自衛隊の重要な役割が教科書に掲載されたことの意味合い

日刊SPA! / 2019年6月29日 8時54分

写真

陸上自衛隊公式ツイッターより

小笠原理恵「自衛隊ができない100のこと 59」

◆占領統治時代、GHQが行ったWGIPとは?

 昭和20年の敗戦後、我が国はGHQによる6年7か月28日の占領統治を受けました。その間、行政権や外交権など様々な権利を制限され、旧日本軍は解体。新聞は記事の検閲を受け、占領統治下でおきた略奪や強姦などの犯罪を報道することは禁じられていました。戦争に負けて食料や生活必需品の生産能力や輸送能力を失い、庶民が生活に困窮するのは、敵国の攻撃によるものです。終戦直後の日本人はそう考えていました。

 しかし、占領統治下でWGIP(War Guilt Information Program)と呼ばれる日本人の心深くに「戦争についての罪悪感」を植えつける宣伝計画が徹底されました。WGIP(War Guilt Information Program)についての代表的な書籍である江藤淳氏の『閉された言語空間 -占領軍の検閲と戦後日本』(1989年刊行)の分析が適確です。戦争は「軍国主義者」の暴走で起こり国民は犠牲者だとする刷り込みがWGIPにより繰り返し行われました。

 その結果、日本と連合国との戦争が、現実には存在しなかった「軍国主義者」と「国民」との戦いにすり替えられました。日本人の不満は二度と再び米国に向けられることなく、もっぱら「軍国主義者」と旧秩序の破壊に向けられるに違いないという指摘通りになりました。

◆北朝鮮の度重なる挑発があっても政府批判を繰り返す日本メディア

 北朝鮮からミサイルが発射され、国民の生命と財産が危険にさらされても我が国のメディアは政府が悪いと報道します。外国からのミサイル発射があればミサイルを撃った相手国への抗議の報道があるべきです。今もこのWGIPの考え方が深く残る我が国では、国内に抗議が起こります。国家は国民の敵だという刷り込みを受けた結果、国旗や国歌を憎悪をもする人達もいます。国の自衛権ですら危険思想と感じるほどの強い刷り込みです。「憲法改正すると自衛隊が戦争を始めるぞ!」といった論調はまさにその当時のプロパガンダそのものです。

 新時代令和が始まりました。我が国の領海に野心を持つ国の公船が連日、領海近くに現れる不安定な情勢です。自衛のために我が国が必要な防衛力を持とうとすると必ず起こる強い反発。今もGHQが植えつけたWGIPの呪いは根強く残っています。でも、戦後70年も過ぎているのです。いい加減、目を覚まさなくてはなりません。安倍政権になってその動きがやっと教科書で始まりました!

◆『しんぶん赤旗』も自衛隊の重要な役割が教科書に載ったと報道

 自衛隊はこのWGIPの影響もあり、常に世論や教育の現場で否定的に扱われる存在でした。憲法9条2項に「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない」とあるのに、自衛隊は憲法で禁止された軍隊にあたるのではないかといった記述が教科書に記載され続けました。自衛隊員やその家族が学校で悲しい思いをしていたことは、この連載の第51回(「パパの仕事って違憲なの?」 自衛隊は学校でどう教えられている)でも取り上げた通りです。我が国の政府や軍が国民に災厄をもたらしたという思想が刷り込まれたことで起こった悲劇です。

「自衛隊を海外に出せば戦争を始めるぞ!」「海上給油活動支援に自衛隊を出せば戦争を始めるぞ!」「平和安全法制や国民保護法ができれば自衛隊は戦争を始めるぞ!」と何度も何度も何度も戦争が始まるぞという報道がありました。自衛隊が何か新しいことをするたびに世論や特定の団体が大騒ぎします。

 しかし、令和になった今もまだ自衛隊は戦争を始めていません。とうとう「平成」の御代は戦争のない平和な時代で幕を閉じました。WGIPに刷り込まれた「ありもしないウソ」に今も踊らされるほど私たちは愚かではありません。だってもう戦後70年以上ですよ?

◆やっと平和と安全を守る自衛隊の役割が明記されたことの意味合い

 新しい時代「令和」が始まりました。前述のとおり、これまで教科書で自衛隊が触れられるときは「自衛隊は違憲である」というような否定的な内容ばかりでした。しかし、平成23年の東日本大震災の救援や復興支援での活動など誠実な自衛隊の姿は世論を変えました。平成29年度に内閣府が行った「自衛隊・防衛問題に関する世論調査」のなかで「自衛隊に対する印象」を問う質問には、実に89.8%の人が自衛隊に対して良い印象をもっています。変わりはじめています。

 そんなとき、自民党文部科学部会長でもある参議院議員・赤池誠章氏から「自衛隊の災害派遣、海外派遣等の重要な働きが教科書にとうとう明記されました」と教わりました。「『しんぶん赤旗』(日本共産党中央委員会発行)は報道してくれました」いうことでしたので、さっそく当該記事を探しました。

 2019年3月27日付の『しんぶん赤旗』によると2018年の小学校教科書改訂で教科書に自衛隊の記述が登場したとあります。小学校4年の教科書で災害派遣や救援に関して、警察・消防に加え自衛隊を取り上げたそうです。また、小学校6年生の教科書で自衛隊が南スーダンへの派遣で道路補修などの協力をしたとの記述が加わりました。

 さらに「憲法」の平和主義の部分には「自衛隊の役割」という記述も加わりました。これまでの自衛隊については否定的な記述だけの教科書から脱却したようです。

◆「領土教育」では国際法に基づく正当な手続きを踏んで領土を確定させた事実を記載

 ほかにも領土問題で「北方領土」や「竹島」「尖閣諸島」を日本固有の領土として明記し、尖閣諸島についても「領土問題は存在しない」という正しい認識を、小学生でも理解できるようにして書き加えています。

 学習指導要領が変わり、領土や拉致問題、自衛隊、国民保護法の記載や原発風評被害の改善、祝日の歴史的由来や憲法改正手続きなど重要なことを教えようという意思が随所に見られます。幼稚園から国歌「君が代」に親しむようにという部分も画期的です。これまで見向きもされなかった多くの改善点が学習指導要領にありました。

 平和主義という言葉についても、「自衛隊が我が国の平和と安全を守っている」ことに触れるように配慮されました。平和は自衛隊が守っているという大事なことを私たちはやっと子供たちに教えることができるのです。長い長い占領統治時代にできたWGIPの作った「軍は暴走して戦争を起こすもの」という間違った認識を次の世代には残したくないものです。

「平成」は戦争のない穏やかな時代でした。「令和」は我が国とそれを守る自衛隊への敬意を取り戻す時代に変わる予感がします。こんなGOOD NEWSを報じないなんて信じられません。学習指導要領改訂に乾杯です!

【小笠原理恵】
国防ジャーナリスト。「自衛官守る会」顧問。関西外語大学卒業後、報道機関などでライターとして活動。キラキラ星のブログ(【月夜のぴよこ】)を主宰

今、あなたにオススメ

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング