今回は、すでに販売終了して古酒となった、竹鶴ピュアモルト12年を飲んでみます。

破格の12年ブレンデッドモルト

tk12_2019_竹鶴ピュアモルトは、2000年に12年ものが最初のリリースでした。

すでにレッド、ブラック、ホワイトの3種類のノンエイジタイプのピュアモルトが発売されていましたが、ウイスキーの消費が著しく低下し、長期熟成の原酒がだぶつく状況になったことで、敢えてその原酒を贅沢に利用できる環境が整っていたと言えるでしょう。

1997年に、ブラックニッカ クリアブレンドが一定の成功を収めたことで、業務用を中心とした戦略として、余市と宮城峡のモルトだけでブレンデッドのような飲みやすいウイスキーを作る、しかも12年以上の熟成したものに厳選する、という企画で、開発が進められました。

最終的に宮城峡モルトをベースに余市のシェリー樽原酒をブレンドすることで、竹鶴12年は完成しました。
当初は角瓶で容量は660mL、値段は当初から2500円未満という破格で発売されました。
ライバルであるサントリーの山崎12年が6000円、ニッカのシングルモルト、余市10年や宮城峡10年が5000円だったことを考えても驚きの値段だったと言えます。

2005年には700mLの丸瓶へとリニューアルし、2014年まで販売されました。

さて、終売から5年が経過した現在では、古酒であってもネットの通販でも2万円オーバーが当たり前、当時よりも10倍近い値段がついています。

長期熟成の原酒が圧倒的に少ない現在においては、2000円台で買えていたことがとても破格だったと改めて思い知らされるでしょう。

ただ、現行の竹鶴17年が2万円台で購入できることを考えると、無理に12年を買う理由はないかもしれません。

今回手に入れたボトルは、2005年~2011年までに発売された丸瓶の初代で、容量は660mL、2011~2014年までのものよりも容量が若干少ないです。

なお、以前にこのブログでレビューしたのが2013年、始めたての頃ですので、その頃より感想が大きく変わっているかもしれません。

百花繚乱の香り 納得のまろやかさ

では、いつものようにストレートから飲みます。
グラスに注ぐと、液色は中庸な琥珀色、香りはブドウを中心として、奥からカカオ、そして燻製のようなピートが続きます。

口に含むと、アルコールの刺激は殆ど無く、ブドウ、リンゴ、メロン、オレンジ、カカオ、バナナ、ピートと、多種多様な香りが次々とやってきます。
味わいは、ほろ苦さが先に来るものの、後から果物の酸味と甘みが交互に訪れます。

ロックにすると、リンゴの香りが先行し、その後はオレンジとライムの爽やかな香りが追いかけ、燻製のスモーキーな香りと共にバナナ、カカオの香りが殿を務めます。
味わいは、引き続きビターが先んじるものの、後から甘みが追いかけ、酸味も続きます。

最後にハイボールでは、余市由来のピートが前に来るようになり、燻製のようなスモーキーさを持ちつつも、リンゴ、ブドウ、バナナのフルーティな香りが続いてきます。
味わいは、酸味が目立ち、ビターは抑え気味になります。後味には甘みも得られます。

現行のノンエイジも、今のニッカのラインナップからすれば深みのある香りや味わいを持っていますが、12年を飲むと、余市モルトのスモーキーさと、宮城峡モルトのフルーティさが絶妙にマッチし、なおかつアルコールの刺激を感じさせないまろやかさ、長期熟成の豊かな香りは、改めて飲んでもノンエイジを大きくしのいでいます。

それだけに、当時2000円台でこんなお酒が飲めたなんて、亡き父もこのボトルが大好物だったのですが、贅沢にもほどがある時代だったんだと改めて実感しました。

しかしながら、通販やオークションでの値段は過大評価しているように思えます。
繰り返しますが、現行の17年がプレミアがついても2万円で買えることを考えると、12年は1万円当たりが妥当だと思います。

なお、アルコール度数は最後まで40度でした。17年、21年は、発売当初からアルコール度数が43度です。

<個人的評価>

  • 香り AA: ブドウ、リンゴ、メロン、オレンジ、ライムといったフルーティさの奥に、カカオ、燻製のピートがアクセントをもたらす。
  • 味わい A: アルコールからの辛みがなく、ストレートもまろやか。全体的にほろ苦さと酸味がメイン。奥から甘みも。
  • 総評 A: 2000円ではあまりにも安すぎるほど贅沢なボトル。だが2万円はあまりにも過大。

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