西日本豪雨から丸一年、九州北部豪雨から二年になる。先日も九州南部で大変な雨量を記録。この時期は毎年のように大雨に襲われる。他地域も油断大敵。万が一の際には避難をためらいたくない。
昨年七月の西日本豪雨では、九州から岐阜県にかけての広い範囲が被災した。死者・行方不明者二百三十人余。このうち、五十一人が犠牲になった岡山県倉敷市真備(まび)町地区では、市の調査で、最高ランクの避難指示が出ても自宅にとどまった人が、四割強いた。
調査では、避難した人の三割は避難指示が出た段階では避難を始めていなかったことも判明。「立ち上がりの悪さ」も指摘された。
早期避難の重要性を教えたこの豪雨をきっかけに、国は五段階の警戒レベルを策定した。レベル1は「災害への心構え」、2は「避難先やルートを確認」、3は「高齢者らは避難」、そして4は「全員が緊急避難」、5は「命を守るための最善の行動」を求めている。レベルは自治体が適用する。
5の「命を守る最善の行動」とは、具体的には何か。ちょっと分かりにくいが、4で避難できなかった場合に、「上の階に行く」「(家の中でも)山や崖の反対側に行く」などを指すのだという。
4の「全員」にも抵抗があるかもしれない。浸水の可能性が低いマンション上層階はどうなのか。日本気象協会のサイトには「想定浸水深が三メートル未満なら、無理に避難する必要はない」とある一方で
「孤立した場合の問題点の認識を」と注意を呼び掛けてもいる。
専門家によると「責任感が強く実行力や決断力のあるリーダー」が地域にいれば、スムーズに避難が進むそうだ。避難を拒む傾向が強いのは、災害経験の乏しい人や高齢者。時刻では深夜。また、誰もが、自分に不都合な情報を無視したり、避難しない自分を正当化しようとしたりする心理的特性を持っているという。
避難への心理的な抵抗を減らす備えが肝要だ。地元のハザードマップ(被害が予想される範囲や避難場所・経路を示した地図)をじっくり見ることはその一助になる。国土交通省のホームページから閲覧できる。
一九五七年七月、長崎県諫早市などで千人弱が犠牲になった「諫早豪雨」では、いったんやんだ大雨が再び降って避難行動が鈍り、大被害につながった。この教訓から「ムダ足覚悟で早めの避難」という標語が広がった。現代にも十分通用する言葉ではなかろうか。
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