なつぞら83話 感想あらすじ視聴率(7/5)戦災孤児の境遇を浮き彫りに

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妹を抱きしめてやれ

菊介が、やっとここで絞り出します。

「そったらことって、あっかよ……」

悠吉も付け加えます。

「よっぽどの思いだべ……」

ここで、なつは最後の便箋をめくります。

追伸

私の記憶の中にある、お兄ちゃんとお姉ちゃんを描きました。

感謝を込めて、ありがとう――。

そこにあるのは、咲太郎となつの似顔絵でした。

涙を流したまま咲太郎はこう言います。

「うまいな……」

「うまいね、上手だね……」

きょうだいは、父に似て絵がうまい妹のことを思うのでした。

ここには作劇上の意図がしっかりありまして。
なつが一番その適性があるのでしょうが、咲太郎も千遥も絵が上手。絵で家族がつながるということでしょう。

そのあと、なつは部屋に残された千遥のワンピースを抱きしめて、泣くのです。

なつよ、千遥を抱きしめてやれ――。
父がそう見守るのでした。

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シンデレラストーリーはハッピーエンドなの?

本作は、結構根源的なところを突いてくると思います。

千遥は、シンデレラストーリーそのままです。
貧しい女の子が、親切な魔法使いのような女将に救われて、洗練された美人になるのですから。

着物の着こなし、清原さんの身のこなし、お見事でした。
それで上流階級の男性から、結婚を申し込まれた。これぞシンデレラと言えます。

しかし、それだけでよいのでしょうか?

セレブ婚しか頭にない、前作****の女性陣ならそれでおしまい。
そうなるでしょう。

しかし、そんな単純な話ではありません。
千遥の結婚相手は「上層階級」という一点しか示されていないわけです。

初婚ではなく、再婚ということもありえましょう。
父、場合によっては祖父くらいの年齢差がある可能性も、考えられます。

衣食住は保証されるとはいえ……。

もうひとつ。
相手が価値を見出したところは、千遥の美貌や華やかさです。
その人生や境遇に、価値を見出していない可能性はあります。

千遥が戦災孤児とわかれば、破談にしてしまう。
心の底から愛しているわけでもなく、綺麗なお人形のように愛玩するつもりなのかもしれない。

シータにとってのムスカではないとは、ここだけではわからない。

千遥に心から、悔いなく幸せになって欲しいのであれば、過去も家族も、受け入れられるのではありませんか。
大切だと言いながら、見た目しか褒めない。そういう相手とともにいて、幸せなのかどうか。

幸せって何でしょうね。

千遥に家族を捨てさせ、妻にする。
そんな幸せって、どういうことでしょうか。

シンデレラストーリーはそういうものかもしれません。結婚すればハッピーエンド。

しかしそうではないと、2019年現在、世界は気付いているわけです。
だからこそ、今を生きる私たちには、千遥の決断がハッピーエンドには見えないのでしょう。

そしてこれは、相手だけの問題でもないのです。

戦災孤児、特に女性が、その経歴を隠すことは多かったものです。
社会が彼らを【劣った存在】として烙印を押し続けたから。

それがいかに残酷であったか。
本作は、それをつきつける、そういうフィクションの力を持っています。

『火垂るの墓』を見て流した涙が、戦災孤児の境遇を引き出したように。
フィクションには、忘れられた事実を掘り起こし、想像させ、涙を流させる力があるのです。

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真田信尹「また読まんでいいのか……

今日の蛇足。

ニュース掘り出しコーナーです。

◆クマの「すーさん焼き」人気 祖父遺した木彫り熊を型に:朝日新聞デジタル

おっ、これは欲しくなりますね。
北海道に行きたくなるなあ。

そしてお次、NHK東京がメディアコントロールをあまりしていない証拠です。

◆朝ドラ『なつぞら』20%超えだけど……広瀬すずらの圧倒的“令和感”ってどうですか?|ニフティニュース

“令和感”って、そもそもまだ存在するかわからないと思うんですよね。
改元なんてこの前あったばかりです。

それはさておき、朝ドラを侮辱するのもいい加減にしてください!
時代考証がお粗末だなんて、そんなのわかりきったことじゃないですか!

当時は上流階級女性が育児なんてしていない。
そんなことは日本史の授業で習ったかな。まぁともかく、そういうものです。

それでもヒロインのあさは、育児に悩んでこそでしょ!
だからああしました。

「開拓使事件」なんて、史実再現したら盛り上がらないんです。
人気キャラの五代様はクリーンでないと。

あ、『あさが来た』ですね。

モデルの姑が史実では寛大でも、やっぱり金髪嫁のエリーはいびらないと。
そこを視聴者は見たいんです!

あ、『マッサン』ですね。

サブキャラが薄いって、そんなこと言わないでくださいよ。
確かに、ネトゲ画伯の息子二人が跡形もなく消えたことは、ホラーじみていましたよ。ヒロインの甥ですからね。

そんなヒロインの親友はATMでした。あれは何だったんでしょう。
まぁ、いいじゃないですか。時間がなくてギリギリだったんです!

あ、前作****ですね。

この記事であげられている欠点は、ここ数年のNHK大阪が顕著にやらかした事例ばかりなんですよね。
それなのに、どうしてあちらには突っ込む記事が少ないのでしょう?

本作にもミスはあります。
ただ、本作は作劇上の意図であえて外した、ずらしたと思われる部分もあります。

作劇上のテーマにあわせて、あえてちょっとその時代にあわない描写をするということ。
これはありなんです。
多様性や現在の価値観を後押しするのであれば、認められます。

「黒人のアリエル」も、その一例でしょうね。

◆実写版『リトル・マーメイド』、主人公アリエル役に黒人歌手抜てき

何も考えないゆえのミスとは違います。

ディズニー映画はじめ、リメイクでは原点にはなかった現代視点の要素を入れることは、作劇上ありえることであり、かつ重要です。
アニメをテーマにした本作ならば、あえてそうする意義は大きいのです。

そういう作劇上の意図を吟味しての批判かどうか。
じっくり考えたのでしょうか。

SNS投稿の切り取りは時代遅れです。
信哉が「アレクサ」というのはどうでしょうねえ。

信哉はもっと便利ですよ。そこはJ.A.R.V.I.S.、アイアンマン搭載くらいでないと。
ひねりもちょっと足りないし、どうせアンチをやるなら、ひねりにひねってパワーのある呼び名を考えましょうよ!

まぁ、そこまで暇じゃないか。

それと「視聴熱」ですが。
個人的な意見ではありますが、この単語を見ただけでその記事を流し読みするようになりました。

危険な概念だと思います。

低視聴率という母数が少ないコンテンツならば、熱が高くなるのはそうでしょう。
定評かをつけていた層が脱落して、残るのは選りすぐりの熱狂的なファンだけになるのです。

そういう方はSNS多重投稿もするでしょう。
役立つ局面があるとすれば、熱狂的ファンが溜飲を下げる時くらいでしょうかね。

しかし、これって危険なんですよ。

そんな曖昧な基準だけで突き進むと、いずれ破綻が見えてきます。ですので、私はこの基準は参考にしません。
視聴率にかわる新基準が必要にせよ、視聴熱だけはどうにもいただけませんね。

ドラマが終わったあと、本作出演者やスタッフがどう羽ばたくか。
そこに注目しています。

最後にひとつ。

朝ドラは【有害なファン】効果で、SNS投稿がおかしくなっております。
SNS投稿と視聴熱基準は、二重の意味で危険でしょうね。

文:武者震之助
絵:小久ヒロ

※北海道ネタ盛り沢山のコーナーは武将ジャパンの『ゴールデンカムイ特集』へ!

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【参考】なつぞら公式HP

 

4 Comments

ガブレンツ奮戦

文春があんな低レベルの記事しか書けないとは。

まあ、日本経済新聞ですら、「トンデモ論調」を展開してしまうくらいですからね(第81話のコメントを参照)。
週刊誌の芸能記事など、思いつきで書きたい放題でしょう。

けいいち

文春の記事は、いわゆる読書感想文って感じですね。
とくになにも分析してなくて、長いSNS投稿みたいな印象です。
武者さんのレビューの凄さが改めてよく分かりました。
これからも楽しませてください!

でんすけ

戸籍上での千遥ちゃんは、復員兵の実子で女将さんの養子ということですかね。戦災孤児だった過去を知るのは咲太郎の手紙を読んだ女将さんだけ。名目上は名家との縁談に支障なし。

実によく練られた設定だなと感心しきりです。

求婚者の人となりに千遥も女将さんも触れてないので、武者さんが仰る通り、容姿で見初められたシンデレラパターンでしょうか。「家」の人形になる人生になるのか娘の幸せを思う女将さんが壊してくれるのか。後者であってほしい~

こけにわ

千遥の綺麗なワンピースが悲しい、
なつの服を大事に持ってお嫁に行くのでしょうね。
なつが不幸なら、助けるつもりだったなんて、しっかりした末っ子。
どうか、どうか幸せに。
ポスターになつの名前が出た時に、
千遥が映画館でなつのアニメを楽しむシーンが見たい!
そんな気持ちになりました。
3人それぞれの育ての親が見られて、
なんて奥深いドラマなんだろうと感心しました。

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