないことに注意すべきです。


<能力不足による解雇は許されるのか?>

地位特定者の場合、能力不足による解雇を行うことができます。

地位特定者の解雇
地位特定者とは、ヘッドハンティングされた人や人材紹介会社から紹介を受けた人で、大企業などで地位を特定されて採用された人のことをいいます。地位特定者は労働契約で地位が特定されているわけですから、その職務を遂行する具体的能力と的確性があることが契約内容になります。
ですから、営業部長としての能力がないことを理由に労働契約を解消することができます。営業部長という地位を特定して採用したわけですから、次長への降格や他の部長職への配転などして、雇用を保証する必要はありません。たとえ正社員といえども契約内容によっては、こういうこともあり得ます。
地位特定者と新卒一括採用ゼネラリストとの違いは明確です。ゼネラリストの場合は、仮に5億円の目標が達成できないとしても、それは人事考課の対象事項であり、これだけで解雇することは難しいといえます。ですから、降格や配転を非常に厳しく行う必要が出てきます。

実務上の注意点
実務では、地位を特定して採用する場合、そのことを明らかにするために、個別に労働契約書を作成する必要があります。また、画一的な能力を前提とした従来の就業規則に基づいて処遇することは困難ですから、労働契約書には企業が望む職務内容も記載します。
さらに、仕事の目標を明示しておくことです。なぜなら、その社員の将来的な処遇や待遇は最終的には提示した目標が達成されたかどうかだけによって決定されるからです。また、それなりの賃金処遇や待遇をしておく必要もあります。

<強調性のない社員の解雇>

社員が強調性のない場合は、会社の規模によって取扱いが異なることがあります。大企業であれば配置転換によってその者の環境を変えることによって判断できます。しかし、中小企業であれば、配転できる部署もないため即時解雇もやむを得ないでしょう。ただ解雇する前に本人に対して注意、指導、警告することが必要です。

中小企業などの比較的少人数の職場では、一人で仕事をするのではなく、チームワークで仕事をしなければなりません。そういう職場の中で規律と協調ということは社員として重要な適格性です。常識に欠け、上司とよく意見対立があったり、同僚とトラブルをしばしば起こすということは、チームワークを乱し、業務に支障を現実に生じさせているので、職場に適応する能力が欠いており、将来の見込みがないと判断されてもやむを得ないところです。ですからこのような協調性のない社員は解雇することができます。

指導・教育の徹底
解雇ができるといっても、いきなり解雇するのは得策ではありません。手順を踏むことが重要です。
①まず上司や同僚とトラブルを起こしたときに「戒告」を文書で与えます。警告文の中で、過去に何度か注意、指導を与えたが、本人が善処しなかったことを記載します。
②この段階で本人が悔い改めて協調性のある社員になってくれれば問題ありません。
③また次にトラブルを起こしたときは、始末書を書かせます。この段階で再々度トラブルを起こしたときは、人事上の厳しい処分があることを申し渡します。
④それでも懲りずにトラブルを続けるときは、減給、降格、出勤停止などの処分とします。
⑤さらに、退職勧告をして
⑥自主退職しなければ普通解雇処分にします。

<遅刻・欠勤の多い社員の解雇>

労働基準法は、使用者に対し労働者を解雇する場合には30日前に解雇の予告をすること、あるいは解雇予告手当を支払うことを義務付けています。(1)天災事変その他やむを得ない事由のため事業の継続が不可能となった場合、(2)労働者の責めに帰すべき事由に基づいて解雇する場合であって、労働基準監督署の認定を受けたときは、解雇予告義務が免除されることになっています。
(2)の「労働者の責めに帰すべき事由」に該当するかについては、個々の事案ごとに総合的かつ実質的に判断されるべきものですが、行政通達においては、例示として、①原則として軽微なものを除き、事業場内における盗取、横領、傷害等刑法犯に該当する行為があった場合、又は事業場外における同様の行為であっても、それが著しく事業場の名誉もしくは信用を失墜するようなとき。②賭博、風紀紊乱等により職場規律を乱し、他の労働者に悪影響を及ぼす場合、又は同様の行為が事業場外で行われた場合であっても、それが著しく事業場の名誉もしくは信用を失墜するような場合。③雇入れの際の採用条件の要素となるような経歴を詐称した場合、及び雇入れの際、使用者の行う調査に対し、不採用の原因となるような経歴を詐称した場合。④他の事業所に転職した場合。⑤原則として2週間以上正当な理由なく無断欠勤し、出勤の催促に応じない場合。⑥出勤不良常ならず、数回にわたって注意を受けても改めない場合、としています。

<セクハラ社員の解雇>

セクハラをした社員を解雇できるか否かについては、通達や指針にいうセクハラに該当するからといって、直ちに解雇が可能かどうかは困難な問題です。会社としては使用者責任の問題もあるので、厳正に対応することが必要です。

懲戒処分を行うにあたっては、①セクハラの程度に応じ、他の懲戒事由との均衡を図りながら慎重かつ公正に行われなければならないという一般的要請があり(ダイハツ工業事件:最二小判昭58.9.16等)、その処分の有効性が争われる危険があります。また、②温情的な処分の結果、問題が再発した場合は、適切な処置を怠ったとして企業が強く責任を問われることにもあり得ます。
企業内でセクハラが生じた場合、行為者への制裁等の雇用管理上、措置を講じるにあたっての留意事項につき、厚生労働省平成13年2月26日付「職場におけるセクシャルハラスメントの実効ある防止対策の徹底について」との通達でも指摘されていますが、最近になり、セクハラ加害者への解雇等の制裁措置の有効性をめぐる判例が相次いで現れているからです。
肉体的接触を伴う悪質な事案で懲戒解雇が有効とされた例として、観光バス運転手が未成年のバスガイドに対してわいせつ行為に関する西日本鉄道事件(福岡地判平9.11.5)や、観光バス会社の運転手の取引先女性添乗員などの胸等に触れたりホテルに誘うなどの行為に関する大阪観光バス事件(大阪地判平12.4.28)、高校教員の洋上研修中の女性教員への肉体的関係や性的な言動等を理由とする戒告処分及び解雇処分が有効とされた新宿山吹高校事件(東京地判平12.5.31)、管理職による部下の女性に対する性的な内容のEメールやデートへの誘い等の性的言動を理由とする普通解雇が有効とされたF製薬事件(東京地判平12.8.29)があります。セクハラへの損害賠償額につき、平成11年後半に至り、700万円~1,100万円台と高額になっており、会社のイメージダウンのみならず、実績も多大になっています。

<社内不倫をしている社員の解雇>

単なる不倫による解雇は難しいですが、懲戒の対象となることもあります。

私生活上の非行で解雇できるかについては、業務に支障をきたし秩序を乱したとか、企業の体面等を傷つけたとか、実際に損害を与えたなどの場合に限られる、という考え方が一般的です。
たとえ不倫であっても、それが私生活上の問題にとどまる限り、会社側がそれを禁止することはできません。しかし、そのような男女関係が公になることで、業務に支障をきたしたり、さらに得意先のひんしゅくを買ったりするなど、対外的にも悪影響を及ぼすような場合は、解雇その他の制裁の対象とすることができます。すなわち、その社員の立場、仕事内容、会社の業種、取引先との関係等、総合的に判断されることになります。したがって会社側が具体的な損失を受けたのでなければ、いきなりの解雇というのはできません。判例では、バス会社に勤める妻子持ちの運転手が、バスガイドとの恋愛を理由に懲戒解雇されたケースで、「私生活上の問題に関しては、その行為が使用者に具体的損害を与えるものに限り、解雇権の行使ができる」と裁判所は判断し、そのケースで解雇は無効とされています。
就業規則等に懲戒条項が規定されていれば、そのことが使用者が行う懲戒処分の法的根拠になりますが、その場合でも起こした事と処分の相当性などが問題となります。就業規則等に根拠とする規定がない場合は、労働者を当然には懲戒処分できないとする判例も多くあります。
現実には口頭の注意・指導、あるいは警告にとどめ、仮に処分するとしても、譴責、減給、出勤停止程度の処分になるでしょう。

<経歴を偽って入社した社員の解雇>

経歴を偽って入社した社員についての懲戒解雇は有効です。なぜなら労働者が採用時の履歴書の記載や面接などにおいて過去の経歴を偽り真実を隠す経歴詐称は,労働者の使用者に対する信義則違反として多くの企業が就業規則の中の懲戒事由としています。なぜなら、労働者が労働契約締結時に信義則に違反し、労働者の提供する労働力の評価を使用者に誤らせ、職種決定、配属決定、賃金などの労働条件の決定にも影響を与え、企業秩序を侵害する危険があるからです。

懲戒解雇するには
一般に企業が労働者を採用するにあたって履歴書を提出させ、採用面接において経歴の説明を求めるのは、労働者の資質、能力、性格等を適正に評価し、その会社の採用基準に合致するかどうかを判定する資料とするだけでなく採用後の労働条件人事配置等を決定する資料とするためですから、本人の経歴についての申告を求めるのは会社にとって当然のことです。したがって、反面として、会社に雇用され継続的な契約関係に入ろうとする労働者は、その会社から履歴書の提出を求められ、あるいは採用面接の際に経歴についての質問を受けたときは、真実を告げるべき信義則上の義務があるのです。
しかし、経歴詐称によって懲戒解雇するには、単に労働契約締結過程において信義則上の義務に反したというわけでは足りず、原則としてそれにより本来与えるはずのない賃金、職種等を取得したなどの企業秩序侵害の事実が存在することが必要なのです。
実際の適用は、些細な経歴を隠したに過ぎない場合には、懲戒解雇処分は難しいでしょう。ゆえに、経歴詐称がいかなるものであるかをよく検証したうえで、懲戒処分を検討すべきです。

<二重就労者の解雇>

二重就労者についての解雇は、就業規則に兼業禁止が定められ、業務の影響も予想されるような勤務に対しては解雇も可能です。

兼業禁止の有効性
多くの会社の就業規則で「会社の許可なく他人に雇い入れられること」などを禁止し、その違反が懲戒事由として定められています。裁判所は就業規則で二重就職・兼業を禁止することの合理性を認めています。たとえば、懲戒事由である「会社の承認を得ないで在籍のまま他に雇われたとき」との規定は、労働者が就業時間外に適度な休養をとることが誠実な労務提供のための基礎的条件であり、また兼業の内容によっては会社の経営秩序等を害することもあり得るから、合理性があるとしています(小川建設事件:東京地判昭57.11.19)。
対応策
社員が風俗店などでの業務について取引先でも評判になるなど企業秩序への影響も出ている場合には、単なる普通解雇にとどまることなく、懲戒解雇にもあたる行為といえ、会社の他の社員への波及効果や取引先への信用の回復のためには懲戒解雇を行うのもやむを得ないものと考えられます。
予防策
このようなトラブルを避けるためには、何よりも社員が兼業など必要のない労働条件の整備・充実が必要ということになります。次善の策としては、就業規則をおくだけにとどめず、その趣旨を研修等を通じて徹底するなど、普段から社員の社外の行動に対してもプライバシー侵害に抵触しない範囲で注意しておく以外にはないでしょう。特に若年労働者のクレジットカード漬けなどから、他社兼職へののめり込みの事態を注意しなければなりません。

<本採用の拒否の仕方>

試用期間といえども労働者を解雇するには、解雇に値する客観的に合理的な理由が必要です。ただ、試用期間中は就業規則や労働契約等で使用者側に解雇権が大幅に留保されている場合が多く、解雇理由が恣意的なものでない限り、比較的簡単に解雇することができます。

試用期間
試用期間とは一般的に本採用決定前の期間であって、その間に労働者の勤務態度、能力、技能などを見て、事業主が正式に採用するかどうかを判断し、決定するための期間です。通常、採用後1ヶ月から6ヶ月くらいの期間ですが、その期間中は就業規則や労働契約等で、本採用者に比べて解雇権を広範に留保する企業が多く、このような解約権留保に基づく解雇は、通常の解雇よりも広い範囲において解雇の自由が認められるものと解されています。
試用期間中は簡単に解雇ができる?
しかし、試用期間中は解約権が留保されているとしても、その行使は全く自由というわけではなく、解約権留保の趣旨・目的に照らして客観的に合理的な理由が存在し、社会通念上相当と是認される場合のみ許されるものと解されます。したがって、軽易な作業ミスにより解雇することは解雇権の乱用として認められるものではなく、解雇権を行使するためには、作業ミスの程度・回数及び作業ミスを少なくするための事業主としての指導や措置等を含め、客観的で合理的な理由が求められます。ですから、その試用社員を解雇するためには解雇の理由が就業規則や労働契約に基づいたものかをきちんと説明してください。また、試用期間中といえども、14日を超えて雇用されている場合は、労働基準法に基づく解雇予告が必要です。使用者は少なくとも30日前に解雇予告をするか、即日解雇の場合は、30日分以上の平均賃金を解雇予告として支払う必要があります。

<役員の首切り法>

取締役解任決議は特別決議事項とされています(商法257条2項)。特別決議とは発行済株式総数の過半数に当たる株式を必要とする株主が出席し、その出席者の3分の2以上の賛成が必要とされる決議のこととされています。したがって、代表取締役が3分の2以上の株式を有していれば、取締役を簡単に解任することができます。

商法232条によれば、株主総会を開催することを少なくとも2週間前には各株主に通知しなければなりません。そして、商法231条により、株主総会を招集するのは原則として取締役会の権限とされています。解任される取締役からすれば、自らの解任決議のための株主総会招集に難色を示すことが十分に予想されますので、取締役会は株主総会を招集しない場合も考えられます。
そこで、商法237条1項により、6ヶ月前より引き続き発行済株式総数の100分の3以上の株式を有する株主は、株主総会の招集を請求できるとされています。そして、商法237条2項により、株主総会の招集請求があったにもかかわらず、株主総会の招集がなされない場合には、裁判所の許可を得て株主総会で招集することができるとされています。もちろん、このような手続きで株主総会を招集しても、数の論理で取締役解任決議が否定されてしまう場合も十分あり得ます。
しかし、商法257条3項により、取締役解任の訴えをする場合の要件を満たすことになりますので、その意義は少なくありません。以上のような手続きを踏まえたうえで、取締役解任決議を断行すべきか、それとも取締役自身による自主的な辞職を求めるのか等の法的手段を検討していくことになると考えられます。任期途中の解任であると任期満了までの報酬を請求された場合、任期満了までの報酬を支払うことになります。社員兼務取締役を辞めさせる場合、取締役解任のための手続きと社員解雇のための手続きの双方をとる必要があります。また、解雇の手続きを強行した場合、相手方から仮処分などの法的措置をとられるおそれがあるので注意を要します。

<パートタイマーの雇い止め>

一定の条件が整っていれば、雇い止めはできます。ただし、その場合でも解雇予告は必要になります。

経営合理化にあたって人員削減を行う場合、先ず最初に正社員からではなく、パートのような非正規社員から整理していこうと考えるのは、経営者として当然のことです。なぜなら、パート社員は雇うときに採用が簡単に行われていること、仕事も簡単な労務に従事していること、正社員とは異なり契約期間が定められていることなどから会社との関係が希薄であるからです。しかし、たとえパート社員とはいえ、契約期間が定められていない者やこれまで長期間契約が自動更新されて働いてきている者などには、正社員と同じような解雇の方法が必要となります。そのような場合には、どうしても雇い止めしなければならないような事情が必要とされます。
なお、労基法は雇用期間が2ヶ月以内と定められている場合には、雇い止めを行うにあたって解雇予告は必要ないとしています。しかし、たとえば同じ期間でも既に5回も契約更新をしているなどの場合は、雇い止めにあたっては正社員と同じように正当な理由が必要になります。
まず、契約更新する際には自動更新をしないことです。煩雑であっても新たな雇用契約書を作成してください。そうすることにより、正社員との地位の差が明確になるからです。また、1回の人員削減にあたっては必要最低限の人数をカットする姿勢を貫くとともに、他のとり得る方法で実行することが必要です。雇い止めにあたっては、ターゲットの選択には客観的な基準をきちんと策定しておきます。

<内定の取り消し法>

新規学卒者に対して採用を内定して通知した場合には、会社と内定者とのあいだに労働契約が成立します。しかし、内定者が卒業できなかった場合、身上書の記載に大きな誤りがあった場合、会社側の大幅な業績悪化のためやむを得ない場合など、社会通念上合理的であると認められるときには、会社の方で採用内定を取り消すことができます(解約権を留保した労働契約の成立)。

思想・信仰・家系・出身地等を理由とする不合理な取り消しは認められません。そして、会社の事情による取り消しも不況による業績悪化等を理由とする場合にはやむを得ないものの、もともと内定者側には落ち度はないのですから、その他の場合には事情の如何により権利の濫用とされて取り消しが認められないことがあります。また、取り消しが正当と認められた場合でも、会社の都合で取り消すというからには損害賠償の問題(内定者の信頼利益の補償)が残りますので、内定者に事情をよく説明して了解してもらう努力を尽くすことが肝要です。ただし内定取り消し会社への行政処分の可能性がありますので、くれぐれも慎重に行うことです。
また、内定取り消しが本人の適性などの理由による場合は、できるだけ早い時期に本人に連絡することが大事です。というのは、本人が次の就職活動をしやすくするためでもあるからです。この場合でも「内定辞退届」を提出させるのがトラブル回避のコツです。
内定者側が会社に入社を断ってきた場合、それが契約違反であることには相違ありませんが、訴訟等により本人に労働契約を履行するように強制することはできません。なぜなら、労働者の意思に反して就労を強制するのは強制労働の禁止規定(憲法18条・労働基準法5条)に抵触することになるからです。

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